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2026/04/29(水) 11:04

樹林地に定量的基準はあるのか 新宿区は「10㎡に1本の割合」仙川崖線を歩く

投稿者:  牧田司

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「仙川崖線」

 皆さんは「樹林地」をご存じか。「沼沢」「河川」「田畑」などとともに日常使う言葉だが、では「樹林地」の定義を聞かれたら答えられる人はどれだけいるか。

 なぜこんなことを冒頭に書くか。実は一昨日(4月26日)、東京大学名誉教授・石川幹子氏による「樹林地とは? 」と題するオンラインセミナーが行われた。趣旨には「明治神宮外苑の建国記念文庫の杜は『樹林地ではない』と定義され、伐採されました。この定義を適用すると明治神宮内苑の杜も、『樹林地ではない』となり、極論をすれば伐採が可能となります。本セミナーでは、この論理を学術的、法的かつ政策的に検証し、『虚偽の構造』を明らかにします」とあった。記者も視聴申し込みしたのだが、時間を間違えて聴き逃してしまった。

 なので、石川氏が何を話されたのかわからない。おそらく、神宮外苑再開発に関して、新宿区が風致地区に指定されている建国記念文庫の森の樹木伐採は違法であることを〝実証〟されたのだと思う。

 さて、では「樹林地」とは何か。言葉の意味はともかく、都市計画法ではどうなっているか調べた。「樹林地」の言葉は1か所しか使われていない。良好な居住環境を確保するための地区整備計画で「現に存する樹林地、草地等で良好な居住環境を確保するため必要なものの保全に関する事項」を定めることができるとしているのみだ。

 また、国土交通省「都市緑地保全法運用指針」には、「『樹林地』とは、当該土地の大部分について樹木が生育している一団の土地であり、樹林には竹林も含まれる」とし、「(都市計画)基本計画が対象としている緑地は、都市において『樹林地、草地、水辺地、岩石地…良好な自然環境を形成しているもの』であることから、基本計画においては、法に規定されている各種制度のみならず都市公園、風致地区、生産緑地地区、保存樹・保存樹林等都市における緑地の保全に資する施策を広く展開することが望ましい」としている。定量的な数値は示されていない。

 これらを受け、「新宿区における東京都風致地区条例に基づく許可の審査等に関する基準」は「(風致)区域内に1,000㎡以上の一団の樹林地がある場合は、その50%以上を残存させるよう指導すること」と定めている。

 ところが、新宿区は令和6年10月25日付「明治神宮第二球場解体工事等のための木竹の伐採許可通知書」で「(建国記念文庫の森を含む)申請区域に一団の樹林地は存在しない」と認定。その根拠として「樹林地とは一般的に平均高さ5m以上の樹木が10㎡に1本の割合で存する300㎡以上の土地」とし、建国記念公園の面積は約4,711㎡で樹木本数は135本なので、10㎡当たり0.28本となり、「10㎡当たり1本」の樹林地に該当しないとした。

 この決定を不服とし、2023年7月、住民らが新宿区長を相手取り、樹木伐採は違法とし、区の許可取り消しを求めて東京地裁に提訴した。裁判は継続中。

 令和8年3月6日に開かれた東京地裁の意見陳述で原告は「樹木伐採許可書を見た時に、『建国記念文庫は樹林地ではないので、風致地区条例の新宿区の審査基準で定められている、木を半分残すようにと事業者に対する行政指導の対象とならない』と書いてあり、私は驚愕しました(略)新宿区の担当課に聞いてみると、『川崎市の定義』によると、(樹林地は)『平均高さ5m以上の樹木が10㎡に1本以上の割合でまとまって存する300㎡以上の土地をいう』というものです(略)今回、この疑問を東京大学名誉教授の石川幹子先生にお伺いしたところ、先生は川崎市の環境審議会委員を10年以上にわたり務められ、部会長として法定計画である『緑の基本計画』の策定にあたられ、都市緑地法に基づく特別緑地保全地区の指定も20カ所以上、行ってこられましたが、この定義は一度もないということでした(略)先生は鎮座百年の明治神宮内苑調査の副座長も務められており、内苑の樹木調査を行っておられました。平成25年の樹木数は、21,139本(高木)、樹冠投影面積は、計測の結果、64haでしたので、10㎡当たりの樹木数は、0.3本でした」と述べている。

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仙川崖線

◇        ◆     ◇

 一昨日(4月27日)、調布市の特別緑地保全地区に指定されている「仙川崖線」を歩いた。「10㎡に1本」を念頭に、樹林地はどのようなものかを確認するのが目的だった(昔よく通った駅前の飲食店に寄る目的もあったのだが…)。樹林地にはシラカシ、クヌギ、コナラなどの高木が生い茂っていた。仙川では近くの保育園児、小・中学生などが制作した数千匹もの鯉のぼりが気持ちよさそうに泳いでいた。

 仙川崖線内の樹木の数は、目視した限りでは10㎡(3坪)に1本の割合には達していないと思った。意外だったのは、植わっている樹木ほどではなかったが、枯死木の株がたくさんあったことだ。(写真参照)

 そこで翌日(4月28日)、調布市役所に問い合わせた。目視した通りだった。仙川崖線の面積は約10,500㎡、樹木数は約370本とのことで、10㎡当たり0.35本だった。「10㎡当たり1本」とする樹林地の解釈について、市の担当者は「そのような視点で樹林地を見ていない。いかに既存の緑を保全するかが重要」と話した。

 仮に、樹林地を「10㎡当たり1本」にしたら、調布市だけでなく、全国の樹林地は半減どころか、3分の1にもならないのではないか。「新宿区緑の実態調査報告書」第9次によると、令和3年時点で「区内の100㎡以上の樹林は1,761箇所、面積合計は1,581,190㎡、1箇所当たりの樹林面積は898㎡」とある。同報告書でも神宮外苑の建国記念文庫の森も「樹林地」として図示されている。

 裁判の行方は分からない。新宿区の対応が合法となれば、この「10㎡に1本」が風致地区や緑地保全地区の樹木伐採の基準になる可能性がありそうだ。

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仙川で泳ぐ鯉のぼり

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電信柱のように強剪定された国道・甲州街道の街路樹

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