日本財団は7月22日(金)、誰もが快適に使用できる公共トイレを渋谷区内17か所に設置するプロジェクト「THE TOKYO TOILET」の13か所目のトイレをメディアに公開し、広告、ブランディング、ファッション、ディスプレイ、アートなど幅広い活動を行っている担当ディレクターの後智仁氏がインタビューに応じた。同日、トイレは共用開始された。
トイレは、日比谷線広尾駅から徒歩3分、渋谷区広尾4丁目の「広尾ガーデンヒルズ」に近接する「広尾東公園トイレ」。刻々と表情が変わるライティングボード付きの全面コンクリート打ち放しで、車椅子ブース・幼児連れ・オストメイトブース付きのだれでもトイレが2室の合計12.37㎡。タイトルは「Monumentum」。
コンセプトについて後氏は「今回のプロジェクトの元となった『人は、みんな違うという意味で、同じである』という思いを表現するトイレを作りたいと思いました。安全、安心、清潔はもちろん、全ての人に優しいトイレにしたい。…パブリックアートの様に生活の中にありながら、人に常に何か問いかけてくる様な存在。このプロジェクトの意義を人に問いかけ続けるモニュメントのようなトイレになったらいいなぁと思っています。世界人口と同じ79億通りのライティングパターンが、昼は木漏れ日の様に、夜は月明かりや漂う蛍のように変化し続け、二度と同じパターンを見ることはないでしょう」とコメントを寄せている。
残りの4か所のトイレは今後2022年末にかけて共用開始の予定。
◇ ◆ ◇
「無知は罪なり知は空虚なり」-最初に目に飛び込んできたのは、トイレを囲むようにはびこっていた〝雑草〟だった。何たることか。せっかくのトイレが台無しではないか、後氏に失礼ではないかと怒りすら覚えた。施工を担当した大和ハウス工業担当者に「どうしてこんなススキのような雑草がはびこるままにしているのだ」と苦情を申し立てた。
そうではなかった。後氏の「原風景を再現してほしいと、僕が指名した」もので、植栽を担当した「叢(くさむら)」の代表取締役・小田康平氏は「建物に対して主張しない、草原から切り取った、どこにでもある草をイメージし、厳しい環境でも育つ植物を選んだ」と話した。
小田氏から草花の名前を聞いた。ミニパンパス、マホニア、ローズマリー、ディアネラ、パニカム、ビバーナムティヌス、マツバギク、アカシアミモザ、ユーホールビア、ウエストリンギア、リコンドラ、グレビリア、パシフィック…。
皆さんはこれらの名前をご存じか。小生はローズマリーとリコンドラしか知らなかった。ほとんどが多年草だそうだ。眺めていると、これらの草花はそれぞれが他の草花の領域を犯さないように共存しているように見えた。「負ける建築」に通じるものがあると感じた。