「TOFROM YAESU TOWER」(左)と「TOFROM YAESU THE FRONT」
東京建物は3月3日、東京駅前の再開発「八重洲プロジェクト」記者発表会を開催し、街区名称を「TOFROM YAESU(トフロム ヤエス)」に決定したと発表。プロジェクトA地区の再開発組合理事長で特定業務代行者代表企業でもある同社代表取締役社長執行役員・小澤克人氏と、プロジェクトB地区の再開発組合理事長・加藤一男氏がYNK(八重洲・日本橋・京橋)の玄関口にふさわしいウェルビーイングな街づくりを進めると語った。発表会には60名を超えるメディアと関係者など約100名が集まった。
「TOFROM」のロゴは、伝統と最先端が溶け合う、進化を続けていく東京の最前線のエリアであるYNKエリアにふさわしい「八重洲へ(TO)/八重洲から(FROM)」多様な価値観を“つなげていく”という思いが込められた造語。
ワーカーのウェルビーイング向上をオフィス全体でサポートするため、予防医学研究者・石川善樹氏監修のもと、個人のウェルビーイング状態を簡易に測定できるツール「ウェルビーイングスコア」を開発し、20個の「ウェルビーイング向上因子」をもとにした①わが国初の「喫泉室」や仮眠室を備えたリフレッシュ空間「YAESU SKY LOUNGE」②47都道府県の郷土料理などを提供する食堂・カフェ&バー・ビュッフェカウンター、サードプレイスとして多様な過ごし方を選択できるラウンジ空間、緑化やアート・お茶に特化した会議室などのウェルビーイングフロア「Wab.」③東京駅を眼下に望む「Rooftop Terrace」④短期でも利用可能なハイグレードフレキシブルオフィス「EXEVIA TOKYO YAESU」-などを整備する。
国際都市東京の玄関口にふさわしい都市機能の強化としては、「日本医科大学八重洲健診ステーション」や約800名収容可能な劇場・カンファレンス施設を整備する。
また、TOFROM YAESU TOWER地下階には、UR都市機構が整備する「バスターミナル東京八重洲」の第2期エリアを整備。今回のプロジェクトを含む第3期エリアの開業後には国内最大級の高速バスターミナル(3エリア合計20バース)となる。
商業施設には、江戸の食文化を継承する創業100年超の老舗のほか個性的な飲食店など約70店舗がオープンする予定。
加藤氏は「今から25年前、小さな夢と希望があった。その後、大きな夢に変化した。しかし、半面、目標が大きくなるにつれて相応の困難が伴った。長い長い時間との戦いでもあった。それでも、この再開発を我々の力でなし遂げるのだという強い思いがその困難を乗り越える糧となった。竣工まであと1年。我々の目標が形となる。これが次の世代への力強いスタートとなることを願う」とあいさつした。加藤氏は78歳。東京建物本社ビルに近接する創業175年(寛永3年)の「割烹 嶋村」の8代目代表取締役。
小澤氏は、現段階でのオフィステナントの入居内定率は60%であることを明らかにし、「当初からの予定通りの進捗。急いで稼働率を上げるより、GDPからGDWを重視する世界的な流れであるウェルビーイングのコンセプトを十分理解していただいて入居していただくことを優先する」と語った。
「八重洲プロジェクト」は、2000年、東京都駅前地区再生推進懇談会発足、2008年、京駅前八重洲一丁目東地区市街地再開発準備組合設立、2015年、都市計画決定。施行者・東京駅前八重洲一丁目東A地区市街地再開発組合による敷地面積約1,300㎡、10階建て延べ床面積12,000㎡の「TOFROM YAESU THE FRONT(トフロム ヤエス ザ フロント)」と施行者・東京駅前八重洲一丁目東B地区市街地再開発組合による敷地面積約10,600㎡、51階建て延床面積225,000㎡の「TOFROM YAESU TOWER(トフロム ヤエス タワー)」2棟で構成。主要用途は事務所、店舗、診療所、劇場・カンファレンス、バスターミナル、住宅など。設計はA地区が大成建設、B地区が大林組。施工はA地区が大成建設、B地区が大林・大成建設共同企業体。全体竣工は2026年7月。
加藤氏(左)小澤氏(東京スクエアガーデン 東京コンベンションホール)
Rooftop Terrace イメージ
Wab.緑の会議室 イメージ
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これまで数えきれないほど再開発組合理事長のあいさつを聞いてきた。計画から完成までスムーズに運んだものなど一つもない。加藤氏は「今から25年前」と語りだし、「小さな夢と希望」が「大きな目標」となり、「相応の困難」「長い長い時間」との戦いが続いたことを淡々と語った。
記者は穏やかな語りに感銘を受けた。いつものように会場の最後尾に座っていたので、加藤氏の年齢や割烹料理店の8代目店主などとは全く知らなかったが、ちょうど昼時だったので利用することにした。ホッケの日替わり定食はとてもおいしかった。
頂いた資料には桜田門外の変などの歴史や久保田万次郎、獅子文六、田山花袋、豊島与志雄、永井荷風などか贔屓にしたことなどが記されていた。ビールと芋焼酎「嶋村」を2杯飲んだので、料金はいつもの「日高屋」の4倍だったが、文豪が利用した店で食事ができ、酒を飲める価値は値段には代えられない価値がある。
嶋村
日替わり定食
ヒノキのカウンター
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発表会後にメディアに紹介されたデモ施設では、「喫泉室」が最高に素晴らしかった。ブース(2m×2m)に入った途端、樹木(ヒバ)の香りが全身を貫いた。ブースは4つの予定で、価格をどうするか、樹木の香りを定期的に変更するかなどは検討中とのことだ。かつて、三菱地所が同じような商品を開発したのを思い出したが、値段が高かった。どうなったのだろう。
「喫泉室」イメージ
公開された「喫泉室」デモ
Wab.ラウンジ イメージ
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「TOFROM」には「住宅」も整備されるが、これは分譲でも賃貸でもなく、地権者用住居で、戸数は十数戸になる模様だ。建物の所有や処分に関する契約がどうなるのかわからないが、仮に区分所有建物であれば、記者は坪5,000万円、30坪で15億円(もっと高いか)で売れると思うが、みなさんいかがか。
現場