大和久氏(左)と川畑氏
旭化成ホームズは4月2日、新社長就任に伴う合同会見を開き、4月1日付で同社代表取締役社長から代表取締役会長に就任した川畑文俊氏(66)と、同社取締役専務執行役員兼マーケティング本部長から代表取締役社長に就任した大和久裕二氏(61)が社長交代に至った経緯、今後の抱負などを語った。
会見では川畑氏が口火を切り、「8年前に2025年までに売上高1兆円、利益1,000億円を目指すと話したが、その目標がほぼ達成できた。この間、コロナとか戦争など予期せぬ変化もあったが、それを乗り越え、目標を達成した社員の成長と努力に敬意を表したい。大変うれしく思っている。これから次のステージに入ってくわけだが、今まで以上に拡大と成長を目指すためには、新社長でやるほうがより成功確率は高まると交代を決めた。私も会長として全体を全力でサポートしていく」と語った。
これに答える形で大和久氏は、「私は入社後ほぼ一貫して現場を担当してきた。『(川畑社長が8年前に)2025年に売上高1兆円、営業利益1,000億円達成は私の使命』と打ち出したときは、想像を超える数値だと思った。それが現実のものとなりつつある。有言実行の人であることを学んだ。社長の責任の大きさを感じるが、私も受け継いでいきたい。目指すのは、一つは国内の住宅事業をさらに成長させていくこと。海外事業や投資事業などリスクが伴う事業も積極的に取り組んでいく。もう一つは、当社の強みでもある人材の育成。自ら考え、行動しイノベーションにつなげることが必要不可欠。そのような人材を全力で支えていく」と抱負を述べた。
社長交代について川畑氏は、「社長の役割は、次期後継者を育てるのも大きな役割の一つ。8年前に社長に就任した時から大和久は有力候補の一人と考えていた。仕事の面でも被る時期が多く、なによりも彼の素晴らしいのは人柄の良さ、人間性。それと仲間を支えるリーダーシップ力、芯の強さが決め手。社長交代は1年くらい前に伝えた」と話した。8年間を振り返り、「事業環境は厳しがったが、運がよかった」などと報道陣を笑わせた。
大和久氏も川畑氏の意向をくみ取っていたようで、覚悟はできていたようだ。趣味についての質問に「趣味は2つあってゴルフとテニス。ゴルフは珍しいレフティ」と話した。また普段心がけているのは「チャレンジしていくこと、そして成し遂げるために工夫を凝らすこと。これをモットーにしている」と語った。ゴルフのハンディは非公表、ドライバー飛距離は230ヤード。
写真も記事も視点が大事(大和久氏はスタイリッシュな自分をアピールしたかったのか、半身に構えていた。それとも、謙虚な姿勢の表れか、虚勢を張るようなことはしなかった。川畑氏は威風堂々。全然お構いなし)
◇ ◆ ◇
同社が力を入れる不動産開発事業について。記者は、注文住宅や賃貸住宅市場はよくわからないが、分譲マンションと分譲戸建ては40年以上取材してきているのである程度のことは分かる。寡占化が進むマンション事業で同社がその一角の座を占めるのは容易ではないが、可能性はあると見ている。売上高や供給量のことではない。消費者から選ばれるトップブランド10社に入るかどうかだ。
現在のマンション市場は、三井不動産レジデンシャルが飛びぬけており、野村不動産、住友不動産、三菱地所レジデンスが追い、積水ハウス、東京建物、東急不動産、日鉄興和不動産、大和ハウス工業などが続いている。あと1社を挙げるとすれば同社のほか阪急阪神不動産、近鉄不動産、日本エスコン、大和地所レジデンス、タカラレーベン…などか。紙一重だと思う。オリックス不動産(大京)にも期待していたのだが、圏外に消えた(失礼)。
同社の強みは、何といっても建て替え・再開発事業で培ってきたノウハウだ。「宇田川町」「池尻」「江戸川台」「日暮里」「茗荷谷」「北千住」「国領」「調布富士見町」「四谷」「宮益坂」(順不同)…マンションブランド「アトラス」の実績は他社に負けない。商品企画力もここ数年、飛躍的に向上している。
負けないけれども、何かが欠けている。これは積水ハウスにも大和ハウスにも言えることだが、個人住宅や賃貸住宅とのシナジー効果を向上せるためのブランディングが欠かせないと思う。
◇ ◆ ◇
どうでもいいことだが、会見は思いもよらぬ展開になった。会見場には余裕を持って数分前に到着したのだが、数十人は座れるメインのメディア席はほとんど埋まっており、同社広報担当から「空いているのはあそこだけです」と最前列の右端を案内された。
嫌な予感がした。小生は前が嫌いなのだ。悪戯好きの小生は小学生のときから〝授業の邪魔者〟扱いされ、いつも廊下に立たされた。中学では〝出ていけ〟と授業を免除された。裏山で時間を過ごしたり、そのまま家に帰ったりしたことも何度もあった。高校に入って間もなく最前列の教壇の前に座らされた。毎日のように遅刻し、2時間目くらいには授業中に弁当を食べ終え、成績も後ろから数えたほうが早かったことに対する先生の配慮だったのか。座り心地は最悪だったが、卒業するころの成績は逆転した。効果はあったのだろう。
そんな昔のことを思い出した。質問する勇気も消え失せた。ただ、いいこともあった。最前列の右端だと会見場が俯瞰でき、他の記者がきちんと話を聞いているのか、理解できているのかが一目瞭然だ。特等席でもある。
残念だったのは、メディアの方々はみんな小生とは逆の優等生ばかり。社長も会長も立ち往生する質問は一つもなかった。(小生は川畑氏が社長に就任したとき「待望の大型(最重量)社長」と記事にした)
まあ、これも仕方がないとあきらめ、川畑氏が「私よりうまい」と語った大和久氏のゴルフの腕前を会見後に聞くこと1本に絞った。回答は上段の通りハンディは非公開、飛距離は230ヤード。川畑氏は「ドライバー? 230ヤード以下。腹が邪魔してクラブが振れない。まあ、シニアとしてはこれくらいではないか」と満足しているようだった。
もう一つ、大きな収穫があった。同業の記者の方とタッグを組んで社長の座右の銘と好きな作家を聞くことだった。大和久氏は次のように話した。
「私の利点は謙虚。笑われるかもしれないが、いずれも古典的。座右の銘は『実るほど頭を垂れる稲穂かな』です。これは入社3年後に二世帯住宅の契約をしていただいたお客さんのお父さんから教わった言葉です。好きな作家はアンドリュー・カーネギー」
――謙虚、稲穂。なかなかできないことだ。
最前列の端っこからだとこんな写真が苦もなく撮れる(同社本社が入居する神保町三井ビル)
旭化成ホームズ THE グローバル社と業務資本提携約10%の株式を取得(2025/3/11)
旭化成ホームズ新社長に大和久裕二・取締役兼専務執行役員、川畑社長は会長へ(2025/2/7)
「社員が明るくなった」川畑社長旭化成ホームズオフィスを全面リニューアル(2023/2/2)
富裕層の〝こころ躍る〟旭化成不レジ「ATLAS」マンションギャラリー「渋谷」開設(2022/1/17)