ポラスグループは6月28日、2024年3月期決算を発表。売上高は283,594百万円(前期比8.6減)、営業利益は18,925百万円(同39.6%減)、経常利益は19,516百万円(同39.0%減)、純利益は4,811百万円(同42.4%減)となり、リーマン・ショック後の2009年3月期以来15期ぶりに減収・減益となった。
セグメント別では、主力の戸建分譲住宅事業の契約棟数は2,554 棟(前年比5.1%増)。全棟ZEH仕様とした「ときの環 草加松原」などを販売。オリコン顧客満足度調査では、首都圏の建売住宅の顧客満足度6年連続総合№1、2023年度グッドデザイン賞9点受賞、世界3大デザイン賞「iF DESIGN AWARD 2024」(建築分野 住宅建築部門)で2年連続受賞した。
分譲マンションの契約戸数は428戸(前年比29.7%増)。注文住宅の契約棟数は640棟(前年比0.8%増)。プレカットのポラテックの売上高は103,372百万円(前期116,447百万円)、営業利益6,772百万円(同6,567百万円)。不動産売買仲介事業の仲介手数料は3,592百万円(前年比2.1%増)と過去最高を更新。リフォーム事業の受注高は10,506百万円(前年比0.0%増)。
次期予想は、売上高300,000百万円(前期比5.8%増)、経常利益22,000百万円(同12.7%増)、純利益6,100百万円(同26.8%増)を見込む。
決算説明会でポラスグループ代表取締役・中内晃次郎氏は「当期は大きく減益したが、これはコロナ禍の2年間の数字が実力以上だったため。当社の生産力からすれば妥当な数字」「当社グループは今年7月、創業55周年を迎える。創業時から今日まで掲げてきた地域密着農耕型経営を推進し、これからも社会から支持され、信用される企業を目指す。メディアの方々には現場を取材していただき、ご意見を頂戴したい」とあいさつした。住宅市場については「我々が商圏とするエリアは底打ちした」という認識を示した。
中央住宅代表取締役社長・品川典久氏は「当社で不足しているのは、営業を通じたお客様への説明がよく理解されていないことだ。設計担当は一つひとつ作品だと考えて取り組み、優秀な職人でないとできない施工を行うなど商品力には自信を持っている。これからは営業の教育に力を注ぐ」「もっと(価格が)高くても売れる」などと語った。
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ここまでとは思わなかったが、決算数字は遅行指標だから、減益になるのは予想していた。中内代表も品川社長も〝想定内〟と話したように、コロナ以前に戻ったということだ。大幅減益になったことについて、小生なら「(ポラスの株主の数は知らないが)数少ない株主利益よりも、圧倒的多数派の顧客に利益を還元した。専有面積圧縮などしていないし、設備仕様も落としていない」と居直る。
今回の決算発表会で注目したのは、品川社長の〝当社の商品力がお客さまにきちんと伝わっていない〟という発言だ。
小生もその通りだと思う。同社のマンションや分譲戸建てを見学取材してきて〝どうして特徴をもっとアピールしないのか〟と歯がゆい思いをしたことはしばしばあった。
顧客に商品力を伝える武器は備わっている。同社の分譲も注文も「紹介」による成約率が41%に達しているのは商品力が高い証だし、同社は自らの商圏の市場動向をかなり詳細に調査・把握している。毎回の決算発表会でもそのデータの一部を公開している。これらを駆使すれば、顧客に強みをストレートにわかりやすく伝えられるはずだ。
しかし、品川社長、気持ちはよくわかるが、営業の尻を叩くようなことはしないでいただきたい。紹介による成約率は41%もあるではないか。入居後の居住者サポートをしっかりやっている成果だと思う。営業担当がいくら頑張っても、御社が地盤とする埼玉・千葉県の街のポテンシャルを引き上げないと「もっと高く売れていいはず」(品川氏)にはならない。自治体や鉄道会社などとの連携により、ポテンシャルを向上させる取り組みが欠かせないと思う。(ポラスの住宅がよく売れるのは、地域力を超える提案を行っているからでもある)
それと、消費者との橋渡し役となる取材記者のレベルアップも必要だ。記者のレベルに応じ、基本的なことも含めじっくり時間をかけて説明することも大事ではないか。これは他社にも言えることだ。
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上段で書いた取材記者のレベルアップについて。同社も含めた供給サイドが訴えたいことと、ユーザーが知りたいこととは必ずしも一致しない。ユーザーが一番知りたいのは価格だし、その商品が価格に見合う価値があるかどうかだ。ところが、このもっとも肝心な価格について主催者は触れないことが多いし、価格を公表しても、その物件が価格に見合う価値があるかどうかの判断となる材料をほとんど提供しない。
そうなると、記者自身が価値判断するほかないのだが、メディアもまた主催者が広告主であることを忖度して、ネガティブ情報などは伝えないし、物件の評価を避け、主催者が話したことしか伝えない。主催者もそれを良しとしているところがある。
ここに根本的な問題がある。メディア・リテラシーの問題だ。記者は日常不断にものを見る目を養わないといけないが、自らの視点(モノサシ)に自信が持てないから、せっかく現場を見ても、主催者が話したことをそのまま伝えたり、ブレス・リリースをコピペしたりすることになる。プロパガンダの役割を演じさせられることになる。
わが不動産・住宅業界の記者も例外ではない。これまで何度も書いてきた。決定的に問題なのは、ハウスメーカー担当記者はデベロッパーのマンションや分譲戸建てを見ない。逆にデベロッパー担当記者はハウスメーカーのマンションや分譲戸建て(少数ではあるが)を見ない。自ら垣根を設けて、その先を見ようとしない。ほとんどの見学会がそうだ。ポラスの場合は、ハウスメーカー担当者が圧倒的に多い。
マンションや分譲戸建ての圧倒的シェアを占めるのはデベロッパーだ。デベロッパーの物件を見ずして、ハウスメーカーの物件の優劣を測ることなど絶対にできない。この自明のことがわが業界紙誌はわかっていない。残念でならない。
ポラスの現場見学会の数は他社を圧倒している。中内代表は、われわれメディアに「現場を取材していただき、ご意見を頂戴したい」とあいさつしたではないか。新入社員には「新聞をよく読め」と毎年のように訓示している。
自慢じゃないが、小生はポラスの現場見学会は皆勤賞ではないか。すごく勉強になる。言いたいことは記事に盛り込んでいる。アクセス数は数十万件に達しているのではないか。「雨垂れ石を穿つ」-記事は業界関係者や世の中のために少しは役立っているはずだ。同社だけでない。現場取材の声にノーと言ったことはない。
飯田グループHD 2024年3月期売上高は前期並みも利益半減戸当り営業利益146万円(2024/5/14)