旭化成不動産レジデンス・マンション建替え研究所は8月22日、第10回「高経年マンション再生問題メディア懇親会」を開催し、「建替えの再取得住戸に係る実態(マンション建替え調査報告書Ⅷ)」報告と、香川総合法律事務所代表弁護士・香川希理氏による基調講演「外部管理者方式でどうなる? マンション管理の未来」を行った。先の香川氏の基調講演に続いて、「建替えの再取得住戸に係る実態(マンション建替え調査報告書Ⅷ)」報告を紹介する。
調査対象となったのは、2001年の同潤会江戸川アパートの第一号から2024年3月末までに着工・竣工した48件。マンション建替え研究所所長・重水丈人氏が報告した。
報告によると、全48件の建替えなどの発意から建替えなど議決までの平均年数は6.3年だった。2019年調査報告書Ⅳの8.3年から約2年短くなっているが、2019年時点での母数は17件で、同社が参画する以前の期間も含めて合意形成まで30年以上だった同潤会江戸川アパートメントも含まれていたため、それほど変化がないとも受け止められる。発意から議決までの期間が「5年以下」は27件で、過半を超えている。
建替え決議など着工までの期間は、「1年未満」が6件(13%)、「1年以上2年未満」が26件(54%)、「2年以上3年未満」が13件(27%)だった。一方で、「4年以上7年未満」も3件あった。
同社は、以前と比較して決議から着工までの期間は長くなっているとし、その理由として、円滑化法による組合施行の場合、建替組合の設立認可、権利変換計画の認可などに時間を要するためとしている。
48件の再建マンションの再取得率は平均60%で、調査報告書Ⅳの66%から6ポイント減少している。すべての区分所有者が転出した事例が1件、区分所有者全員が再取得した事例が5件。
全体として再取得率は低下しているが、新築マンションの供給が少ない都心部の好立地物件は再取得率が高いとも報告している。また、今後建築費の高騰が進めば再取得に要する費用負担が増加するため、再取得率は低下する可能性が高いと指摘している。
不動産開発会社が参加するマンション建替えの資金計画については、建替えに要する解体費、設計費、建築費などを区分所有者が応分の負担をすることになるが、高経年マンションでは区分所有者の高齢化・多様化が進んでいるため、すべての区分所有者、単に原則通り応分の負担を求める資金計画は現実的でないとしている。不動産開発会社が参画する場合は、土地の共有持ち分を購入し、購入した土地の共有持分と等価の区分所有権を再取得を希望する区分所有者に売り渡すスキームが一般的としている。
この場合、再建マンションの価格が高く、かつ容積率に余裕があるときは、区分所有者が追加費用なしで取得できる面積は広くなり、逆に再建マンションの価格設定が低く、容積率に余裕がなければ追加費用なしで取得できる面積は狭くなるとしている。
最近の建替事例の再取得住戸に係る分析では、東京23区の同社事例10件(n=1,039戸)で従前面積ごとで一番多いのは50㎡台で約46%、30㎡台と40㎡台を合わせると全体の20%弱、60㎡台が20%強となっている。
従前面積ごとの再取得率は、従前面積が20㎡台のケースの再取得率は85%強、30㎡台のケースも73%強あり、従前面積が50㎡台、60㎡台の再取得率は60%台と、他に比べやや低くなっている。
建替えに際して従前面積より広い専有部分を再取得した住戸の割合は、従前面積が40㎡台から60㎡台のケースでは従前より広い面積を取得したケースが多く、逆に従前面積が70㎡を超えると増床住戸比率は20~30%台へ極端に低くなっていることが確認できたとしている。
戸当たりの再取得の費用負担額の平均は約1,340万円(n=701戸)で、国土交通省のデータ約1,941万円(n=139戸)より低くなっている。その理由として同社の今回調査対象は東京23区事例で都心立地が多く、建替えを前提とした評価額が高いものが多いためとしている。
また、ほとんどのケースで従前面積と同じ面積を再取得するために費用負担が発生しており、追加費用なしで従前面積と同じ面積を取得できる事例は、今後はまれであるとしている。
一方で、従前面積の中でもっとも該当数が多い「50㎡台住戸」を抽出し、再取得の費用負担の分布をみると、500万円以下が43戸(15%)、1,000万円以下が69戸(23%)、1,500万円以下が70戸(24%)、2,000万円以下が51戸(17%)、3,000万円以下が42戸(14%)となっている。