
星野氏(同社提供、この日の服装ではない)
星野リゾートは4月22日、「星野リゾート オンラインプレス発表会2026春」を行った。大半は同社が運営しているホテルブランドの紹介だったが、同社・星野佳路代表と同社スタッフのフランクなやり取りがとても面白く、同社の企業姿勢、ミッション、目指す方向がよく理解できた。同社がどうして伸びるのか、わが業界も学ぶ点が多い。
敷地面積が約10万㎡の国の重要文化財「旧奈良監獄」を活用したプロジェクト「奈良監獄ミュージアムby 星野リゾート」も紹介された。4月27日に開館する博物館は年間100万人の来館者を見込む。6月に開業するホテル「星のや奈良監獄」の客室48室は全てラグュアリーホテル仕様で1泊147,000円から。
テーマは「自由」だという。これがまた素晴らしい。ある意味では、「自由」を奪うのが法律であり、「自由」を貫くために法を犯し、「自由」など全くない、ややもすると死刑に至る監獄に収監される、罪深い愚かなわれわれ人間の根源を問うという。1泊14.7万円(ネットで検索したら1泊1人、35,574円〜)で「自由」が満喫できるのは高いのか安いのか…。
監獄(ゲッタウェイ)が舞台の小説はたくさん読んだ。そのものずばりの吉村昭「破獄」(新潮文庫)もいいが、記者の一押しは加賀乙彦「宣告」(新潮文庫)だ。(高輪ゲートウェイは必見)。
環境庁によると、「観光立国推進基本計画」に基づく歴史的資源を活用した観光まちづくりは、令和7年度までに300地域に拡大し、取組地域の高付加価値化を目指す面的展開地域を50地域展開するとしている。
ホテル市場について星野氏は、「インバウンドの伸び率は鈍化傾向にあり、踊り場に差し掛かる場面もある」としながら、「必要なのは、集客エリアを分散するマーケティング」と話した。劇的に宿泊客が増加した「谷川岳」などを紹介するとともに、「出雲大社」について、商売繁盛の神=ビジネスプロスペリティ(Business prosperity)にしてはどうかと提案した。
これは、わが伊勢神宮にも当てはまる。伊勢市の人口はどんどん減少しており、空き家率は10%をはるかに超え、飲食街は〝シャッター通り〟どころか廃墟と化している。参拝者はお祈りだけして素通りし、鳥羽や志摩方面に流れていく。どこにもない歴史・文化などの資源を生かし切れていない(駅周辺に喫煙所があるのは、神が住む外宮だけというのは皮肉。豊受大御神は鷹揚なもので、信派を問わないし、無神論者も極道も受け入れる。商売繁盛だろうが家内安全、夫婦和合…なんでも可だ。だから〝神さん〟とあがめられるのだろう)。
星野氏はまた、ホテルは宿泊前の「予約」に課題があるとし、同社が独自に開発した宿泊予約システム「FleBOL(フレボル)」を2027年には全施設に導入すると話した。
記者もそう思う。仕事であれ私用であれ、「喫煙」が絶対条件だが、探すのは大変だ。ホテル紹介サイトはたくさんあるが、検索項目には「禁煙」はあっても「喫煙」項目がないサイトが多い。日程変更も簡単ではない。予約済みの日程をキャンセルしてから新たに予約したケースはたくさんある。食事の変更や送迎バスなどの案内も少ない。AIを活用すれば、ホテル予約はもっと簡単になるはずだ。
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星野氏は、ホームページで「世界の人たちを友人として結んでいく、それは他の産業にはできない『旅の魔法』」とし、ミッションは「世界の方々に日本を好きになってもらいたい。それが世界の平和につながる地道な活動だと考えている」「夢は大きく、運営は地道に」と語っている。
星野氏がどうして自らを「社長」ではなく「代表」としているのかをほとんど瞬時に理解した。会社組織を旧来型の上意下達体制から、風通しのよいフラットな自由闊達な企業風土を構築しようという狙いだろう。口先だけでなく、自らが率先して実践していることが、スタッフとのフランクなやり取りからうかがえた。
例えば、星野氏の趣味らしい「滑降」(恰好も「奈良監獄」の文字入りの高価とは思えない普通のTシャツだった)。年間80日体験するのが目標だそうで、明日(4月23日)には80日目の尾瀬で滑ることになっており、目標を達成すると話し、「目標を100日に引き上げる」意向を公表した。その際、うらやましそうなスタッブに向かって「私が年間100日滑ろうが問題はない。社員には100日以上の休暇があるし、有給休暇もある」と、社員にも堂々と休めと問わず語りに示した。星野氏の「大丈夫か」という問いに、スタッフは「とても楽しく働いています」と答えた。
メディアに対しては、「今日の発表会に対するアンケートに協力していただきたい。私も全てチェックしている」と語った。
わがハウスメーカー・デベロッパーはこの種のメディア向け発表会などでアンケートをとる会社は数えるほどしかない。企業にとってメディアが果たす役割は大きいと思うが、情報を一方的に伝えるだけの企業は多いし、自らの視点で〝事実〟を読者に伝える役割を果たしていないメディアも多いとつくづく思う。その意味で、本日の発表会はとても参考になった。
村野藤吾が設計した旧横浜市庁舎リノベホテル「OMO7横浜by 星野リゾート」開業(2026/3/16)

