マンション管理業協会は5月15日に行われた恒例の記者懇親会で、同協会と不動産情報サービスのアットホームが連携し、横浜市立大学の「マンション管理適正評価制度の情報開示が市場価格に与える影響」に関する研究を支援すると報告した。
アットホームは、同協会から提供を受けたマンション管理適正評価の登録情報を「不動産情報サイト アットホーム」に2022年11月から掲載している。今回の研究は、中古マンションの購入者側の情報の不足、情報の非対称性が著しい現状に着目し、同制度の情報が価格に与える影響を可視化するというのが目的。
同様の調査・研究は昨年4月、横浜市立大学(国際教養学部・齊藤広子教授)と同大(データサイエンス学部・鈴木雅智准教授)が行っている。オール満点の★5つのうち★3以上のマンションは評価を取得していない物件と比べ価格は高く、★511%の価格プレミアムが生じていると報告している。今回の調査・研究はその第2弾。
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同制度は2022年4月にスター。良好なマンション管理が市場で適正に評価されるよう★の数(満点は★5つ)で〝見える化〟するのが目的だ。3月末の登録件数は8,250件となっている。
この日の同協会の報告を受け、記者はてっきりアットホームの物件情報サイトに掲載されている★が付いているマンションは、近傍同種の物件と比較して価格が高いのか低いのかすぐ分かるものだと思った。
ところがそうではなかった。調査・研究の結果報告は1年くらい先で、個別物件の価格がどのような評価を受けたかは公表されない可能性が高い。
これにはがっかりした。学者・先生が★の多寡を数値的に処理し研究するのはいいことだが、調査期間が1年だとすれば、調査に要する時間とエネルギーをお金に換算したら多額に上るし、しかも、その結果報告はマンション購入検討者には届かない。
いま必要なのは、★が付いたマンションを増やすことで、★の数が多いマンションほど市場で高い評価(価格)を受けていることを伝えることだ。
学者・先生の研究を待たなくても、中古市場に精通した不動産流通会社の担当者なら★がついているマンションの属性、質がどのようなものかすぐ分かるはずで、近傍同種の物件との価格差も瞬時にはじき出せるはずだ。
その担当者がはじき出した査定価格が適正かどうかの根拠となっているものの一つにレインズデータがある。レインズ情報は登録している不動産会社しか利用できず、消費者など一般の人がどのようなテータが搭載されているか知ることはできない。記者がある不動産会社でちらっと見た限りでは、成約価格の履歴もわかる。まさに〝打ち出の小槌〟だ。
今回の同大学の調査・研究も、このレインズデータを利用できればいいのだが、もレインズデータの扱いは厳しく、以下のような規制がある。
(1)会員(不動産会社)は、レインズ情報を、購入や売却等を検討する顧客への物件紹介、また取引価格を設定する根拠として明示すること等の不動産取引を成立させるため以外の目的で利用することはできません。レインズ情報を用いたデータベースや不動産検索サービス等を第三者に提供する行為や、レインズ情報を直接顧客に検索・閲覧等させるようなサービスを提供する行為は目的外利用に該当します。
(2)会員は、レインズ情報を、媒介行為その他の宅地建物取引業の用に供する目的以外の目的で利用し、利潤を得ることはできません。また、利潤を得ていない場合も、上記(1)の目的以外の目的で同情報を外部に提供・開示すること自体が、レインズ利用規程第14条第3項及びレインズ利用ガイドラインに違反します。
このように、レインズ情報は不動産会社が独占的、排他的に利用できるものだ。情報の非対称性がこれほどはっきり明示されている事例はほかにあるのか。同大学もレインズ情報にはアクセスできないはずだ。
だが、しかし、先にも書いたように仲介会社は、レインズデータに頼らなくても、独自のデータから★付きマンションの価値(価格)判断は瞬時にできるはずだ。登録件数が少ない今だからこそやるべきだと思う。同制度が世の中に浸透し、みんな★5つか★4つになったら、情報の希薄化が進み、価値判断の材料にならなくなる。
マンション管理適正評価 ★5つは11%のプレミアム 横浜市立大・齊藤教授らが報告(2024/4/2)