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2026/02/02(月) 11:00

「市民と考える、不動産開発と都市の公園緑地の保全」シンポ 日本不動産学会

投稿者:  牧田司

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前列左から佐藤氏、中林氏、三上氏、石川氏、後列左から室田氏、長岡氏、原科氏(御茶ノ水ソラシティで)

 日本不動産学会は1月26日、「市民と考える、不動産開発と都市の公園緑地の保全」と題するシンポジウム(定員:オンサイト80名、オンライン200名)を開催した。不動産開発における公園緑地の保全と防災面などの活用について、情報公開の方法と自治体、事業者、市民など多様な主体が参加する公衆協議のあり方を論議し、その推進のため方策を示すのが目的。令和7年度科学研究費助成事業にもなっている。

 シンポジウムは二部構成で、第Ⅰ部(13:00~14:50)では、室田昌子氏(日本不動産学会副会長、東京都市大学名誉教授)が開催のあいさつ、趣旨説明を長岡篤氏(千葉商科大学基盤教育機構助教)が行った。

 趣旨説明で長岡氏は、「不動産開発は経済的利益の追求だけでなく、社会的側面や文化的・歴史的側面、環境的側面、防災面を踏まえる必要がる」「しかし、これに逆行する例もある。例えば、神宮外苑再開発では既存の都市計画公園の一部を削除し、高度利用開発が計画されている。この計画プロセスでは、情報公開と参加が不十分で、公衆協議のあり方に課題がある。このことは、2024年6月の国連総会、国連人権理事会でも指摘された」と語った。

 第Ⅱ部(15:00~16:30)では、長岡氏が司会役を務め、各氏によるパネルディスカッションが行われた。以下、各氏の報告・発言要旨を紹介する。(報告順)

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室田氏(左)と長岡氏

都市計画・土地利用計画に戦略性がない

基調講演「都市の公園緑地の保全と不動産開発‐ビジネスと人権の観点から‐」

原科幸彦氏(東京科学大学名誉教授、千葉商科大学名誉教授・前学長、日本不動産学会前会長・顧問)

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原科氏

 都市における公園緑地の価値は①市民の生活質(QOL)に不可欠②震災時の避難場所として重要③地球温暖化対策として樹冠豊かな樹林が必要。戦略的環境アセスメント(SEA:Strategic Environmental Assessment)が重要。事業段階(Project)では遅すぎる。上位の計画段階である政策段階(Policy)と計画段階(Plan Program)での情報公開と公衆合意(Public Consensus)が必要だが、わが国は、国際的に見て、ビジネスと人権の観点から公衆協議(Public Consultation)が不足している。新たな国際規範に対する理解が不十分で、都市計画・土地利用計画に戦略性がない。

神宮外苑は「文化としての社会の富」

「都市における公園緑地の価値と日本の状況」

石川幹子氏(東京大学名誉教授、国際文化的景観科学者委員会(ISCCL)日本代表)

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石川氏

 BC230年の中国の治水・灌漑の取り組みからイギリスのコモンズ、NYのセントラルパーク、神宮外苑のパークシステムなど「文化としての公園緑地」が果たしてきた役割は大きい。西行法師が「なにごとの おはしますをば 知らねども かたじけなさに 涙こぼるる」と伊勢神宮を詠んだ歌は自然への恐れと畏敬を象徴している。東京都の公園まちづくり制度による神宮外苑再開発は、良好な市街地(開発)では断じてない。神宮外苑は、古来の伝統を受け継ぎ、近代都市美を導入した「文化としての社会の富」である。

 「私が最初に就職したのは不動産会社。不動産業は立派な事業。その立派な方(会社)が公園を蚕食し、自らの価値を貶めるような、委縮させるような、劣化させるようなことをやってはならない。不動産学会もこのような観点からどんどんシンポジウムなどを行っていただきたい」

樹冠被覆率、公園緑地の保全と拡大が必要

「都市の公園緑地(オープンスペース)による気候変動への適応」

三上岳彦氏(東京都立大学名誉教授)

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三上氏

 気象庁のデータをもとにすると、1976年~2025年の8月の平均最高気温は都心部では30℃弱から33℃に、千葉県銚子市は約27℃から29℃にそれぞれ3℃くらい上昇している。約50年で3℃の上昇だから、あと50年すると東京都心は36℃になる。熱中症搬送患者も増加の一途で、2010年は全国で5万数千人だったのが、2025年は約10万人。このような都市の気温上昇(ヒートアイランド)を緩和する緑地の樹木効果を実測したところ、夏の地表温度はコンクリ・アスファルトでは50℃以上に達するのに対し、木陰は30℃くらいに留まっている。加速する気候変動対策として、樹冠被覆率の増加、公園緑地の保全と拡大が必要だ。

