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2025/08/11(月) 18:01

高齢化、無人化、空き家増…深刻化する過疎地域の集落浮き彫り 国交省・総務省調査

投稿者:  牧田司

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放置されたままの廃屋(2021年写す)

 国土交通省と総務省は8月8日、合同で「過疎地域を始めとする条件不利地域における集落の現況把握調査」結果をまとめ発表した。令和元年度の前回調査時と比較して、無人化・減少・新たに誕生した集落は1,132集落に達し、住民の半数以上が65歳以上の集落の割合は10ポイント以上増加して40.2%に上るなど深刻な現状が浮き彫りとなった。

 調査結果によると、条件不利地域に存在する集落数は78,485集落で、集落人口は1,432.9万人、1集落当たりの平均人口は184.9人。住民の半数以上が65歳以上である集落の割合は40.2%で、前回調査の29.2%から10ポイント以上増加した。(全国総人口における65歳以上人口の割合は令和元年の28.4%から令和6年は29.3%)

 前回調査時点の調査対象地域における集落数は、前回調査から694集落減少した。内訳は、無人化した集落が296集落(0.4%)、集落再編により減少した集落が617集落(0.8%)、新たに誕生した集落が219集落(0.3%)となっている。

 前回調査時に「10年以内に無人化する可能性がある」と予測された499集落のうち、今回調査までの5年間で実際に無人化した集落は63集落(12.6%)となった。

 無人化が危惧される集落における、当該集落から市町村の中心部への主な交通手段はデマンドバス・乗合タクシー35.5%(前回29.6%)、公営路線バス28.6%(同32.1%)、民営路線バス21.6%(同26.0%)。

 無人化が危惧される集落のうち、空き家の一部又は大部分で管理が不十分である集落は64.5%、道路・用排水路・河川などの管理が不十分又は荒廃している集落は47.1%。

 調査対象とした12の生活サービス機能の立地状況について、無人化が危惧される集落では、当面存続するとみられる集落に比べ、すべての生活サービスで立地割合が低いが、とりわけ立地割合に差がある生活サービスは商店・スーパー3.6%(当面存続するとみられる集落は22.9%)、飲食店・喫茶店5.8%(同20.9%)、ATM2.5%(同12.0%)、病院・診療所1.7%(同9.4%)。

 集落支援員や地域おこし協力隊等のサポート人材が活動する集落の割合は、集落支援員28.8%(前回19.3%)、地域おこし協力隊など22.0%(同19.9%)。

 「条件不利地域」とは、過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法、山村振興法、離島振興法などにより、人口減少・高齢化が進み、財政力指数が0.5以下の全国1,718市町村の63.2%に該当する1,085市町村を指す。

 「集落」とは、一定の土地に数戸以上の社会的まとまりが形成された、住民生活の基本的な地域単位であり、市町村行政において扱う行政区の基本単位として市町村が判断したもの。

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 このリリースに全国紙5紙は翌日の9日付朝刊では反応しなかったが、共同通信は「65歳以上の高齢者が住民の半数以上を占める『限界集落』は、2024年4月時点で3万1515に上ったことが8日、国土交通省と総務省の調査で分かった」と配信したようだ。

 共同通信が「限界集落」としたのは間違いではないが、正確ではない。国交省と総務省のリリースは「条件不利地域」を調査対象にしたもので、「限界集落」の文言は使われていない。

 「限界集落」とは、ウィキペディア(Wikipedia)によると「地域人口の50%以上が65歳以上の集落。若者が流出し、冠婚葬祭などの社会的共同生活を維持することが限界に近づきつつある集落のこと」で「社会学者の大野晃が、高知大学人文学部教授時代の1988年に最初に提唱した概念」とある。

 みんなバブル景気に浮きたっていたときに、「限界集落」なる概念を打ち出し警鐘を鳴らした大野氏の慧眼は称賛に値するが、「65歳以上の人口比率が50%以上」という定義はやや乱暴だとずっと考えてきた。

 「限界集落」であっても社会的経済的に自立している自治体(集落)はたくさんあるはずで、高齢化人口比率のみが集落の衰退を招く主要な要因ではないことを記者は取材で実感している。首都圏のある駅前郊外住宅地を取材したが、1戸当たり土地面積が20~27坪、建坪が15坪という貧しい街づくりにあった(昭和50年代の開発なのでやむを得ない部分はあるが)。

 この団地は現在「3分の1は空き家、空き地、駐車場」(居住者)になっており、乱杭歯か歯抜けトウモロコシ状態になっている。ここまで放置してきた自治体の責任はあるが、根本的には絶対的排他的土地所有権が対応を困難にしていると思う。

 「限界集落」対策は重要な課題だが、それよりむしろ、「条件不利地域」(もう少しわかりやすい言葉はないのか)を抱える市町村が63.2.%にも達していることに注目すべきだ。大半の集落は〝便利地、好立地〟ではない〝不利地〟ということだ。官民学挙げてこの〝不利地〟を〝便利地、好立地〟に転換する手立てを考えてほしい。〝令和の米騒動〟はわれわれの死活問題であるはずの生活基盤がいかに脆弱であるかをさらけ出したが、減反政策は55年前の昭和45年(1970年)に開始された。そのつけが回ってきたということだ。過疎3法の施行も同じ昭和45年(1970年)だ。都市と農村の格差・対立が激化したころだ。

続・駅前の限界集落後期高齢者は4人に1人の割合〝死中に活〟光明見出す声も(2021/9/26)

 

 

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