キッズデザイン協議会は9月29日、子どもの安全・安心と健やかな成長発達に役立つ優れた製品・空間・サービス・活動・研究などを顕彰する「キッズデザイン賞」の第15回受賞作品234点の中から最優秀賞、優秀賞、奨励賞、特別賞など優秀作品36点を発表した。応募総数は409点だった。
住宅・不動産業界からは積水ハウスの次世代室内環境システム「SMART-ECS(スマートイクス)」が経済産業大臣賞優秀賞「子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン」(一般部門)に選ばれたほか、同社の「台の森プロジェクト」がキッズデザイン協議会会長賞奨励賞「子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン」(リテラシー部門)に、ケイアイスター不動産の「おおきいおうちとちいさいおうちがあるおうち」が同「子どもたちを生み育てやすいデザイン」(個人・家庭部門)に、旭化成ホームズの「子育て家族のコミュニティ創造型集合住宅〝子育て共感賃貸住宅 母力〟」が同「子どもたちを生み育てやすいデザイン」(男女共同参画部門)にそれぞれ選ばれた。
最優秀賞の内閣総理大臣賞は新渡戸文化学園/ VIVITA JAPAN / tokotodesignの「VIVISTOP NITOBE FURNITURE DESIGN PROJECT」が選ばれた。
同賞は、2007年に創設されてから累計応募数は5,785点、受賞数は3,439点となった。
◇ ◆ ◇
他の記者の方はどうかわからないが、この記者発表・表彰式の取材は結構疲れる。年を取るごとにそう感じる。開始されるのは午前10:30で、終わるのは12:00だ。この間、主催者のあいさつに始まり、経済産業省、内閣府、東京都のあいさつ、益田文和・審査委員長の講評、各賞の発表・賞状授与が行われる。優秀作品は36点だから、あいさつなどを除けば単純計算しても1作品について1.7分しか割かれていない。マスク越しだし、記者はおまけに耳が遠くなったので、よく聞き取れない。各作品がどのようなものかさっぱりわからない。
なので、広報事務局に「私は過去何度が記者発表・表彰式を取材させていただいておりますが、受賞作そのものを当日見ることができるものはともかく、施設などは実際に見ることはできません。優秀賞を発表されてから、表彰式までの期間を利用して、各受賞者の了解の上で、個別取材・見学を可能にしてはいかがでしょうか」とメールした。
記者の気持ちが通じたか、益田審査委員長は総評で次のように興味深いことを話された。
「オリンピック・パラリンピックがやっと終わった。(私は嫌で)見なかったんですけど、すごく気になったことがある。何で勝とうとするんだろう、勝つことばっかり報道されて、それにみんな感動しているが、私は、一人が勝つためにいったいどれだけの人が負けているか、負けていることが普通であることを学ばないといけないと思う。常に勝つこと勝つこと、あげくの果てに震災に勝ったとかコロナに勝ったとか、勝っていないですけど、それを言い出す。これは大きな間違いです。
だって、自然災害や感染症は目の前にあったら『逃げろ!』です。真っ先に逃げないといけない。子どもは知っている。われわれは足を引っ張っちゃいけない。
実は、キッズデザイン賞は別に勝ち負けをうんぬんしていない。うちはこんなのやったから凄く売れたとか、市場を席巻したとか、そんな話していない。みなさんのいいアイデアや素晴らしい着想、実践を持ち寄って、お披露目して、みんなで見て感心して、できれば自分たちもやってみようと考えていくプラットホーム、対話の場です。このことがとても素晴らしいし、そういう機会を作ろうと私は常に考えている。
私はサステナブルデザインが専門ですので、SDGsなどを考えるにつけ、キーワードがあることに気が付いた。それは、小さくてローカルで、つまり分散していて、オープンで、コネクトされているということです。これが未来の姿、サステナブルな社会、経済の姿です。キッズデザイン賞もみんなそう、そのような仕掛けがある。(中略)
この賞を通じて新しい未来の社会が見えてきているような気がする。何よりもこのことを多分子供たちは感づいているし、ちゃんと評価していると思う。子どもたちと一緒に未来を創っていくつもりでデザインに取り組んでいきたい」
記者は、益田先生のオリンピック・パラリンピックについて話されたことには賛成しかねる。野球だってゴルフだってテニスだってあらゆるスポーツは同じ条件(この同じ条件というのがとても大事)で力やスピード、技、頭脳を競うから人に感動を与える。スコアなどどうでもよければ、だれも見向きもしないし、競技などなりたたない。アスリートはみんな「自己との闘い」を最優先しているはずだ。
しかし、キッズデザイン賞やSDGsに触れられたのはその通りだと思う。先に書いたように、記者もまた作品に触れ、見学する機会を与えられるべきだ。ただ単に受賞作を記事にするのはメディア・ライターの仕事ではない。来年からは記者発表・表彰式の前に見学取材できる機会を与えていただきたい。
もう一つ、お願いだ。益田先生が仰ったことと少し違うかもしれないが、内閣支持率が30%にも満たない、しかも任期(人気)があと1週間もないのにどうして10もの総理大臣賞やら経産大臣賞などを設けるのか。小生はさっぱり理解できない。総理や大臣が作品を見ていないことくらい子どもだって知っているはずだ。〝うそつきは泥棒の始まり〟だ。嬉しく思わないのではないか。タイトルも長すぎる。
それより、19人の審査委員賞としたほうがはるかにいい。子どもたちにも記憶として残るはずだ。
明後日は、ケイアイスター不動産の「おおきいおうちとちいさいおうちがあるおうち」を取材させていただくことになっている。旭化成ホームズの「母力」は住宅も素晴らしいが、ゴーゴリの「母」を連想させるネーミングがとてもいい。積水ハウスの「台の森プロジェクト」は仙台なのでちょっと遠いか。
旭化成ホームズ「母力」
総理大臣賞に福祉型障がい児入所施設「まごころ学園」 第14回キッズデザイン賞(2020/9/30)
ワンストップで子育て支援 積水ハウス「大網白里市子育て交流センター」(2020/10/3)