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2024/12/17(火) 20:02

「世界で戦えるスタートアップ支援」常識超えたレイアウト CIC Japan勉強会

投稿者:  牧田司

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「CIC Tokyo (虎ノ門ヒルズビジネスタワー)」階段

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梅澤氏

 北米、欧州、アジア(東京)の9都市でスタートアップ向けシェアオフィス/ラボ、支援プログラムを運営するCIC(ケンブリッジ・イノベーション・センター)のCIC Japan合同会社は12月17日、メディア向け勉強会を開催。CICJapan会長・梅澤高明氏、同社CICTokyoゼネラルマネージャー・平田美奈子氏、同社CIC Instituteディレクター・名倉勝氏がそれぞれこれまでの実績、特徴、これからの展開などについて説明した。同社は、東京のほか2025年には福岡でも拠点を開設する予定。

 勉強会で梅澤氏は、「1999年創業のCICのミッションはスタートアップの活動環境を提供することで、グローバル的にもスタートアップのパイオニアだと自負している」と紹介し、これまで25年間、北米、欧州、アジア(東京)の9都市で事業展開してきた結果、入居者は2,500社超、累計資金調達は744億米ドル、年間イベント回数は3,000回以上、年間イベント参加者数は14万人超、わが国の入居企業は約330社に上ることなどを話した。

 CICJapanの大きな特徴として①グローバルネットワーク③環境・エネルギー(気候変動)・バイオ・ライフサイエンス・スマートシティ・宇宙などのディープテックへの注力③女性・外国人への支援のための環境整備のダイバーシティを挙げた。「グローバル展開が前提で、バイリンガルも当たり前。世界で戦えるスタートアップを育てたい」と語った。

 平田氏は、入居企業の1社でわが国史上最速でユニコーンを達成した企業として知られるSakanaAIを引き合いに出し、フレキシブルオフィス/オールインクルーシブル、多様性、バイリンガル、情報発信力がスタートアップには求められると話した。

 核融合工学で博士号を取得している名倉氏は、わが国での事業展開はグローバル展開が前提であり、海外ネットワークとも連携し、海外からの日本での起業も促し、異業種連携や大企業のリソースを活用することが大事などと語った。

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平田氏(左)と名倉氏

◇        ◆     ◇

 デベロッパーやハウスメーカーのこの種の取り組みの取材はそこそこ行ってきた。「スタートアップ」または「ベンチャー」のワードで記者の「こだわり記事」を検索すると50件以上がヒットする。主催者や参加者の熱気はストレートに伝わってきた。プレゼン・ピッチは昔と比べ数段よくなった。

 しかし、課題も山積していると思う。ベンチャー企業の5年生存率は約15%というから極めて経営が不安定なこと、ベンチャーキャピタルの投資姿勢にも問題があること、そして何よりも〝日本語の壁〟がグローバル展開を阻んでいると感じている。

 この点について、梅澤氏も平田氏も名倉氏も海外生活を経験しているとのことで、グローバル展開が前提で、バイリンガルは当たり前と話した。

 もう一つ、関連することとして、プロ野球選手などのアスリート、芸術家、学者などの人材の海外流失について質問したら、梅澤氏は、そのこと自体は問題ないとしながら、外国人のわが国での起業が難しく、先進国の中で最低レベルだと指摘したことだ(これも日本語の壁か、起業障壁はほかにあるのか)。母語(日本語)と外国語教育に力を入れないといけないことを改めて感じた。

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ロゴウォール

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共用部分 廊下

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共用部分 アート

◇        ◆     ◇

 驚いたのは、勉強会後のオフィス見学だった。虎ノ門ヒルズの15階と16階で合計面積は約6,000㎡。15階と16階をつなぐ階段幅は目測したら約3.5m。様々なイベントにも利用できるようにしているのだろう。

 これに目を奪われたのだが、約160室の個室と100席のコワーキングスペースの配置は常識を超えるものだった。わが国のマンションもホテルも飲食店もみんな同じ、限られたスペースを有効利用するためレイアウトは羊羹切りか短冊切りだ。言葉は悪いが、ブロイラーと大差ない。ところが、ここの個室とコワーキングスペースは極端に言えばアトランダム、乱切り。ありえないレイアウトだった。

 これは、創業者で最高経営責任者のティモシー・ロウ氏が京都に訪れたときの路地にヒントを得た演出とかで、廊下・共用スペースは〝うねうね〟うねっており、ところどころにベンチ・椅子、カウンター、アートなどが配されている。(こういうスペースが思わぬアイデアを生む)

 共用部には仮眠室やシャワールーム、ピンポン台、子ども用のゲームコーナーも備えられている。シャワールームは必須だと思うが、記者は見たことがない。

 オフィス見学を案内した方は「(デベロッパーのように)スペースを売っている気はしない。コミュニティの『場』が大事」とも語った。創業時のミッションが隅々まで浸透しているようだ。

 この方は(名前を出していい許可をもらっていないので伏せる)とてもwitに富む。勉強会が終わり、担当者が「これからオフィス見学会を行いますが、また戻ってきますので、貴重品以外はここに置いていただいて結構です」と話したのだが、この方はすぐ「貴重品だけここに置いといてください」とまぜっかえした。40数年間記者をしてきて、これほど面白い方は初めてだ。

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