住友不動産は4月24日、「住友不動産中野駅前ビル・中野ステーションレジデンス」のメディア向け完成内覧会を行った。JR中野駅周辺で進む11のまちづくり事業のなかで最も早く竣工するプロジェクトで、都心から少し離れてはいるが、都心にはない魅力を備えていることから、ビルは満床稼働、賃貸マンションも3割弱が契約・申し込み済みとなるなど好調なスタートを切った。今後の開発に弾みをつけそうだ。
JR中野駅周辺では現在、11の再開発などのプロジェクトが進行中で、南口では駅前広場の整備、東西南北同線の整備、商業・事務所・住宅開発による駅南口の活性化とにぎわい創出を目指す「中野二丁目土地区画整理事業」と「中野二丁目地区第一種市街地再開発事業」が行われており、「住友不動産中野駅前ビル・中野ステーションレジデンス」は市街地再開発事業によるもの。ペディストリアンデッキで駅とつながっている。11プロジェクトの中でもっとも早く竣工するもの。
「中野駅前ビル」は、敷地面積約1,717㎡、中間免震構造の20階建て延べ床面積約5,676㎡、基準階貸付面積約1,759㎡で、天井高は3m。竣工は2024年2月末。設計・監理はアール・アイ・エー。施工は西松建設。
1~5階は店舗。三段階の無停電対応を採用しており、送電停止、ガスの供給が途絶えても共用部の照明などに72時間給電するBCP対策なども評価され、満床稼働した。テナントは金融機関、エンタメ系、薬品、金融機関など幅広い職種にわたっているという。
「中野ステーションレジデンス」は、敷地面積約4,404㎡、免震構造の37階建て延べ床面積約49,991㎡。専用面積は26.67~211.15㎡。賃料は1K(約27㎡)が約16万円、1LDK(約48㎡)が約30万円、2LDK(約72㎡)が約50万円、3LDK(約150㎡)が約110万円、4LDK(約210㎡)が約210万円。二重床・二重天井、リビング天井高2700ミリ(最上階37階は3100ミリ)。竣工は2024年2月末。施工は西松建設。
3月15日から入居開始しており、3割弱が契約・申し込み済み。コンパクトタイプは近隣居住者、新宿・大手町などに勤務する単身者や、沿線に通学する学生など。大型住戸は会社経営者、弁護士、医師など「士業」の富裕層。
同社ビル事業本部賃貸住宅事業所長・永山貴氏は「当社は1980年代から賃貸住宅事業に力を入れてきた。2024年3月末で保有戸数は約6,500戸。入居率は97%だが、残り3%は入居率にカウントしない原状回復期間なので、ほぼ100%。3月15日オープンした今回の施設は、天井高2700ミリを確保し、分譲にはない広めのサイズを提供することで、富裕層などのニーズを取り込んだ結果、3割弱が契約・申し込み済み。24年前から供給を開始した最上級の『La Tour(ラ・トゥール)』は、〝狭い〟〝英語が通じない〟などの不満が多かった日本駐在の外国人が9割を占めたが、現在は逆転した。所有に固着する『分譲』と異なり、適切なサイズを求めて3~4年で住み替えることができる富裕層向けの『賃貸』は堅調に推移する。今後の目標値などは定めていないが、適地があれば積極的に手掛けていく。『中野』は東京都心も含めた選択肢の一つになる」などと語った。
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永山氏の話を聞きながら〝なるほど〟と思った。20年前に見学した〝ワールドワイズ〟がうたい文句だった「ラ・トゥール新宿」を思い出した。同社が展開する「ラ・トゥール」を中心とする賃貸住宅事業は、わが国の「賃貸住宅」「分譲住宅」それぞれの弱点を補完・解消するものだ。賃貸は、分譲と比較して基本性能などあらゆる点で劣る。相対的に家賃は高く、だからこそ〝賃貸脱出〟などの言葉もある。
一方で、分譲も最近は価格高騰が続き、専有面積の圧縮は甚だしい。かつて3LDKといえば73㎡(22坪)はあったのに、最近は70㎡(21坪)あれば広いほうで、都心部などでは66㎡(20坪)あるかどうかだ。
同社の「中野」はどうか。設備仕様レベルは都心部の高額マンションほどではないが、基本的な住宅の質である広さについては1LDKで約48㎡、2LDKで約72㎡、3LDKで約150㎡だ。家賃はその分高くなるが、坪賃料平均2.3万円というのは、分譲相場から利回りなどを考慮して計算するとリーズナブルな値段だ。天井高を2700ミリ確保しているのにびっくりした(三井不動産レジデンシャル「パークシティ中野」は2650ミリ)。
永山氏は明言を避けたが、天井高2700ミリを確保している賃貸マンションは1割もないはずだ。
同社は今後、「御殿山」「大崎三丁目」「横浜」「南青山」で竣工予定で、「松濤」「元麻布」でも計画中という。
エントリー数1万件超坪700万円突破も納得三井不レジ「パークシティ中野」(2024/4/24)