左から大成建設ハウジング 立川洋之社長、隈研吾氏、大成建設 相川善郎社長
大成建設ハウジングは7月25日、建築家・隈研吾氏とのコラボレーションによる新たな壁式鉄筋コンクリート住宅シリーズ「モクコンの家」を今年3月に発売開始したのに伴う隈氏、大成建設相川善郎社長、大成建設ハウジング立川洋之社長の3者による国立競技場でのトップ対談の模様を公開した。以下に一部を紹介する。
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インタビュアー 「モクコンの家」が生まれたきっかけを教えてください。
相川社長 大成建設ハウジングが手掛けるコンクリート住宅「パルコン」は、強さに絶対的な自信があります。その強さに、隈先生が表現する豊かなデザインと心地よさや時代に合ったスタイルを融合させるアイデアを思いつきました。「新時代の住宅モデル」の提供につながると考え、隈先生にコラボレーションをお願いしたのが経緯です。
立川社長 「パルコン」には50年以上の長い歴史があり、「大成建設グループの技術を結集させた住宅」です。地震や台風などの多くの災害に対して、住まわれているご家族や財産をしっかりと守ってきた実績があります。
隈氏 「コンクリートと木」は性質がまったく異なりますが、強さと柔らかさの融合を象徴する意味では、素晴らしいプロジェクトになると直感的に思いました。「モクコン」は「木」を意味する「モク」と「コンクリート」の「コン」から名づけました。
隈氏
インタビュアー インタビューの場所である国立競技場も、隈先生がデザインに携わり、大成建設グループが施工を担当しました。東京オリンピック・パラリンピックをはじめとした多くの感動が、この場所に来ると蘇ってきます。
隈氏 私の建築物の特徴の1つとして、「大和張り」があります。この国立競技場の貴賓室の天井にもあしらわれているのですが、木を互い違いに組む構造のことです。大和地方を発祥とする伝統的な日本のディテールであり、陰影を生むことで空間に立体感をもたらします。
立川社長 「モクコンの家」では、2つのモデルプランをデザインしていただきました。1つは、2階建て住宅「ノキテラス」。もう1つが3階建て住宅「ハコテラス」です。
インタビュアー 隈先生が重視された空間として、「ミュージアム」があります。博物館を意味するミュージアムを、家の中に設けた意味を教えてください。
隈氏 単なるリビングルームとは異なり、もう少し社会に開かれた、可能性のある場所――。それが「ミュージアム」という空間です。人々がその場所に訪れ、ホームパーティーをすることもあれば、会議をすることもあるでしょう。自分のサロンとして使ってもいいですし、多種多様な社会との接点になりうると期待しています。
自分の好む文化を誇れる展示スペースとしても活用できます。大事なコレクション、あるいは素敵な本。そういう大切にしている趣味や文化をこのミュージアムから発信する――いわばエキシビションができる場所なのです。
インタビュアー 住宅におけるサスティナブルについてのお考えも聞かせてください。
隈氏 安心して長く暮らすためには、空間にゆとりがあってフレキシビリティが高いことが重要になります。「モクコンの家」はそれを可能にします。
狭義におけるサスティナビリティは、どんな材料を使っているかが注目されるでしょう。例えば、地球温暖化が叫ばれる中で、サスティナブルな材料として重宝される木をたくさん使用していますので、SDGsを考えるうえでも誇れる家ではないでしょうか。
相川社長 大成建設グループでは、グループビジョンとして「人々が豊かで文化的に暮らせるレジリエントな社会づくりに貢献する」ことを目指しています。しかし、長く住まうためには「レジリエント」だけでは十分ではありません。
木という日本人の文化を住宅に取り入れることで、「レジリエント」と「サスティナビリティ」の融合が実現すると考えています。
相川氏
立川社長 近年は「サスティナブル」「レジリエント」「カーボンニュートラル」など、さまざまな言葉が注目されています。さらに、コロナ禍を契機にライフスタイルが変わりました。社会の求めるものに対して、強いコンクリート住宅をベースにいろいろな変化が楽しめるフレキシブルな住宅を提供していかなければならないと考えています。
立川氏
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大成建設は今年、創業150周年を迎えた。それかあらぬか、グループ会社の大成有楽不動産の野球部が元気で、今年のRBA野球大会に同社として初めて決勝トーナメント進出を決めた。現有戦力では上位を倒すのは容易でないと記者は考えているのだが、〝奥の手〟はないのか。
「モクコンの家」内観