最優秀賞(内閣総理大臣賞)を受賞した「あそび大学」(右は吉田宣弘・経済産業大臣政務官)
キッズデザイン協議会は9月25日、「第18回キッズデザイン賞」表彰式を行い、最優秀賞(内閣総理大臣賞)の「あそび大学」(特定非営利活動法人あそび研究会)をはじめ優秀賞、奨励賞などが表彰された。
住宅・不動産業界からは、優秀賞(男女共同参画担当大臣賞)子どもたちを産み育てやすいデザイン部門で「誰でも使いやすい 座って囲める『キッチンテーブル』」(積水ハウス)、奨励賞(キッズデザイン協議会会長賞)子どもたちを産み育てやすいデザイン部門で「リーフィア狛江 蒼翠の街」(小田急不動産)と「For PET #子どもと育つ、家族で育む」(LIXIL住宅研究所)、特別賞(審査委員長特別賞)子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン部門で「子どもの身体活動からみた園庭園舎デザイン検証プロジェクト」(ミサワホーム総合研究所、ミサワホーム他)が選ばれた。
表彰式の冒頭、同協議会会長・坂井和則氏(TOPPANホールディングス代表取締役副社長執行役員COO)は、「今年の応募は409点で受賞作は237点。作品にはインクルーシブやジェンダーなど、時代と子どもの課題が如実に反映されている。優秀作品へノミネートされた33作品は素晴らしいものばかり」とあいさつした。
審査委員長の益田文和氏(インダストリアルデザイナー/オープンハウス代表取締役)は、「私は、この会場(六本木ヒルズ)の近くで生まれ育ったが、いい加減(都市生活を)やめようと山口県のオフグリットの田舎に引っ越した。することもないから毎日、虫を見ている」と切り出し、すべての動物はそれぞれに種特有の知覚世界をもって生きており、それを主体として行動しているという「ウンベルト」(環社会)の概念を引き合いにし「人間が世界を支配していると考えるのは大間違い。人間も自然・生き物の一つにしか過ぎない。虫も人間も一緒。大人になるとだんだん悪くなり、悪知恵が働くようになる。しかし、子どもは争わない、一人で生きられないという危機感を持っているし、物事の本質に気付いている。その意味で、子どもたちを支援するというより、その生きざまを形に表して奉仕するのが文明、文化。キッズデザイン協議会はその最先端にいる」と総評した。
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益田氏は記者と同い年の昭和24年生まれだ。いつ山口県に引っ越しされたのか。記者とは違って、都会育ちの益田氏が田園の憂鬱に耐えられるかどうか心配だ。3年が勝負だろう。
その益田氏と同協議会にはお願いがある。キッズデザイン賞が掲げる①子どもの安心・安全に寄与する②こどもの創造性や感性に寄与する③子どもや子育てにかかわる人に寄与する-この3つのミッションはよくわかるのだが、記者の取材分野である住宅などはユニバーサルデザイン(UD)の視点も取り込んで審査していただきたい。住宅・不動産業界はそのような視点でモノづくりを行っている。そうすれば応募はもっと増える。益田氏はIAUD国際デザイン賞の審査副委員長を務めているではないか。
もう一つ。最優秀賞の内閣総理大臣賞や優秀賞の経済産業大臣賞、こども政策担当大臣賞、消費者担当大臣賞、男女共同参画担当大臣賞などと「冠」を付けるのは結構だが、国民の支持率がくるくる変わり、低いときは2割くらいしかない内閣総理大臣賞はそんなに価値が高いか。それより、分かりやすい「金」「銀」「銅」か「益田文和賞」など各審査員の名前を付したほうが不変の価値があり、みんな喜ぶのではないか。官製の冠は競馬、競輪、相撲、花火大会、コンクール…ぞっとしない類の大会がふさわしい。日展、二科展、院展など芸術作品にそのような冠をつけるのは自殺行為だと思う。
グローバル化も進んでいる。「iF DESIGN AWARD」との連携を強化し、国内外でこの賞が注目されるようにしてはいかがか。