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2022/07/21(木) 12:29

再度「専ら住宅」の是非を問う 福岡県宗像市の「さとづくり48」が示唆する可能性

投稿者:  牧田司

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「さとづくり48」プロジェクト

 みなさん、冒頭の写真を見ていただきたい。今年度から創設された、都市の種々な課題解決や良好な環境の創造、地域の価値向上を図る先導的な取り組みなどを表彰する国土交通省「まちづくりアワード」の特別賞を受賞した、福岡県宗像市の「さとづくり48(フォーティーエイト)~宗像市日の里団地における団地再生プロジェクト~」(西部ガス・東邦レオ)の外観写真だ。

 築50年以上のUR都市機構(当時は日本住宅公団)日の里団地48号棟からネーミングされた複合生活利便施設なので、マンションではないかもしれないが、居住者と利用者が緩やかにつながり、コミュニティを形成するという理想的な街づくりが行われていると思った。

 と同時に、時代は大きく変わったのに、経済設計の均質的な田の字型プランが幅を利かすマンション市場を考えざるを得ない。記者は3年前、「時代遅れの建基法用途規制とマンション『専ら住宅』を見直すべき」の見出しの記事を書いた。「専ら住宅」を取り外せば、「さとづくり48」プロジェクトのようなマンションが実現するのではないか。

◇                  ◆     ◇

 東京都の令和2年の国勢調査データによると、総人口は14,047,594人で、単独世帯は3,625,810世帯で、一般世帯の50.3%を占め、65歳以上の単独世帯も一般世帯の1割を超え、一般世帯の1世帯当たり人員は1.9人で、2人を下回っている。

 つまり、夫婦と子どもからなる「核家族」は崩壊したとまではいわないまでも多数派ではなくなった。家族がいない単身者にとってLDKや部屋数は意味をなさないし、日照条件もたいした問題ではないはずだ。

 だとするならば、多様なニーズを限られたスペースにどのように取り込むかが商品企画のポイントになる。キッチンやトイレ、浴室の水回りをコンパクトにまとめたり、あるいは浴室をなくしたりする試みは、そうした時代の変化に対応したプランといえる。また、コロナを経て在宅勤務、テレワークに対応するのも常識となった。共用部にリモートワーク、洗濯スペースを設置するマンションが増え、東京建物は「上野」のマンションの一部を町内会に開放し、住友不動産のように賃貸だけでなく分譲タイプにもSOHO(Small Office/Home Office)を採用するのもよく理解できる。

 時代は完全に変わった。しかし、変わらないのは国土交通省のマンション標準管理規約第12条にある「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」の「専ら住宅」規制だ。

 分譲にしろ賃貸にしろ、この「専ら住宅」の規制があるから、起業家は自宅に法人登記はできず、住宅ローン・家賃支払いとオフィス賃料支払いという二重ローン・家賃負担を強いられる。その金額は少なくないはずだ。

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 いったい「専ら住宅」の縛りがないマンションはどれくらい存在するか考えてみた。国土交通省やマンション管理センター、マンション管理業協会に聞いたが、そのような統計は取っていないということだった。

 そこで、国土交通省の平成30年度マンション総合調査結果から、「専ら住宅」の規制がなさそうなマンションの数を推計してみた。

 それによると、管理規約がある管理組合は98.3%で、1.7%は規約そのものがないと答えている。管理規約がある組合のうち標準管理規約に準拠していない管理組合は2.8%あり、不明も9.8%ある。

 住居以外の店舗や事務所などの複合用途型のマンションは21.1%となっている。また、マンション標準管理規約認知度については「知らない」が21.5%となっており、一方で「民泊」については、「民泊を全面禁止とした」が95.2%を占めている。

 これらのデータから大胆に類推すると、「専ら住宅」の規定がないマンションは少なくとも10%はあるとみた。

 「専ら住宅」を取り外せば近隣とのトラブルが増加するという声もあるが、むしろ逆だ。居住者・利用者どうしのコミュニティを密にすればするほどトラブルは減るはずだ。マンションは地域の価値向上にどうかかわるか、デベロッパーは考えるべきだ。

西部ガス・東邦レオ「さとづくり48」にほれ込んだ 国交省 「まちづくりアワード」(2022/6/22)

時代遅れの建基法用途規制とマンション「専ら住宅」を見直すべき(2019/12/19)

 

 

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