「&mog Food Lab」
三井不動産は2月26日、日本橋を中心に取り組む食のイノベーション創出プロジェクト「&mog by Mitsui Fudosan」の一環として、食の研究開発拠点「&mog Food Lab」を開設したと発表。同日、プレス内覧会を行った。
同社は、2019年に発表した「日本橋再生計画 第3ステージ」で「食」を「新たな産業の創造」の戦略カテゴリーとしており、昨年3月に食の事業開発を支援するプラットフォーム「&mog」を始動した。&mogでは、同社が運営するハードアセットに加え、地元飲食店や商社など30以上のパートナーとの連携によるソフトを活用した事業開発の支援を通じて、食産業が抱える社会課題解決への貢献を目指している。
今回の「&mog Food Lab」は、食関連企業の「自前の研究開発施設を整備する投資余力が無い」「新規事業開発用の活動拠点が無い」「試食会に適したスペースが無い」などの事業課題に応える施設。オーブン・製氷機・食洗機・ミキサーなど飲食店レベルの厨房設備のほか、試食会スペース、撮影スタジオを完備し、一部は入居者以外も利用が可能。賃料は非公開だが、エリアの相場を上回るという。
ラボで開発された商品は同社の商業施設や日本橋の飲食店で販売し、新規事業の開発から都市実装までをワンストップで支援する。
施設は、日比谷線小伝馬町駅から徒歩約5分(人形町駅から徒歩約10分)、中央区日本橋富沢町に位置するワンフロア10坪、5階建て延床面積75坪。6年前に同社が取得し、耐震補強を行って賃貸するもの。
内覧会で同社日本橋街づくり推進部事業グループ主査・柿野陽氏は「施設は75坪単価の規模。入居企業へはハード・ソフト両面で食の研究開発を支援するとともに、商品は当社の商業施設や日本橋エリアのホテル向けやイベントで販売するなど、ワンストップで支援する。今後もブラッシュアップして街づくりに貢献していく」とあいさつした。
内覧会では、入居しているCOLDRAW、マチルダ、食の会のそれぞれの飲食品の試飲・試食が行われた。
ダイニング
フードラポ
試食会・商談スペース
フォトスタジオ
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この前は、三菱地所ホームが行った神戸・元町の一等地の敷地面積10坪、延床面積20坪の木造2階建てを見学取材したばかりだ。この日は、〝食文化の聖地〟日本橋・人形町の5階建て75坪のエレベータもない古いビル(1フロア10坪だから、階段などで1フロア5坪か)の施設見学会だった。
売上高が1兆円を超えるわが国を代表するデベロッパーのこのような取り組みが都問題を解決し、やがて大きなビジネスにつなげるのだろうと思った。
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試飲・試食させてもらったものの中で、記者の一押しは、日本橋の人気レストラン「食の會」のカレーだ。一口食べた瞬間、60~70年前に食べたカレーの味が口腔を満たし、当時の食事風景がよみがえった。これは我々のような高齢者には昔の懐かしい味を思い出させてくれるし、若い人はわが国の食文化・歴史を学べる。
「食の会」代表取締役・長内あや愛さんの説明によると、福澤諭吉が160年前に「Curry」を「コルリ」と訳してわが国に紹介して、カレーは広まったのだそうだ。肉の代わりに赤カエルを入れ、ネギ、ショウガ、メリケン粉を使用したという。(試食会では赤カエルではなく鶏肉が入っていた)
独自の冷温減圧技術で、多様な植物素材を使った唯一無二のノンアルコール飲料の開発に取り組んでいるCOLDRAWの「阿波柑」は、酒飲みの記者は日常的に飲みたいとは思わなかったが、開発意図は理解できる。酒が飲めない人、飲めるのに飲めないときに樹木や植物などの香りを楽しみながら酒飲みと会話が交わせる。(カラマツ、アカマツ、アブラチャン、ヒノキ、タイムなどの香りをブレンドした「KAMOSHIKA Drinks(カモシカ飲料)」はおいしい)
日替わりの家庭料理を約30か所の「テイクアウトステーション」で販売しているマチルダのしば漬けソース添え「アジフライ」は、二つの味が楽しめる。しば漬けは主菜のフライをしのぐ存在感があった。
COLDRAW代表取締役・西川信太郎氏
記者のデジカメで撮影したマチルダの試作品(スタジオブースで)
現地