大和ハウス工業は9月2日、「2024年度 マンション事業計画説明会」を開催し、同社上席執行役員マンション事業本部長・富樫紀夫氏が経営数値・事業環境、今後の重点的な取り組みについて説明し、記者団の質問にも一つ一つ丁寧に対応した。
経営数値については、2023年度のグループ売上高は4,418億円(うち単体マンション事業は1,477億円)、営業利益は373億円(同157億円)、今期は売上高2,640億円(同900億円)、営業利益は170億円(同75億円)の予定で、2026年度の売上高は4,000億円、営業利益は250億円を目指すと話した。
今期売上高、利益が減少するのはコスモスイニシアが連結子会社から持分法適用会社に変更になったことなどによるもの。富樫氏は、これまでは在庫をかなり抱えており、仕入れを抑制してきたが、在庫整理が進んだことにより今後は積極的に事業展開する姿勢を見せた。
マンション市場は堅調に推移しているとみているが、国内の地価や建設費の高騰(とくに労務費)を考慮し、高付加価値物件の供給に絞ることで、量的な拡大から収益・資金効率重視の事業計画へと転換すると述べた。
また、複合開発、再開発、建て替えにも積極的に取り組んでいくとし、「(仮称)SSCつくば学園南プロジェクト」(15.5ha、マンション602戸予定)、(仮称)九州大学箱崎キャンパス跡地プロジェクト」(28.5ha、マンション8年間で2,000戸)、「昭島プロジェクトC街区」(277戸)などの事例を紹介した。
環境配慮、SDGsの取り組みでは、2023年度にプレミストシリーズZEH-M化を100%達成、直近の事例として「プレミスト宮崎台 ライズテラス」(記事参照)を挙げ、「新しいスタンダードになるはず」と話した。
このほか、多用途型の「MONDOMIO(モンドミニオ)」や海外事業、「プレミストサロン東京」の展開などについて説明した。
大和ライフネクストとの連携強化については、2024年度からマンション事業本部へ編入されことから、これまで以上に「製・販・管」の一貫体制を強化すると述べた。「プレミスト昭島 モリパークレジデンス」(481戸)など新築マンションで外部管理者方式を採用し、既存物件でも採用を増やしていくと語った。
◇ ◆ ◇
富樫氏の説明を聞きながら、その4日前の三菱地所レジデンス・宮島正治社長のメディア向け事業説明会を思い出していた。宮島社長は「選ばれ続けるマンションづくり」を行うと強調した。この日の富樫氏は「付加価値の高い、新しいスタンダードになるマンション」供給に力を入れると話した。
マンション市場を取り巻く環境は同じだから、同じ話をするのは当然だが、ほかにも似ているものがあるような気がしてならなかった。年齢が近く、同じ環境下で育ってきたのではないかということだ。ひねくれものが多いわれわれ団塊世代と異なり、経営者の必須要件である前向きな考え方をするのもとてもよく似ていると思った。
富樫氏は1963年11月20日生まれ、宮島氏は1964年5月26日生まれだ。半年しか違わない。近いのは2人だけではない。調べてみた。東京建物住宅事業本部長兼アセットサービス事業本部長・秋田秀士氏は1964年5月18日生まれ、三井不動産レジデンシャル・嘉村徹社長は1964年10月7日生まれ、野村不動産・松尾大作社長は1964年10月18日生まれだ。このほか、住友不動産・仁島浩順社長は1961年3月6日生まれ、大京・深谷敏成社長は1965年9月6日生まれ、東急不動産・星野浩明社長は1965年9月28日生まれだ。この8氏の年齢差は5歳しかない。
つまり、みんな同世代ということだ。共通するのは、入社してすぐバブルが崩壊し、谷底に突き落とされたときが会社員のスタートで、リーマン・ショックで痛い目にもあわされていることだ。幸いだったのは、会社は大きく、這い上がれる若さがあったし、そのころは経営には携わっていなかったことだ。
そして今、各社は大型案件などで手を組んでいる。仲良しこよしでもある。だが、しかし、表向きは笑顔で手を握っているのだろうが、水面下では急所や脛を蹴り飛ばしているのは間違いない。ちょっと隙があれば出し抜いてやろうと考えているに違いない。誰が一番腹黒く、ずるがしこいかお人よしか、思い当たる節はあるのだが、これは絶対書かない。
このように見ていると、マンション市場はものすごく面白い。どことどこが組むかがヒントになる。
見慣れている人ほど評価が高い中規模でも差別化徹底大和ハウス「宮崎台」(2024/8/30)