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2021/12/09(木) 18:25

外貌の呪縛を解き放つか 「現しを求めるのは木造コンプレックス」三井ホーム小松氏

投稿者:  牧田司

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MOCXION INAGI(モクシオン稲城)」

三井ホーム「MOCXION INAGI(モクシオン稲城)」のメディア向け完成現場見学会の取材を終え、帰りかけたときだ。同業の女性記者が「これって鉄かコンクリか木造か分かりませんよね」との趣旨の質問をした。すぐさま、同社技術研究所研究開発グループマネージャー・小松弘昭氏は「現しにしないといけないというのは木造コンプレックスの裏返し。木の性能、コストなど科学的・合理的なことのほうが大事」と言い切ったではないか。

この会話を傍で聞いていた記者は、一瞬「コンプレックス」は「complex=複合」という意味なのかとも考えたが、両者のやり取りから「complex」は明らかに「劣等感」という意味で小松氏は用いたはずだ。

記者は森林・林業、木造の取材を始めた10年くらい前から、建築基準法の耐火・防火基準は、わが国の伝統的な木造建築の歴史・文化をぶち壊し、欧米の鉄やコンクリで埋め尽くそうという陰謀であり、元に戻すには耐火・防火基準の緩和と、意匠・デザインは現しにすべきとずっと主張してきた。美しい木肌・木目を石膏ボードなどケミカル製品で覆い隠すのは、女性に例えればせっかくの美顔・美肌に安物のどうらんを塗りたくるのと一緒ではないかと。

それを小松氏は「木造コンプレックス」と昂然と語った。頭をどやされたような気がした。しばし考えた。なるほど。「皆さんは現しがいいと仰るが、確かに風雨にさらされ時と共に朽ちていくのも風流かもしれませんが、木の本質を知っていただけるなら、外観をどのように覆っていただいてもかまいません」とみどりの女神(いつの間にみどり=山の神は女神になったのか)が囁いているのだろうか。それでも記者は現しがいいと考えるが。

 そういえば、「今度の美人会長も楽しみにしている」と発言した福島県相馬市の立谷秀清市長も、「顔のきれいな子は賢いことを言わないときれいに見えない」と語った静岡県の川勝平太知事も、女性の外形差別だと批判を浴び謝罪した。作家の西加奈子氏は「日本一賢い猫が、あなたの呪縛を解きほぐす 自分を『ぶす』だと思っている全女子におくります」という帯付きの「きりこについて」(角川文庫)という小説を発表した。

 木も同じことなのか。この日、三菱地所、住友林業などは「一般社団法人日本ウッドデザイン協会」を設立した。関係者らで、現しを求めるのは木造コンプレックスなのかどうか論じていただきたい。小松氏の指摘は一考に値する。顔や外観の呪縛から解き放たれたら世の中はひっくり返る。

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壁(左)と床の実物大模型

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