RBA OFFICIAL
 
2022/09/29(木) 16:43

調整区域・1号店舗の適用受けた「なないろこまち」キッズデザイン賞 最優秀賞

投稿者:  牧田司

220471なないろレディースクリニック.jpg
「なないろこまち」(右の調整区域内の農地、左の住宅地に挟まれたエリア)

 キッズデザイン協議会は9月28日、「第16回キッズデザイン賞」表彰式・シンポジウムを開催。最優秀賞の「なないろこまち」(黒田潤三アトリエ / なないろレディースクリニック)をはじめとする全優秀賞に賞状を授与するとともに、シンポジウムでは最優秀賞・優秀賞9作品の関係者によるプレゼンテーション、益田文和・審査委員長と赤池学・副審査委員長によるコメントが発表された。

◇        ◆     ◇

 同賞には、住宅・不動産業界からは、中央住宅の「育てることで育む『農』のある暮らし ハナミズキ春日部・藤塚」と、積水ハウス「エルミタージュクール」がそれぞれ奨励賞を受賞したことは紹介したので省略する。記事を参照していただきたい。記者は、表彰式のみ取材して帰ったので、リアルのシンポジウムは参加しなかったが、黒田氏に話を聞き、シンポジウムもアーカイブで視聴した。

 なにが素晴らしかったかといえば、最優秀賞の内閣総理大臣賞を受賞した「なないろこまち」(黒田潤三アトリエ / なないろレディースクリニック)の作品だった。

 作品は、つくばエクスプレス線つくば駅から車で20分のつくば市西大沼の調整区域の農地を転用したもので、敷地面積約9,972㎡、RC造+木造平屋建て(一部2階)延べ床面積約4,432㎡の施設だ。

 子どもが生まれる前に受診する「外来棟」と産んでから静養する「入院棟」からなる産婦人科を中心に小児科棟、ホール、カフェ、託児などの機能を持つコミュニティ棟から構成されている。

 入院棟は、耐火構造にしなくてもよかったが、耐火・耐震性など総合的に判断してRC造としているとのことだ。他は平屋の木造としているのが大きな特徴で、外壁には焼杉を張り、内装材も木調を基本にしている。

 なぜ、1万㎡近くもある敷地にこのようなゆったりした配棟の施設にできたのかといえば、都市計画法市第34条第1号(1号店舗)の適用を受けているからではないかと記者は考えた。市内の地価公示からして、隣接する松代町の住宅地は坪30万円くらいするはずだが、調整区域は10分の1くらいだろう。住宅地であれは土地代だけで約9億円だが、調整区域は1億円以下だ。1号店舗の条項を活用したからこそ実現した施設ということができる。中央住宅「ハナミズキ春日部・藤塚」も調整区域内の開発だった。

 ネーミングがまたいいではないか。「なないろ」は施設と地域を結ぶ虹の架け橋であり、新生児の未来を指し示す希望の光だ。「こまち」は、「子」であり、女の子であれば「小町娘」であり、英語であれば共同、繋ぐ意味を持つ「co」である。

 黒田氏のプレゼンテーションもよかった。「最初に道をつくり、街をつくった」と語った。記者はこの「最初に道をつくった」というフレーズに感動を覚えた。わが国の街並み設計に大きな影響を与えた建築家・宮脇檀の建築・街並み設計手法と同じだったからだ。

 宮脇氏が亡くなったのは24年も昔だ。黒田氏が宮脇氏の設計思想に影響を受けたかどうかは分からないが、赤池氏はシンポジウムで何度も「温故知新」を語った。偶然の一致ということか。

20220928-102227-026(2).jpg
中央が黒田氏

20220928-101542-020.jpg
益田氏

◇        ◆     ◇

 以下は付録だ。同協議会への注文をひとくさり。

 この日(28日)、表彰式の会場となった六本木ヒルズ49階「アカデミーヒルズ49」には主催者、受賞者、メディアなど200名以上集まっていた。10時から主催者の同協議会・坂井和則会長のあいさつに始まり、来賓の経産省、内閣府(少子化対策、男女共同参画担当)、内閣府(消費者担当)、東京都の祝辞・挨拶、同賞審査委員長・益田文和氏の総評、受賞36作品の賞状授与、iFデザインアワード日本オフィスの来賓あいさつが終わるまでの約1時間半、みんな身じろぎもせず聴き入り、しわぶき一つ聞こえなかった。その都度、拍手も湧いた。落ち着きなく左右に揺れていたのは小生一人くらいだったろう(小生は、小中学生のときは45分間の授業時間に我慢がならず、紙飛行機を飛ばしたり、前に座る女の子の髪と椅子をセロテープでくっつけたりしていたずらばかりしていたので、先生に怒られ、いつも廊下に立たされていた)。前日の国葬もそうだったが、なんてわが国の人々は行儀がいいのだろうと感服した。

 しかし、挨拶はみんな、記事にできるような気の利いたフレーズなど一つもなく、意味は分からなくとも美しい祝詞でもなく、枕詞の連呼ばかりだった。いったい総理大臣、経産大臣…などの冠に何の価値があるのか、小生はさっぱり分からない。

 もう一つ。赤池氏はシンポジウムで黒田氏に対し、自らも益田氏も審査委員を務めるウッドデザイン賞への応募を勧め「高い点数が付くはず」と呼び掛けた。記者はこれまでも書いてきたが、キッズデザインとウッドデザインとは極めて親和性が強く、グッドデザイン賞も含めて、世界に通用するユニバーサルデザイン賞(UD)と統合してはどうかと考えている。外国には「キッズデザイン」という概念はないようで、だからこそiFデザインアワードと連携することになったのだろが、日本発の「キッズデザイン」は世界に通用するのか。

中央住宅と積水ハウスが奨励賞受賞 第16回キッズデザイン賞36点発表(2022/9/22)

「一般社団法人 日本ウッドデザイン協会」設立 会長に隈研吾氏(2021/12/9)

積水、旭化成、ケイアイスターが受賞/記者にも見る機会を 第15回キッズデザイン賞(2021/9/30)

 

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン