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2025/04/17(木) 19:48

高額注文住宅と規格住宅を車の両輪へ 野島秀敏・三井ホーム社長

投稿者:  牧田司

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野島氏(本社:新木場センタービルで)

 三井ホームは4月17日、社長就任記者懇親会を開催し、4月1日付で社長に就任した野島秀敏氏が「注文住宅の会社から住宅事業+木造施設建設の会社へ」構造改革を進め、「木造建築のナンバーワンを目指す」と語った。同社の強みである富裕層へのアプローチを再強化する一方で、コスパ・タイパを重視する若年層に対応した規格住宅「三井ホームセレクト」を棟数ベースで注文住宅と同じくらいにする意向を示した。懇親会には約30人が参加した。

 野島氏はまず、昨年5月に本社機能を「新木場」に移したことについて触れ、移転の大きな目的の一つとして「新木場は木造の会社が集積しており、昔からおつきあいしている会社もあれば、初めて接点を持たせていただいている会社もある。当社は木造建築のナンバーワンを目指しており、皆さんとうまく関係を構築するために飛び込んできた」と説明した。

 注文住宅市場については、「マーケットがずっと縮小し続けており、業界として厳しい状況に追い込まれているのが現状だが、一方で、環境問題、脱炭素の流れの中で建物を木で作ろうという動きが強まっており、これをチャンスと捉えたい」と話し、「注文住宅の会社から住宅事業+木造施設建設の会社へ」構造改革を進めると話した。

 そのため、「当社は25万棟の注文住宅の実績がある。そのノウハウを生かし、強みである富裕層向け高額注文住宅を再強化する。一方で、コスパ・タイパ、リセールバリューを重視する若い方向けの規格住宅(三井ホームセレクト)を昨年スタートさせた。試行錯誤の段階だが、できるだけ早い時期にこの両輪を回せるようにしていく。将来的には棟数ベースで注文住宅とセレクトの比率を同じくらいにしたい」と語った。

 同社の木造建築の事例としては木造マンション累計受注棟数78棟のうちMOXIONが46棟に上っていることのほか、木造ニーズの高まりの中で学校施設、学生寮、ロードサイド店舗などが増加していることを説明した。

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10ブースくらいある執務室(プレートに「KARIN」とあり、室内の机はカリン材)

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 野島氏が話した中で、富裕層向け高額商品の強化と規格住宅の投入により、車の両輪を目指すと語ったことに注目したい。国交省のデータを待つまでもなく、持家の着工戸数は漸減するのは間違いない。縮小するパイの奪い合いになるのは必至だが、記者はデザイン性の高い同社の商品は競争力が高いと見ている。

 規格住宅はどのようなものかよくわからないが、野島氏は性能を落とさずに、分譲マンションや分譲戸建てに流れている需要層を獲得できると話した。かじ取りが見ものだ。

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9階本社オフィス(手前のテーブルはかなり高価)

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 記者も野島社長に聞きたいことはあったのだが、質疑応答の時間が足りなかったのか、個別質問があったためか、たくさんのメディアの方が列をなしていたので質問をあきらめた(それにしてもみんな質問時間が長すぎる。ワンイッシューにすべき)。

 聞きたかったのは、野島氏の入社は1988年だから、その直後にバブルが崩壊した。甘い汁は全然吸っていないはずだ。その後2013年に三井不動産レジデンシャルに異動するまでの25年間はどのような仕事に携わっていたのかだ。厳しい事業環境下にあったはずで、座右の銘と関係はあるのかどうか。また、慶大卒といえば、三菱地所レジデンスの宮島社長の2歳後輩だ。趣味も似ているのではないか(宮島氏はカヌーではなかったか)。交流はあるのかどうか、機会があったら聞いてみよう。

 もう一つは、〝木造コンプレックス〟〝現しの呪縛〟について。この問題については記事を添付するので、読者の皆さんも考えていただきたい。「モクシオン稲城」を取材したとき、同業の記者の方が「これって鉄かコンクリか木造か分かりませんよね」との趣旨の質問をしたところ、同社技術研究所研究開発グループマネージャー・小松弘昭氏(当時)は「現しにしないといけないというのは木造コンプレックスの裏返し。木の性能、コストなど科学的・合理的なことのほうが大事」と言ったのを記事にしたものだ。

 記者はこの小松氏の〝一喝〟になるほどとは思ったが、やはり「現し」は美しい。「美しいもののみが機能的」と語った丹下健三の意見に賛成する。野島氏の意見を聞きたかった。

 さらに加えるなら新木場の地区計画についてだ。都は平成11年11月15日付で従前の用途地域・工専を準工業に変更し、なおかつ「新木場・辰巳三丁目地区 地区計画」を定め、約151haにわたり「木材関連をはじめとする多様な生産・流通機能と商業・業務機能などが共存できる複合地区の形成を図る」目的に適さない住宅や風俗系建築物、廃棄物処理場を不可とした。面積は約115haの皇居を上回る。

 読者の皆さんもご存じなかったようで、この記事へのアクセス数は7,000件を突破した。記者は、貯木場の役割が終えたのだから、その景観を生かしホテルや住宅を可能にしたら「グラングリーン大阪」を上回る素晴らしい街ができると思う。あと10年もすれば、そのような案が浮上する気がしてならない。これは野島氏より三井不動産社長の植田氏に聞くべきか。「妄想」⇒「構想」⇒「実現」の可能性はあるかどうかだ。

 野島氏は1963年生まれ。兵庫県出身。慶應大学経済学部卒。1988年、三井不動産入社。2013年、三井不動産レジデンシャル企画経理部長、2015年、同社東京オリンピック・パラリンピック選手村事業部長、2020年、三井ホーム取締役常務執行役員、23年兼三井ホームカナダ(株)代表取締役会長(現任)・兼三井ホームアメリカLLC取締役会長(現任)を歴任。2024年、同社取締役専務執行役員、2025年4月1日付で代表取締役社長に就任。趣味はダイビング(キャリア26年)、座右の銘は「寛仁大度」。

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