電信柱より低く強剪定されている加須市・ゆりのき通り街路樹ユリノキ
今は昔。駅頭でハンドマイクを握り、「学生諸君、労働者諸君(正確には通行人の皆さん)」と呼び掛けたことがあった。しかし、この日(2月12日)、送迎バスの中にいるメディア関係者など20~30人の方に何の断りもなく突然、「皆さん、窓から見える街路樹のユリノキが大量に丸裸にされている光景を見ていただきたい」と呼び掛けた。
こんなことをしたのは打負けて初めてだった。不愉快に思われ、嫌われるのは承知の上だった。それほど腹が立ち、涙が出そうなほど悲しくなったからだし、一人でも同調してくれる人がいてほしかったからだ。そもそも、小生は「私はジャーナリストというものが好きではない。彼らはだいたい軽薄で、無駄口をたたき、途方もなく図々しい」(ミラン・クンデラ「冗談」=岩波文庫)そのものだし、自分自身が嫌なのに同業の方々に声を掛けるのは失礼でもあると思い、もう30年も昔に同業のメディアの方々と縁を切った(飲んでもいいと思う同業の方は数えるほどしかいない)。
ユリノキとは、住宅都市整備公団によって昭和61年に整備された「加須・大利根工業団地」(97.4ha)の市道「ゆりのき通り」に植えられている街路樹で、市の道路公園課によると総本数は約300本。今回、高さ約5mをめどに強剪定されたのは156本。
強剪定したことについては「強剪定するまでは高さが10m超のものが多く、大きくなりすぎて倒木の恐れがあり、電線が断裂される恐れもあるため。剪定に関し、市民からの(伐りすぎ)苦情は一切なく、工業団地入居企業からのクレームもない」と説明している。強剪定に要した費用は非公表(1本1万円では済まないはず)で、残りの約150本はいつ剪定するかは決まっていないという。
墓碑銘は「ユリノキ」
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もうこれ以上書かない。「RBA」「こだわり記事」「街路樹」「街路樹が泣いている」「神田警察通り」などで検索していただきたい。かなりヒットするはずだ。千葉大学名誉教授・藤井英二郎氏が講演会で語った「街路樹虐待は自分の首を縛るようなこと」という言葉を紹介する。
小生は今、ブッダの思想を勉強中で、ブッダは「不殺生」「五戒」を説いた。小生はタバコを吸い酒も飲むのでこれには言葉もないが、「不偸盗戒」「不邪淫戒」はしていない。街路樹は基本的には自然樹形にして、強剪定は避けるべきだと思う。
それにしても、市民もそうだが、工業団地に入居する46の企業からも苦情が出ないのが不思議だ。ビッグモーター問題はどうしたのだ。〝喉元過ぎれば熱さ忘れる〟ということか。156本の〝墓標〟を見て何とも思わないのか。
樹高20~30mにもなるユリノキを高さ5mで伐るのは「強剪定」ではなく「伐採」だと記者は思う。泣くな!ユリノキ!人間なんて所詮そんなものだ。