マンション管理業協会は7月19日、「マンション管理トレンド調査2024」の調査結果をまとめ概要を発表した。調査対象は全会員社348社(調査時)で、回答社数は333社(95.6%)。主な質問と回答は次の通り。
令和4年度からスタートした同協会の「マンション管理適正評価制度」については、20%の会員社(68社)が、既に管理適正評価制度に登録したマンションがあり、50%の会員社(173社)が対応中で、28%の会員社(96社)が、特に提案予定はないとしている。提案予定がない理由としては、仮評価で低評価であったため、インセンティブが不明のため、高経年のためなどの回答があった。
「管理計画認定制度(適正化法)」の取組みについては、18%の会員社(64社)が既に管理計画認定を受けたマンションがあり、54%の会員社(187社)が、対応中としている。
IT活用の取組み状況については、80%の会員社(268社)が、「WEB会議システム」を導入または検討中、64%の会員社(214社)が、「テレワーク」を導入または検討中と回答。
マンション標準管理委託契約書の反映状況については、60%の会員社(206社)が、提案済みまたは提案中で、マンション標準管理規約の反映状況については、78%の会員社(273社)が、改定を報告し、改定を提案または要望により改定をサポーしている。
長期修繕計画における修繕積立金不足への対応については、多くの会社が修繕積立金の値上げ、長期修繕計画の見直し(修繕周期を長期化など)で対応していると回答。一方で、積立金の増額に至らなかったケースでは、事前の説明会やアンケートで反対意見が多く、理事会として議案上程を見送ったため(144社)、総会で否決された(83社)など全体では336会員社(複数回答含む)が何らかの理由で値上げしなかったと回答した。また、保険料はじめ物価上昇の影響が著しく、管理費支出を削減して修繕積立金に充てられる状況にないなどの回答もあった。
働き方改革等の実施状況については、72%の会員社(249社)が、取り組み済み、または取り組みを検討中と回答している。
◇ ◆ ◇
マンション適正管理評価制度については、同管理協は今年度末までに登録件数を全管理物件の1割に該当する1万件にする目標を掲げ取り組んでいるが、このまま推移すれば目標は達成されそうだ。
この数字をどう考えるかだが、制度がスタートしてから2年間で1割はやはり少ないと言わざるを得ない。登録は任意ではあるが、同協会が管理組合に引き続き登録を促す取り組みを強化することに期待したい。
回答には、「管理組合に具体的なメリットが感じられにくい」(管理計画認定制度)「インセンティブか不明」(適正管理評価制度)があったが、そんなことはないことを、横浜市立大学(国際教養学部・齊藤広子教授)、同大(データサイエンス学部・鈴木雅智准教授)が首都圏(1都3県)の427棟2,567戸のデータを分析し、同制度で総合評価水準が★3以上の場合、評価を取得していない物件と比べ価格は高いとし、★5のマンションの場合、11%の価格プレミアムが生じていることが確認できたとしている。
この11%は凄い額だ。首都圏の中古マンションの平均成約坪単価を250万円として、11%のプレミアムは20坪換算で500万円以上だ。管理協のデータは公表されているのだから、不動産流通会社はこのデータとレインズ情報を駆使すればほとんど瞬時に登録物件が市場でどのように評価されているかはじき出せるはずだ。
管理会社も管理組合も、劣等生・落第生(★1~2つ)でも取り組み次第では優等生(★4~5つ)になれることを居住者にきちんと説明すべきだ。
◇ ◆ ◇
修繕積立金の増額が容易でない実態も浮かび上がった。複数回答を含め336社が値上げ案が否決されたとか、提案を見送ったとあるから管理組合数にしたら相当の数にのぼるはずだ(国土交通省の平成30年の調査によれば、34.8%のマンションが修繕積立金不足)。
このようなマンションは野垂れ死にするしかないのか。暗然たる気持ちになる。