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2025/02/23(日) 06:30

社会&経済問題 同時解決へ 障がい者就労支援 三菱地所×VALT JAPAN「DIC丸の内」

投稿者:  牧田司

Screenshot 2025-02-22 at 11-42-04 「デジタルイノベーションセンター丸の内supported by 三菱地所」開設 - mec250221_dic.pdf.jpg
「デジタルイノベーションセンター丸の内supported by 三菱地所」

 三菱地所とVALT JAPANは2月21日、千代田区新大手町ビルに「デジタルイノベーションセンター丸の内supported by 三菱地所」(DIC丸の内)を開設したと発表。三菱地所代表執行役執行役社長・中島篤氏、VALT JAPAN代表取締役・小野貴也氏が開設に至った背景・経緯、今後の展開などについて説明した。同センターは千代田区唯一の障がい者就労継続支援A型事業所※で、デジタル業務に特化した就労継続支援A型事業所としては23区初となる。発表会に出席した樋口高顕・千代田区長も応援を約束した。

 VALT JAPANは、障がい者特化型DXプラットフォーム「NEXT HERO」事業を手掛ける会社で、三菱地所は同社へ2024年1月に出資。DIC丸の内はが集積する丸の内エリアにDIC丸の内を開設することで、企業からニーズのあるデジタル業務をが受託。DIC丸の内と雇用契約を結んだ障がい者が、証憑データ入力、サイト情報のデータベース更新、書類のデータ化サービス、データ校正作業、AI関連業務(AIアノテーション)などを行う。今後5年間で全国にDICを20センター開設し、約1,000人規模の雇用を予定している。

 中島氏は、2022年に立ち上げたコーポレートベンチャーキャピタル「BRICKS FUND TOKYO」について説明し、「DIC丸の内は『SustainabilityVision2050』で掲げた4つの重要なテーマのうちの『人を想い、人に寄り添い、人を守る』『新たな価値の創造と循環』に資する取り組み。官民が連携してより開かれた、安全なまちづくりを推進していく」とあいさつした。

 小野氏(36)は「我々は〝就労困難者の大活躍時代をつくる〟をビジョンに掲げ、2014年に創業したスタートアップ企業。私は塩野義製薬出身で、ある患者会に参加したとき、一人ひとり障がいや難病、抱えている問題、課題はバラバラだったが、就職できない、仕事でうまくいかないという就労困難問題が全員に共通していた。この事実に衝撃を受け、会社を退社し、26歳で創業した。私自身も摂食障害(過食症)の疾患を抱えており、月30万円(1食当たり3,000円)が食事代に消えた。貯金は25万円しかなかったが、この25万円で一生かけてこの問題を解決しようと志し、今に至っている」と切り出し、2040年の労働力人口約6,902万人のうち約1,500万人が就労困難者となり、約1,100万人の労働力不足が生じるという労働市場の不均衡の問題、さらに就労継続支援B型事業所の月間平均賃金は約17,000円にしか過ぎず、発達障がいの経済損失額は約13.5兆円にも上る経済問題を指摘。

 「DIC丸の内は、経済の中心地で就労支援という新たなモデルを行うことにより、就労支援領域と経済領域が分断されている社会を包括するのが狙い。約5,000の企業・事業所が集積し、上場企業の売上高が約155兆円という大丸有エリアで事業活動している三菱地所さんの強みと、2024年に連携した事業所数330か所、ネットワーク数2,000か所に上る国内最大級のPBO実績を誇る当社の強みを掛け合わせることで、DIC丸の内モデルを成功させ、事業を1都3県と地方に拡大し、5年で20センターを開所する。さらに将来的にはロンドンを拠点にグローバルにも展開していく」と、社会問題と経済問題の双方の課題解決を目指すことを強調した。

 会見に同席した樋口高顕・千代田区長は「仕事が難しい方への就労機会の提供という社会課題、人手不足解消という企業の課題の両方を解決しようという野心的な取り組みを区としても2つの観点から応援していく。一つは、区内には令和4年以降はA型の事業所はなく、今回の施設は大変ありがたい、区民に資する取り組みだ。もう一つは、先般の区長選で公約の一つに掲げたことだが、既存ストックを活用した持続可能な都市へ再生していこうという考えと合致している。素晴らしい取り組み」と称えた。

 現在、障がいや難病などにより、働く意志があっても働けない「就労困難者」は1,500万人(労働力人口の5人に1人)にのぼるといわれている。また、950万人いる障がい者の一般就職率は約6%(60万人)にとどまっており、厚生労働省の調査では、民間企業の51.7%が障がい者の法定雇用率を下回っている現状がある。

 同センターは、東京駅から徒歩3分(東京メトロ丸の内駅直結)、千代田区大手町2丁目の新大手町ビル1階、広さは約60坪。主たる対象者は精神障がい者、発達障がい者。定員は20名(40名まで増員の予定)。利用対象は原則18~65歳未満。週20時間就労が条件。営業時間は9時~18時。

※障がい者就労継続支援A型事業所 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(障害者総合支援法)における就労系障害福祉サービスのうち、一般企業に雇用されることが困難な人で、雇用契約に基づく就労が可能である人に対し、事業所が直接雇用契約を締結して、就労や生産活動の機会を提供するもの。現在の事業所数は4,130か所、利用者数は87,262人(令和6年7月現在)。B型は14,407か所。

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左から樋口氏、小野氏、中島氏

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就労デモ

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休憩スペース

◇        ◆     ◇

 小野氏の話は、アジア初の女性作家でノーベル文学賞を受賞した韓江(ハンガン)氏の代表作で、拒食症が主人公の「菜食主義者」を読んだ後だったので、衝撃を受け、また感動的だった。

 小生は2015年、障がいを抱える人の就労機会を提供するためポラスが立ち上げた「ポラスシェアード」を取材したことがある。小生の身内にも友人・知人にも障がいを抱えている人はたくさんいる。一方で、みんな健常者以上の能力を秘めていることも知っている。三菱地所「キラキラっとアートコンクール」はその能力を開花させた好例だ。なので、小生は障がい者の言葉には抵抗感がある。

 そこで、小野氏に質問した。「私自身も〝お前はまともな人間か〟と問われればイエスとは言えない。障がい者は法律用語なので変更は難しいでしょうが、フランスには障がい者という言葉はないと聞いている。障がい者という言葉は世界共通語か」と。

 これに対して、「我々も同じ思い。障がい者という言葉があるがゆえに障がいを生んでいる側面がある。我々は、障がい者手帳を持っているかいないか、ラベル的に人を判断するのではなく、その方が就労困難な状態であるかどうかを大事にしている。働きたいという意思はあるけれども就労困難な状態であれば、そこをテクノロジーや経済の力で補い、価値を提供していこうということ」と語った。

 三菱地所にはお願いがある。センター内はフェイクグリーンばかりだった。オフィス空間に本物の緑とフェイクグリーンを設置した場合、前者のほうがストレス解消、生産性向上に効果があるという調査結果が出ている。本物のグリーンにするか、それとも「キラキラっとアート」の素晴らしいアート作品を購入しプレゼントしてはどうか。

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センター内のフェイクグリーン

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ポラス越谷市初の特例子会社へ障がい者中心の新会社設立(2015/3/30)


 

 

 

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