
外観パース

左から植田氏、押味氏、中島氏、小澤氏(明治神宮外苑 室内球技場で)

植樹セレモニー(前列左から伊藤忠商事代表取締役社長CEO・石井敬太氏、日本スポーツ振興センター理事長・芦立訓氏、明治神宮外苑苑長・石井拓蔵氏、植田氏、後列左から青山高校ラグビー部代表、東芝ブレイブルーパス東京・三上正貴氏、田中氏、中島氏、鹿島建設取締役副社長執行役員・石川洋氏、小澤氏
鹿島建設を代表企業として三井不動産、東京建物、東京ドームの4社が出資企業として設立した秩父宮ラグビー場は2月12日、「新秩父宮ラグビー場(仮称)整備・運営等事業」着工記者説明会と「令和の献木プログラム」植樹セレモニーを行った。三部構成で、第一部では鹿島建設代表取締役会長兼社長・押味至一氏、三井不動産代表取締役社長・植田俊氏、東京建物代表取締役社長執行役員・小澤克人氏、三井住友フィナンシャルグループ取締役執行役社長グループCEO・中島達氏らトップがそれぞれ挨拶し、第二部では元ラグビー日本代表・田中史朗氏らがトークセッションを行い。第三部では青山高校ラグビー部代表も加わってユズリハの植樹セレモニーを建設地で行った。約70人のメディアが集まった。
施設は、東京都新宿区霞ヶ丘町に位置。敷地面積は約34,437㎡(第Ⅱ期整備後は約43,476㎡)、延床面積は約72,957㎡。高さ46.25m(地上8階・地下1階)。設計は鹿島建設・松田平田設計設計共同企業体、設計協力は内藤廣建築設計事務所、POPULOUS。施工は鹿島建設。収容人数はラグビー利用時約1.5 万人、イベント開催時最大約2.5万人の、わが国初の屋内全天候型多目的ラグビー場。
「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)に基づき行われ、事業者は施設等の設計、建設を行った後、独立行政法人日本スポーツ振興センターに施設などの所有権を移転すると同時に施設の公共施設等運営権を取得し、30年間の運営・維持管理を行う。トップパートナーには三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)が選ばれた。開業は2030年。
記者説明会の冒頭にあいさつした三井不・植田氏は「当社は2024年に策定した長期経営方針『&INNOVASION 2030』で事業戦略の一つとしてスポーツ・エンターテイメントの力を活用したリアルの体験価値を最大化する街づくりを進めている。神宮外苑再開発に当たっては、既存の樹木1,904本を完成後は2,304本へ、緑の割合は約25%から約30%に増やす。象徴である4列のイチョウ並木の保全には万全を期す。今回のプロジェクトは、老朽化したラグビーの〝聖地〟である秩父宮ラグビーの想いを継承する。次の100年に向かって大切なバトンを渡す第一歩」と語った。
続いて登壇した鹿島・押味氏は「この事業の設計、施工から運営・維持管理に携われることになったのは光栄の至り。ユニバーサルデザインや環境への配慮など、最高の愛と感動をお届けするため、総力を結集して取り組む」と決意を語った。
東京建物・小澤氏は「当社は中期経営計画でスポーツ・エンターテイメントを重点戦略の一つに掲げている。ラグビー場に隣接する都立公園初の当社が関わっているPark-PFIを活用した『都立明治公園は』年間300万人の来場者がある。これらともしっかり連携を図っていく」と述べた。
SMBC・中島氏は「当社グループは2023年、個人向け総合金融サービス『Olive』の提供を開始している。今回、トップパートナーに選ばれたのは大変光栄。またとない機会。ラグビー憲章が掲げる『品位・情熱・結束・規律・尊重』の5つのコリアバリューは仕事にも通じる。私自身もラグビー選手としてプレーしたことがあり、高い高揚感を覚えたのが記憶に残っている。2014年からは様々なラグビー大会を支援もしてきた」と喜びを語った。
第二部のトークショーでは、2015年のワールドカップで日本チームが南アフリカを倒し〝ジャイアント・キリング〟と呼ばれたこと(記者も鮮明に覚えている)、身長が166cmしかない田中氏が〝神風〟のお陰でトライし、三上氏が属する東芝チームを破り日本一になったこと、人工芝はすべらないのでスピードが出ること、反則が少なくなること、雷などで中断しないこと、充実した風呂に入れることなどが話しあわれた。人工芝はやけどや身体への負担が大きいのではと思っているが、そんな話は全然出なかった。41歳の田中氏は「わくわくする。私もプレーしたい」(確かにそう話した)と現役復帰を匂わせた(プロ野球の山本昌投手は50歳まで現役、サッカーの三浦知良選手は60歳近いではないか)。
◇ ◆ ◇
