日本ツーバイフォー建築協会(会長:池田明・三井ホーム代表取締役社長)は6月15日、2023年度定時総会を開催し、2022年度事業報告と収支決算、2023年度事業計画と収支予算を可決し、総会後に記者会見・懇親会を行った。
池田会長は懇親会で、「昨年度のツーバイフォー住宅の着工戸数は92,000戸、シェアは10.7%。全体ではシェアは低下したが、利用関係別では、持家のシェアが上昇しこれまでの最高値を更新し11.7%となった。また、施設系のツーバイフォーは年々増加傾向にあり、会員向け調査によると、昨年度の着工件数は前年度比で約1割増加した。耐震性、耐火性を始めとするツーバイフォーの優れた性能面や、環境に優しい木の建築に対するユーザーの評価が一定の成果に繋がっていると感じている。
カーボンニュートラルの実現を目指すわが国においては、最終エネルギー消費量の約3割を占める住宅・建築分野における省エネルギー化、脱炭素化に向けた取り組みの更なる強化が必要。CO2を吸収・固定化し、炭素を蓄える働きを持つ木材を構造材とし、建築時や建物利用時のCO2排出量の少ないツーバイフォー建築の供給を通じてカーボンニュートラルの実現、脱炭素社会の構築に貢献することを重要な使命と認識し、引き続き普及、発展に努めていく」と語った。
◇ ◆ ◇
記者会見では、メディアから住宅着工、とくに持家の減少について質問が飛んだ。以下、その回答を紹介する。
池田会長 持家は17か月連続の前年比マイナスで大変厳しいマーケットが続いている。当社は非住宅の施設系や賃貸の受注増がかさ上げしたことにより、受注量は若干増加した。ただ、専用住宅は大変厳しく受注量は約7%減少した。内訳で見ると4,000万円以上は何とか踏ん張っているが、2,000万円台から3,000万円台のむボリュームゾーンが大きく落ち込んでいる。今後も厳しい状況が続くのではないか
副会長・細谷惣一郎氏(三菱地所ホーム代表取締役社長) 今年度に入って受注の足は鈍っている。ゴールデンウィークの住宅展示場への客足はかなり落ち込んだ。WEBなとの新たな集客手法に期待している
副会長 蓮井美津夫氏(イワクラホーム代表取締役社長/北海道支部長) 総じて厳しい。2割、3割落ちている。建売住宅は在庫の山。他の地域より厳しい
副会長・倉田俊行氏(ウイング代表取締役社長)マンション向けの出荷は増えているが、世界マーケット的には赤字を垂れ流し、生産調整に入る意向を示すところが増えている
こどもエコ住まい支援事業についても質問が飛んだ。同事業は、令和4年度補正予算で1,500億円が計上された、2050年カーボンニュートラル実現に向けた施策の一つ。ZEH住宅の新築と一定のリフォームが対象で、子育て世帯・若者夫婦が新築する場合氏は100万円/戸、住宅の省エネ、バリアフリーなどのリフォーム工事には最大45万円/戸(子育て・若者夫婦以外は30万円/戸)の補助金を給付するもの。5月現在、予算額に対して42.9%の進捗。
これに対して、細谷氏は「継続してやって頂かないと厳しい」と時限立法では効果は限定的と語った。
◇ ◆ ◇
記者は、高が1割くらい受注が減ったくらいで、慌てふためくことなどないと思うが、4氏からは「厳しい」「非常に厳しい「「鈍い」「落ちている」のフレーズが連発された(経営者とはそういうものか)。肝心の苦境脱出策については、改正省エネ法やこどもエコ支援事業のほか、として新たな集客手法としてWebに期待する声が聞かれた。
記者はもちろんカーボンニュートラル実現は喫緊の課題であり、ZEH住宅などに対する支援は欠かせないと考えているが、前途は厳しいとみている。
注文住宅は大手ハウスメーカーを中心に進んではいるが、分譲戸建て、共同住宅は遅々として進んでいない。年間約4万戸を販売する分譲戸建て最大手の飯田グループHDの2023年3月期の平均価格は土地代を含めて約3,000万円だ。100万円の補助金を受けても、その倍以上のコストをどうするのか。コスト増を吸収する余力はないはずで、価格にオンしたら売れるのか。極めて難しい問題だ。悲観的にならざるを得ない。
まあ、しかし、「大変厳しい」とか「落ちている」というのは2~3年前の数値と比較するからそうなるのであって、現在の市況が〝当たり前〟だと考えれば、そんなに悲観することはないと思うがどうだろう。いまが「ゼロ=スタート」だ。「木の時代」の追い風もあるではないか。経営者のかじ取りが試される。
左から三菱地所執行役常務・加藤博文氏、細谷氏(「木質化に向けた先行投資をかなり行った。今後5年間が勝負の年。全館空調の外販を進め、三菱地所レジデンスの物件への搭載を増やす」加藤氏)
左が理事の新昭和取締役・神﨑智氏(右の方は同社の方だが、名刺交換を忘れたのでどなたか分からない)お二人は「(今後のパワービルダーは)お互い首を絞めることになる可能性もある」と話した。同社の2022年3月期決算は売上高457億円で、粗利益率は23.1%と高い。
左から倉田氏、カナダ林産業審議会 市場開発部本部長・ケビン j・ビューズ氏、加藤氏(ケビンj・ビューズ氏の奥さんは日本人とか。懇親会の冒頭、来賓のカナダ大使館の方は、100年前の関東大震災で被害を受けたわが国に木材を供給したのが貿易の始まりと語った)
住宅選好の変化捉えた「ラナイ」の提案がいい 三井ホーム「IZM(イズム)」モデル (2023/6/8)
「持家は回復途上 建売りへの参入・拡大も可能に」堀内会長 プレ協が総会・会見(2023/6/1)
コロナで減った住宅選好の幅 オーダー志向層を蚕食する〝建売り御三家〟(2023/5/28)