日本一お金持ちが多い東京都港区の課税標準額1億円超の富裕層(以下、富裕層、またはお金持ち、億万長者)が令和4年5月現在、前年度より241人増の1,250人となり、この層の所得割額総額は前年度より65.8%増の約280億円となり、人数、所得割額とも過去最多だった令和元年度を上回った。われら庶民は相次ぐ値上げラッシュに青息吐息だが、お金持ちはまったく関係なし。〝富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなる〟-聖書の言葉は健在だ。
別表をしかと眺めていただきたい。港区が公表している課税標準額段階別納税者・所得割額の推移をみたものだ。
課税標準額とは、総所得から様々な控除額を差し引いた住民税(市町村民税・都道府県民税)の計算の基礎となる金額で、住民税は「均等割額」(都民の場合は区市町村民税3,500円+都民税1,500円)と「所得割額」(課税標準額の10%)からなる。
これによると、富裕層は令和元年度に人数、所得割額とも最多となり、その後はコロナの影響などで減少していたが、令和4年度は一転して激増。人数、所得割額とも過去最多を更新した。
総所得割額から単純に総所得を推計すると、富裕層一人当たり約2.2億円となる。納税者の1%に満たないお金持ちが住民税の3割超を払っている-感謝すべきことなのか、それとも格差社会を呪うべきなのか…。
注目すべきなのは、億万長者だけでなく、課税標準額が1,000万円超(アッパーミドルと呼ぶ)もまた着実に増加していることだ。令和4年度のこの層は25,893人(全納税者に占める割合17.7%)で、5年前の平成29年度より5,129人(同2.7ポイント増)増加している。
富裕層が激増したことについて、区の課税課は「転入もそれほど増えているわけでもなく、外国人の動向にも変化はなく、お金持ちが株などで儲かったと分析しています。IT企業の社長さんも区内に多く住んでいます」と話した。
なるほど。だが、しかし、わが国の日経平均株価は昨年5月末の28,860円から今年5月の27,279円へとむしろ下落している。一方、米国のダウ平均は過去最高値圏ではあるが、昨年よりは下落している。
記者は、やはり不動産価格が上昇しており、その売買差益も所得を大幅に増やしている大きな要因ではないかとみている。
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)のデータによると、今年10月の首都圏中古マンション成約坪単価は229万円で30か月連続、在庫坪単価は243万円で57か月連続でそれぞれ前年同月を上回っている。23区の中古マンションの坪単価は340万円で、2020年10月の272万円から25.3%も上昇している。新規登録単価上昇も続いており、先高観も強い。
また、東京カンテイは今年10月末の都心6区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、渋谷区)の70㎡換算の中古マンション価格は前年同月比16.4%増の9,950万円と13か月連続で上昇したと発表している。
株と不動産-錬金術の王道は今も昔も変わらないということか。
億万長者100人減少 人口も25年ぶり減 日本一裕福な港区財政 コロナが直撃(2021/10/13)