この日(12日)の記者説明会に参加したメディアは約70人(主催者公表)。凄い数だと思った。〝日々妄想〟は三井不・植田氏の十八番だが、冬季オリンピックの応援と、酒なしでは生きられない記者は〝日々朦朧〟の状態で取材に臨んだ。耳が遠くなったので細大漏らさず記録しようとボイスレコーダーを用意したのだが、電池切れか作動せず、仕方がないので必死でメモした。みんな早口でしゃべるので聞き取れなかった(上段の記事は正確ではないかもしれない)。
質疑応答では10人くらいの方が手を挙げた。最初に指名されたのは、いつもの会見で真っ先に質問し、指名される、いわば〝指定席〟になっている不動産経済研究所の記者の方で、次は日経新聞、その次はフジテレビ、4番目は日経アーキテクチュア。小生も質問することにしていたが、時間切れで指名されることはなかった。聞きたかったのは次の通り。かなり本質を突いているはずだ。
神宮外苑の再開発を可能にしたのは、東京都が平成25年12月に創設した「公園まちづくり制度」で、必須要件である「都市計画決定から概ね50年以上経過し、未供用区域面積が2.0ha以上ある区域」に秩父宮ラグビー場が該当したからだ。同ラグビー場は昭和22年に完成したが、都市計画公園施設からずっと「未供用」となっていた。
ラグビーの「聖地」がどうして完成してからずっと「未供用」とされてきたのか。その創建の歴史からして、一般に開放しないというのは分からないではないが、謎のままだ。再開発反対の論客・石川幹子氏(東京大学名誉教授)が「専門家でもよく分からない迷路のような開発手法」と皮肉ったように、学者先生も分かっていない人がかなりいる。小生は、この謎について各社の代表から率直な感想を聞きたかった。
「未供用」は神宮外苑以外にもかなり存在するはずだ。是非はともかく、今後あちこちでこの制度を活用した再開発案件が浮上すると思う。(記者はRark-PFIは賛成)
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イベントが行われた翌日(13日)、メディアは何を報じるか興味があったので、全国紙5紙(誰がいつからそう呼ぶのか)と東京新聞をチェックした。毎日新聞と産経新聞、東京新聞は1行も報じていなかった。
大きなスペースを割いたのは日経新聞。7段囲み記事で、SMBCがネーミングライツ(命名権)を含むトップパートナー契約を結び、秩父宮ラグビー場の副名称を「SMBCオリーブスクエア」にすることを報じていた。さすがだ。小生はSMBC・中島氏が喜びを語ったとき、命名権はいくらだろうと思った。同紙の報道によると10年間で総額100億円(年間10億円)だそうで、隣接する国立競技場の命名権を取得したMUEGの年間20億円と比較して随分高いような気もする。記者はラグビーはよくわからないのだが、プロ野球の「エスコンフィールド北海道」は年間5億円だそうで、これは球団もエスコンも大成功。わが西武ライオンズの「ベルーナドーム」はさっぱり分からない。
まあ、いずれにしろ、この日経の記事はいろいろ考えさせてくれる。朝日新聞と読売新聞は2段見出し扱いで、朝日は「再開発をめぐっては、樹木の伐採を伴うことに周辺住民らから批判の声があがり…」としてはいるが、双方ともほとんど中身はなし。
事業者3社と伊藤忠商事、SMBCを合わせた5社の直近の売上高合計は約23.7兆円(SMBCは粗利益、神宮外苑の資産も桁違いのはず)だ。この企業のトップが勢揃いしていたのに、オールド・メディアは何も伝えない(囲み取材を受けなかった主催者もどうかと思う)。若い人を中心に新聞を読まなくなったのは当然だ。批判的精神をなくしたメディアに明日はない。〝メディアは死んだ〟といったら失礼か。
言いたくはないが、あえて書く。フジテレビの女性記者の方へ。貴女は、三井不・植田氏に「環境デベロッパーとして…」と質問した。三井不に質問するなら、同社が標榜している〝産業デベロッパー〟を口にすべきだった。「環境」はこのところ積極的にCMなどで「環境全力TOKYU」を謳っている東急不動産HDだ。仕方ない。貴女が〝楽しくなければテレビじゃない〟から脱皮を図ろうとしている同社の先頭に立って活躍されることに期待しよう(以前の産経新聞は不動産担当の専属記者がいた)。
第一部が終わり、第二部が終わり、メディア参加者は半減した。まあ、これまた仕方ない。興味の対象が異なる。小生は、第三部の植樹セレモニーに誰が参加するか、ユズリハは何歳か、青山高校のラグビー部の生徒と会話を交わすことを楽しみにしていた。参加した各社の幹部はみんなスーツ姿(この日はそんなに寒くはなかった)、ユズリハは人間にしたら3~4歳、あと100年は生きられる。ラグビー部員は15人とか。太ももは小生の2倍はあった。素晴らしい!

ラグビー利用時

ラグビータワー

フィールドバー

VIPラウンジ

北側外観

左から田中氏、青山高校ラグビー部代表、三上氏
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