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2025/11/01(土) 13:56

〝唯一無二のデザイナーズホテル〟幽玄の世界演出 オープンハウス「箱根強羅」開業

投稿者:  牧田司

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「KÚON 箱根強羅」

 オープンハウスは11月8日、同社初の直営ホテル「KÚON 箱根強羅」を開業するが、開業に先立つ10月31日、メディア向け内覧会を行った。〝お茶と和菓子〟がコンセプトになっているように、得も言われぬ「玉露」などのおもてなしを演出、共用部や客室に石、土器、アンティーク家具、麻、布クロスなど自然素材を多用しているなど〝唯一無二のデザイナーズホテル〟に嘘はない。

 建物は2008年に竣工したホテルをリノベーションしたもので、中庭にあったドッグランはふんだんに緑を配し、客室は中庭を囲むように配置、かつてあった大浴場は共用施設に変更している。

 共用部、客室に自然素材を多用しているのも特徴。1階ラウンジのカウンターには、真鶴町産の横3m×楯2m×高さ1m、重さ20tの小松石を採用。演奏者が叩く鏧(きん)の音曲が流れる中、カウンターで淹れたかぶせ茶「ふゆひかり」で宿泊客を迎える。

 2階のレストラン入り口には江戸時代の常滑土器が置かれ、レストラン内には弥生土器と江戸時代の薬箱をさりげなく設置。和モダンのティーラウンジではスタッフが氷だしの玉露茶や淹れ方に工夫を凝らした煎茶、ほうじ茶と和菓子作家・坂本紫穂氏監修の和菓子が供される。

 客室は、わが国の伝統的な生活様式であった床座スタイルを採用。床は全面に麻が敷かれ、寝室には麻の天蓋、壁は布クロス、照明はスタンドタイプ…額縁風の窓と天井高3,500ミリの空間に広がりを見せる工夫が施されている。

 内覧会で、運営を担当するオープンハウス・ホテルズ&リゾーツ代表取締役・渡部達也氏は「ホテル事業は、オープンハウスグループのブランド価値を向上させるのと新しい収益源の柱に育てるのが目的。箱根強羅のブランドイメージにふさわしいデザイナーズホテルに仕上げた。リノベによりコストダウン、工期短縮も図られており、新しい事業モデルの創出にもつながる。客室料金には朝・夕食、ティータイム、酒類の提供などインクルーシブで提供しており、リーズナブルな価格だと思う」と話した。

 設計を担当した建築家・永井健太氏は「空間は全てオリジナルなもので、素材にはこだわった。日本文化を継承する床座スタイルを採用し、居心地のいい空間に仕上げた」と語り、この日メディアに提供された焼き鳥風の鹿肉について統括料理長・瀧田英伸氏は「限りなく生に近い鹿料理を研究する」と語った。

 施設は、東京駅から電車で1時間30分、都内から車で1時間30分、神奈川県足柄下郡箱根町強羅に位置する敷地面積約2,286㎡、地下1階地上2階建て延床面積約906㎡(このほか駐車場約198㎡)。2009年竣工のホテルをリノベーションしたもので全14室。客室面積は32㎡と42㎡の2タイプ。源泉かけ流し温泉付き(42㎡は露天風呂)。チェックイン・チェックアウトは13:00・10:00。宿泊料金は42,000円~/人。運営はオープンハウス・ホテルズ&リゾーツ。開業は2025年11月8日。

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ラウンジ

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ティーラウンジ

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客室

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露天風呂

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客室

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鏧(きん)

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ラウンジの生け花

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料理

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料理

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お茶のおもてなし

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ティーラウンジ

◇       ◆     ◇

 同社が8月に行った開業説明会の印象からは、ターゲットはインバウンド客で、デザインはアジアンテイスト、悪く言えば無国籍ではないかと懸念したのだが、そうではなかった。どちらかといえば、ターゲットは麻の感触を理解できる、二人ゆっくり非日常を楽しむ夫婦かカップルではないかと思う。外国人や子どもにはこの幽玄の世界は理解されないかもしれない。タレントを起用した〝便利地、好立地〟の同社のイメージとは真逆なのもとても面白い。

 出身が三重県尾鷲だという瀧田氏とは田舎のサンマの干物、さめのたれなどについて歓談し、鹿肉の調理方法についても意見を交わした。記者は田舎に帰ると、隣家の方が用意してくれる鹿の刺身で酒を飲んだ。凍らせたものをルイベにしてワサビ醤油で食べるもので、酒のつまみに最適だ。おかずにはならない。「モミジ」と呼ばれるように赤肉で、高タンパクで低脂肪、癖もない(「さくら」と呼ばれる馬刺しは、競馬をやっていた記者はかわいそうで食べない)。

 ただ、鹿肉は寄生性原生生物・肉胞子虫が食中毒を起こすリスクがあることから、厚労省のガイドラインには「野生鳥獣は、家畜とは異なり、飼料や健康状態等の衛生管理がなされていないことを踏まえれば、安全に喫食するためには十分な加熱を行うことが必須である」として、飲食店で生肉が提供されることはまずないはずだ。(寄生性原生生物・肉胞子虫は冷凍すれば死滅するともある。記者はそれを食べていたはずだ)

 瀧田さん、その他の関係者の皆さん、鹿肉はヨーロッパでは高級料理と言われているではないか。鹿肉を刺身で食べられるよう研究開発を進めていただきたい。獣害に悩んでいる山林・農業従事者のためにもなる。

 参考までに。記者が大好きな食材は(ほとんど酒のつまみだが)〝野草の女王〟コシアブラをはじめフキノトウ、カラスミ、豆腐よう、アオサ、ホヤ、カニ味噌、アユ…大量のバーチャルウォータを消費する牛肉・豚肉などとはみんな無縁だ。

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外観

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小松石のカウンター

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小松石

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鏧(きん)の生演奏

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中庭

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客室 床

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客室 手洗い

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内風呂

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ティーラウンジ

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ティーラウンジ窓から(まるで額縁絵)

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焼き鳥風鹿肉料理

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江戸時代という薬箱(その上は弥生土器)

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江戸時代という常滑土器

オープンハウス初のリノベ直営ホテル「強羅」開業〝お茶と和菓子〟コンセプト(2025/8/2)


 

 

 

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