大和ハウス工業は10月10日、2024年度事業施設(物流)事業計画説明会を開催し、同社執行役員建築事業本部長・更科雅俊氏が事業施設市場を取り巻く環境、同社の事業展開、今後の重点取り組みテーマなどについて説明した。記者団の質問にも丁寧に答えた。
同社が配布した資料によると、2024年度の民間非住宅建設投資額は17兆8,500億円(前年度比4.4%増)の見込みで、うち民間非住宅建築投資額は10兆6,300億円(同4.0%増)となっている。製造業の国内回帰・国産回帰への動きと半導体関連企業の積極的な設備投資や、人流拡大を受けて、都心再開発事業やホテル業界など設備投資の回復が見込まれるためとしている。一方で、資材価格、原油価格、労務コストの上昇はしばらくの間続くと予想している。
同社の事業施設事業の売上高は2023年度実績が12,944億円(うち海外870億円)、2024年度計画が13,400億円(うち海外881億円)、2026年度計画が13,000億円(うち海外900億円)、営業利益は2023年度が1,232億円(うち海外23億円)、2024年度計画が1,415億円(うち海外32億円)、2026年度計画が1,600億円(うち海外90億円)、営業利益率は2023年度実績が9.5%、2024年度計画が10.6%、2026年度計画が12.3%となっている。
重点取り組みテーマとして、更科氏は「物流2024年問題」への対応として映像とAIを活用した荷待ち・荷役時間を可視化するシステムの実証実験、3温度帯(常温・冷蔵・冷凍)に対応可能な物流施設の展開などを挙げ、具体的取り組みとして、従業員の働きやすさや自然環境にも配慮したタカギの新本社工場、「ZEB」と「水素活用」でCO2フリー水素供給システムを目指したジャパンガスの工場、大和ハウスグループの総合力を活かした半導体関連企業へのBIZ Livness提案、商業施設とオフィスによる複合テナントビル「Dタワー富山」などを紹介した。
海外事業では、米国テキサス州で敷地面積約37.1ha、延床面積約12.5haの平屋建て施設を2025年8月に完成させる予定と話した。
また、地域活性化の事業として、福島県双葉郡双葉町で敷地面積約23,000㎡、S造(一部木造)5階建て延床面積約7,000㎡のカンファレンスホテル客室100室、カンファレンスルーム4室を備えた施設を2026年1月に完成させるほか、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)では電気事業連合会:「電力館 可能性のタマゴたち」、NPO法人ゼリ・ジャパン:「BLUE OCEAN DOME(ブルーオーシャンドーム)」、シグネクチャーパビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」の3つの施設を建設する。
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物流施設の取材・見学会でいつも思うのは「嫌悪施設」のことだ。記者はこれまでマンションや分譲戸建てを中心に取材してきたので、嫌悪施設の有無には注意を払ってきた。売れ行きを左右するからだ。工業系用途の物件が致命的な打撃を受けたのもたくさん取材している。物流施設も嫌悪施設の一つだとずっと思っていた。
ところが、2018年5月、当時の三井不動産常務執行役員ロジスティクス本部長・三木孝行氏(現、顧問)は大勢の記者団の前で「もはや物流施設は嫌悪施設ではない」と語った。その後、この言葉は頭の中にこびりついている。事業規模が10兆円を超え(うち物流の比率はわからないが)、エッセンシャルな事業である物流施設は嫌悪施設なのかどうかということだ。
しかし、その後、事業者は事業拡大、BCP対策、街づくりなどについては力説するのに、嫌悪施設について言及することはなく、記者団からの質問もほとんどない。
そこで、環境対策について更科氏に聞いた。更科氏は、「敷地内の緑化率については都市緑地法などによって規定されており、自治体の規制は20%とか25%など地域によりまちまちだが、当社としても独自の環境対策には力を入れている」と語った。今度、物流施設を「嫌悪施設」と定めている不動産流通促進センターに取材してみよう。
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