「太子堂の家」
〝不動産・建築・リノベーションのプロフェッショナルチーム〟をうたうJam(Japan asset management株式会社)は3月8日、空き家活用プロジェクト「太子堂の家」竣工見学会&懇親会を開催。築68年の借地権付き64㎡の専用住宅オーナーと同社が8年間の定期賃貸借契約を結び、共同投資して約1,200万円の工事費をかけ、隣接地事業者に転貸する仕組み。転借人は「民泊」として活用する。プロジェクトには同社のほか、地元でコミュニティ施設を運営する空き家リノベラボパートナー・三茶ワークカンバニーなど多くの企業・団体がかかわっている。
プロジェクトは、オーナーが相続で建物を取得したが、再建築が不可であることから世田谷区の空き家相談を介してJamが紹介されスタート。現行法では第一種住居地域・近隣常行地域にまたがっており、建ぺい率60%・80%、容積率200%・300%のエリア。建物は耐震補強を行っているが、「大規模修繕」「大規模の模様替え」に該当せず、2025年4月以降の建基法改定による申請は不要だった。現在の土地所有者は、底地権者が物納したため財務省。
建物オーナー(61)は「三茶WORK 茶や」で行われた懇親会で、「もともとは祖母の家で、祖母、父母と私の4人で30年くらい住んでいた。私は30代のとき大田区に移り住んだ。以後は父が住んでいたが、死亡してから4~5年空き家になっていた。家も死んだと思っていたが、生き返った。心から嬉しい」と語った。
Jam代表取締役/仕掛人・内山博文氏は「この3年間、地域の方々とつながるプロジェクトに取り組んできた。今回の物件はその集大成。街づくりの形が見えてきた。わくわくしている」と話した。
空き家リノベラボ(通称「あきラボ」)は、不動産・建築・金融 の多角的な視点から、空き家・相続不動産の課題解決をあきラボパートナーと連携し、ワンストップでサポートするプラットフォーム。
耐震補強の柱と梁
階段
水槽(オーナーのお父さんは30センチもする金魚を飼っていたとか)
道路幅は約1.5m
内山氏
◇ ◆ ◇
Googleの地図検索を頼りに現地に向かったのだが、丁目と番地までしか表示がなく、号にたどり着くまでは番地を一周りしなければならなかった。細い路地に入ってすぐ既存不適格建築物であることが分かった。道路幅は2mどころか1.5mくらいしかなかった。同様の既存不適格建物はこのほか数軒あった。
頂いた資料のBeforeには接道なし、再建築不可/旧法借地権付き、用途/規模は専用住宅木造2階建て、築年数は昭和31年、建築面積/延床面積は40.94㎡/64.12㎡とあった。
昭和31年は記者が7歳のときだ。既存の玄関ドア、天井現し、13段の階段、柱、窓、壁、水槽、庭石、樹木などを見て、懐かしさがこみあげてきた。
と同時に、合法的に建てられたのかの疑問が湧いた。関係者によると、現状の敷地面積は83.9㎡だが、当時の敷地面積は不明で、着地権でもあることから建築当時はおおらかな形で申請がなされ、当時の建ぺい率60%(容積率は定めがなかった)には適合していたのではないかということだった。
和室(6畳)
現し天井
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懇親会では多くの方と歓談した。不動産は排他的・絶対的な支配権を有し、空き家はテーマが大きすぎ、権利関係も複雑なので記者は取材を避けてきた。この種の対症療法的な空き家リノベは根本的な問題の解決にはつながらないと考えているが、「古いものが残ってよかった。新しいものとの共存が大事」「地域の住民にとって(空き家のままより)安心できる」「転借人は地域とのコミュニケーションを大切にしている方」「路地が大好き」「私も相模原に空き家がある。何とかしたく、見学会に参加した」などと切実な声を聴いた。
メディアは信用されていないことも感じた。「取材です」と声を掛けると、眉をしかめる人もいた。「あなた、神宮外苑をどう思ってるの? 」と問われたので、「三井不動産は『経年優化』を目指している。いい街になると思いますよ」と答えたのがいけなかった。集中砲火を浴びた。(RBAタイムズのホームページで「神宮外苑」を検索していただきたい。野球記事もあるが全部で143件ヒットする。記者は嘘は書かない)
築60年、既存不適格、借地権…難問クリア空き家リノベラボ「house matsubara」(2024/8/7)