わが国の町内会組織など自主団体研究の第一人者である山梨学院大学法学部特任教授・日高昭夫氏は、詳細な情報を持ち合わせていないと断ったうえで、千代田区番町の地区計画変更に関して次のようなコメントを寄せた。
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ポイントは、①地区計画決定過程で必要な「地区住民等の意見」にいう「地区住民等」が町会長等の意見で代表できるのか②その町会長の意見がそもそも町会を代表する正当性を有しているのか、といった点かと理解しました。
このうち、①については、かつて山梨県の旧明野村の産業廃棄物処理場建設問題で、区長(自治会長)の意見を地区住民の意見として建設を進めた山梨県の行政対応が、その後深刻な行政対住民の対立と住民間の分断を生み、長期にわたって混乱と大きな行政コストをもたらしたことを思い出しました。
千代田区の場合も、地区計画の趣旨に沿って、丁寧な地区住民の意見を聞く最初の手続きを誤れば、同様の結末にならないか懸念されます。
私個人の見解ですが、行政が地区住民の代表として町会長の意見を日常的に聞くなどの仕組みや慣例そのものは、一概に批判されるものではないと思っていますが、それはあくまで日常的あるいは(暗黙にであれ)広く合意されている事項に限定されると思います。非日常的で合意が形成されていない事項についてまで、町会長に白紙委任されていると考えるべきではないと考えます。
そこで、②についてですが、地区住民間で十分な合意が形成されていない事案で、しかも地区計画の本質的変更につながるような重要事項について町会長が公式に対外的に意見を表明する場合には、少なくとも町会としての明確な合意形成が前提条件ではないかと思います。
その意味で、町会のガバナンスを問う今回の訴訟は画期的で、大変興味深いものだと思います。
ただ、訴状の詳細も分かりませんし、私的自治がどう評価されるか、町会規約がどのようになっているか、メンバーシップや総会の規定など細かい点は不明ですので、どのような展開になるかはなんともいえません。
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