地震にも水害にも負けない二つの「そうぞう力」

「都市公園における防災緑地機能について」

中林一樹氏(東京都立大学名誉教授)

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中林氏

 1923年の関東大震災で東京全体で約22万棟が焼失し、2.700棟が全壊した。被服廠跡地の避難者約4万人のうち約3.8万人が犠牲になったのは、当時は住宅はほとんどが借家で、家財道具を大八車に積んで避難したが、布団などに飛び火したのが被害を大きくした。現在の東京都には環状6号線外には大規模公園がなく、木造密集地が多いのが課題。水害対策としては、流域全体で対応することが必要。公園も学校グラウンド、田んぼなどは避難場所になるのはもちろんだが、高台立地のマウンド型にし、水を一時貯留する新しい対策も必要だ。地震にも水害にも負けないためには、未来をイメージする「想像の力」と、方策を工夫し実践する「創造力」の二つの「そうぞう力」が求められる。

都市は、公園なしでは再生しない

「多様な主体による「みどりのまちづくり」

佐藤留美氏(NPO法人Green Connection TOKYO代表理事)

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佐藤氏

 Green Connection TOKYOは、〝自然・ひと・まちを元気に!〟をスローガンに掲げ、Community、Education、Healthy、Livable、Art、Safety、Biodiversity、Cultureなど様々な取り組みを行ってきた。これからの都市は、公園なしでは再生しない。公園を中心に「人」「モノ・コト」「情報」「自然」「お金」が循環する取り組みが必要。様々な活動を通じて、手ごたえを感じている。最近の若者は街づくりに大きな興味を示しており、緑が多く、人と人がつながることに働き甲斐を求めている。そのために不動産業を立ちあげようと考えている人も少なくない。この流れをキャッチしないといけない。

 シンポジウムに参加した、前職が神奈川県の自治体職員で、主に街づくりに関する仕事をしていた無職の男性(65)は「神宮外苑問題と公園、不動産の関係が混在していた。みんな危ないのか。外苑問題だけがヒットアップしそう」と語った。

 千代田区の神田警察通りの街路樹伐採に反対したため、区から工事区間への立ち入りを禁止された「神田警察通りの街路樹を守る会」の会員で「建築ジャーナル」編集長・の西川直子氏は、「「立ち入り禁止? イチョウは昨年までにすべて伐採された。立ち入り禁止の要件そのものがなくなった。区は第3期工事を始める予定で、協議会も設置しないと聞いている。今日のシンポジウムでも話されたように早めの対応策を練る」と話した。

「スラップ訴訟」「ひこばえあるうちはあきらめない」街路樹守る会・愛氏ら会見(2023/11/23)

◇        ◆     ◇

 上段でシンポジウムの概略を紹介したが、講演時間は約3時間半。各氏の一人当たり時間は約1時間。大学の講座なら1年分のカリュキュラムだろう。各氏が言いたかったことの10分の1も伝えきれていないような気がする。謝るほかない。

 原科氏は、出席していたメディアを意識してか、最後に「市民にどう伝えるか、メディアの役割は大きい」と牽制球を投げた。優しい取材などないのだが、この種のシンポジウムは極めて難しい。記者の技量が問われる。記事をアップするまで1週間が経過したか、この種の記事は速ければいいというものでもない。

◇        ◆     ◇

 記者は、一般の方を対象にしたシンポジウムで質問したことはほとんどない。参加者の質問時間を奪いたくないからだし、〝雄弁は銀、沈黙は金〟〝知る者は言わず言う者は知らず〟-質問するといかに無知であるかをさらけ出すことにもなりかねないからだ。

 しかし、今回は事前に不動産学会から「取材」の了解を得ており、参加者の多くは学者や研究者だろうと思ったので、質問することにした。第Ⅱ部の開始前に配布された質問表にはおおよそ次のように書いた。

 ①神宮外苑の再開発は、都の公園まちづくり制度によって、都市計画公園内の秩父宮ラグビー場が「未利用」だったため可能になった。都市計画公園と都市公園は似てはいるが、全然異なる。この差を分かりやすく説明していただきたい

 ②神宮外苑のほかにも都市計画公園内の「未利用」施設はかなりある。神宮外苑と同じような再開発計画が浮上することはないのか

 ③都の制度そのものが定められた時点で、学者先生は「未利用」施設が再開発に道を開くものになるとの危惧を抱かなかったのか

 残念ながら、時間切れで質問が取り上げられることはなかった。記者の質問だけではない。質問票はかなり提出されたはずだが、応答は2人のみだった。これは時間配分に問題あり。シンポでは先生方は市民から声を聴けと仰ったではないか。記者は全て双方向シンポジウムにすべきだと思う。

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