三菱地所レジデンスは10月25日、災害時に居住者同士が行動に迷わず助け合うための防災ツール「First Mission BoxⓇ(ファーストミッションボックス)」(FMB)」を設置した「ザ・パークハビオ 中野富士見町ガーデン」の竣工記者見学会を開催し、担当者によるデモンストレーションも行った。同社を含めデベロッパーは分譲マンションの「防災」には力を入れているが、賃貸でこのような取り組みをするのは珍しいのではないか。
物件は、東京メトロ丸ノ内線中野富士見町駅から徒歩4分、中野区弥生町2丁目に位置する14階建て全115戸。専用面積は25.08~51.84㎡、賃料は100,000(25.92㎡)~227,000円(51.00㎡)、坪賃料は1.5~1.7万円。竣工予定は2023年8月。設計はIAO竹田設計。施工は村中建設。これまで52戸を募集し、80%に申し込みが入っている。
「FMB」は、長野県飯田市と危機管理教育研究所により考案されたもので、災害時(震度5強以上の地震を想定)に共用部に設置されたボックスを開け、中に入った指示カードの通りに動くことで、自然とその場に集まった居住者同士で災害時の初期活動を実施することができる仕組み。
指示カードには、「本部の設営」からマンション内の「安否確認」「救護活動」「トイレの設置や運用」「防犯対策」の対応をどのように行動すればいいか、専門知識や経験がなくても誰にでもできるような内容になっている。
近所との関係が希薄になりがちな単身世帯や、居住者による組合組織がない賃貸マンションでも、万一の時に取るべき行動に迷うことなく、居住者同士で迅速に活動するための初動期のオペレーションを実行することができる。
同社はまた、長引く被災生活を想定して「Second Mission Box(セカンドミッションボックス)」(SMB)を制作・導入。「FMB」と「SMB」を賃貸マンションに導入するのは初で、このほか屋上に設置した太陽光パネルで発電した電力を蓄電池に貯め、災害時に活用するシステムの構築、各住戸用の備蓄ロッカー(MY防災倉庫)を備えている。
外観デザインには、外壁には天然の貝などから作られた自然の風合いのある塗材、西面の最上階軒天などには木目調塗装を採用するなど、周辺の並木道や敷地内の豊かな緑地帯と調和するシンボリックなものにしている。
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記者はこれまで、同社が分譲した大規模マンション「奏の杜(かなでのもり)」での三菱地所コミュニティとエリアマネジメント組織・奏の杜パートナーズと共同の防災訓練を何度か取材している。どこの集合住宅でも行っている、セレモニーのようなお茶を濁すイベントではなく、市や消防署とも連携した本格的なもので、半日がかりの取り組みだった。
今回、賃貸マンションに「FMB」と「SMB」を導入するのは、エリア内にいくつかの分譲マンションを供給している背景があるようで、その本気度に感服した。何事にも真剣に取り組むのが三菱地所グループのいいところだ。2014年に立ち上げた同社と三菱地所コミュニティ社員有志によるボランティア組織「三菱地所グループの防災倶楽部」は約140名にのぼっているようだ。
見学会では、各フロアに備蓄ロッカー(MY防災倉庫)を備えているのに驚いたが、居室はガスとIH設備をフロアごとに替え、半々にしているのもそれぞれの弱点を補うものだろうと理解した。
デモンストレーションは約15分。実演者も記者連中(とくに小生)は緊迫度に欠けていたが、3.11のとき「新浦安」を取材しトイレに困ったことがある(仕方なく公園の隅っこで用を足したが、女性はそうもいかないだろう)のでその対策の重要性はよくわかる。
習志野市「奏の杜」防災訓練に過去最多1,000名 三菱地所グループ&管理組合(2018/3/11)