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2026/05/10(日) 17:35

100年住宅へ 外断熱など価値向上取り組み推進 築55年の洋光台南団地「成果報告会」

投稿者:  牧田司

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洋光台南第一住宅(提供:スタジオ・クハラ・ヤギ) 

横浜市磯子区の洋光台南第一・第二住宅管理組合は59日、「二団地協同★南団地わくわく会議」の一環として「団地再生検討成果報告会」を開催した。二団地は、築55年の全1,459戸の大規模分譲マンション団地で、高経年マンションの様々な課題に向き合い、住民主導で団地再生を目指しており、2年前に「南団地わくわく会議」を立ち上げた。団地再生の取り組みは、国土交通省の令和6年度の「マンションストック長寿命化等モデル事業」にも採択されている。この日は、居住者や関係者など約70人が参加した。

洋光台南第一・第二住宅は、日本住宅公団(現・UR都市機構)によって建設された1971年築、39696戸の第一住宅(四街区)と、1970年築、33797戸の第二住宅(六街区)を合わせた敷地面積約15.6ha57階建て72棟全1,493戸の分譲マンション。

二団地協同に取り組む背景には、築後55年を迎え、建物と居住者の二つの老いに加え、資材費、労務費の高騰、金利上昇、ナフサショックなど〝八難〟を抱える危機感があり、行政、専門家を巻き込み、住民主導で団地再生を実現するのが目的。

これまで、第一住宅では、全体構想案の作成、新集会所の建設、2023 年度からは住民有志の専門委員会活動などを行ってきた。第二住宅では、意見交換会や意識調査を実施してきたが、第一住宅・第二住宅の取り組みを加速させるため、2023 年度から2団地での意見交換を実施している。

「南団地わくわく会議」(二団地の住民有志による懇談会)は2年前に立ち上げたもので、再生事業に参画しているスタジオ・クハラ・ヤギ(設計事務所)、よこはま建築監理(マンション修繕・改良コンサル)、EOSplus(設備設計)、マインドスケープ(ランドスケープデザイン)など事業者と協働し、①100年住宅を目指す②資産価値の維持・向上③若年層・子育て世代の住民を増やす-3つの目的を掲げ、今すぐ取り組まなければならない課題を洗い出し、その対応策を報告書に盛り込んでいる。今後23年の団地再生ロードマップとして、外断熱工法による断熱性能の向上、サッシ交換、外観デザイン刷新、外構整備、照明更新、伐採木活用、ベンチ整備、植栽計画の策定、ワークショップ開催などを提示している。

「団地再生検討成果報告会」は二部構成で、洋光台南第一住宅管理組合理事長・木田進太郎氏が司会を務め、第一部ではタジオ・クハラ・ヤギ代表取締役・久原裕氏、EOSplus電気設備チーフエンジニア・佐藤拓斗氏、マインドスケープデザイナー・三好あゆみ氏がそれぞれの立場から説明・報告。第2部では外断熱工事を16年前に行った竹山団地の竹山16-2団地管理組合法人事務局長・稲葉壮二氏が外断熱の効果について説明。また、洋光台南団地の設計を担当した日本住宅公団の建築士・井上十三男氏と濱恵介氏が当時のエピソードなどを紹介した。以下その概略。

久原氏は、耐震性能、躯体寿命に大きな問題はないとしながら、環境性能(断熱性能)を向上させる必要があるとし、外断熱工法を採用すれば飛躍的に性能が向上し、駅に近い立地条件を考慮すれば若年層にとっても魅力ある団に再生できると強調した。

佐藤氏は、二団地が抱える課題として特徴のない外観デザイン、既存外灯の老朽化、照度不足などをあげ、既存の妻側外構タイルを再利用し、照明デザインを一新して魅力向上を図りたいと語った。

三好氏は、この2年間の活動について、アンケート回答数が200件しかなかったこと、健全樹木は10%くらいしかないことなど課題はあるとしながら、ロボット草刈り機23台を導入したところ、居住者に〝ルンバ〟として人気になり、業界でも話題になったことを紹介した。

稲葉氏は、外断熱改修に関する効果を検証した研究論文を紹介しながら、「冬温かい、暮らしやすい。メーカー、ゼネコンからお金はもらっていないが、普及に貢献しているので感謝状くらいもらってもいい。『経年優化』という言葉もあるように、外断熱は長寿命化にぴったり」などと冗談を交えながら語った。

井上氏と濱氏は、井上氏が名前の通り昭和13年生まれの88歳(米寿)で、濱氏は6つ下の82歳であることを紹介。二人して数か月で図面を描き、工事発注までこぎつけたことなどを語った。また、濱氏は設計図はコピーするたびに位置図が数%伸び、建物が収まらず、街区道路を幅員2mくらいにするほかなかったと信じられないエピソードも明かした。「壁式工法」の耐震性にも触れ「大丈夫だろう」と語った。井上氏は、自ら居住する約12,000戸の「光が丘団地」の活性化活動に参加しており、〝シビックプライド〟の重要性を説いた。

報告会に参加した、入居開始から住んでいる女性(93歳)は「若かった頃は、みんなで草刈りをしました。時代が変わったということ。道路が狭いのは私もいつも通っているのでそう思いますが、なぜそうなったかの説明をお聞きし納得しました」などと、積年の疑問・不満が解消し、満足げだった。

国土交通省の令和6年度の「マンションストック長寿命化等モデル事業」では、複数の専門家・事業者が協同で大規模団地の再生に取り組む点、2団地の足並みを揃えるための意見交換を行っている点、住民アンケートや不動産事業者へのヒアリングにより、現状把握・課題の洗い出しを行う点、第一住宅でのアイデアブックの作成や集会所の新設、専門委員会活動などのこれまでの取り組みが評価された。

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本田氏

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左から久原氏、佐藤氏、三好氏

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左から稲葉氏、井上氏、濱氏

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報告会が行われた洋光台南第一住宅集会所(提供:スタジオ・クハラ・ヤギ) 

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報告会

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いかにも昭和40年代の公団住宅

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妻側の外観

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外壁に使用されているタイル

        ◆     ◇

 報告会は予定の3時間を30分も上回る長丁場に及び、小学生並みの45分の授業時間くらいが限界の記者は相当堪えたが、軽妙洒脱な木田氏のスピーチと各氏の話はとても面白かった。取材の声を掛けていただいた木田氏に感謝申し上げる。

 驚いたのは、築55年というのに参加者には若い男女(3050代か)が多いことだった。若年層・子育て世代の居住者も多い印象を受けた。広場では小さな子どもがたくさん遊んでいた。嬉しかったのは、93歳の女性の方の感想だった。年齢など全く感じさせない明瞭で美しい言葉に感動すら覚えた。

濱氏が東大の先輩で建築家・磯崎新(1931- 2022年)にあこがれていたとの話には歴史を感じた。公団住宅の1960年代の「nLDK」表示を編み出したのは磯崎だと言われている(本人は肯定も否定もしていない)。

「外断熱」を採用するのは大賛成。中古マンションの最大の課題は断熱性の向上だと思う。木田氏は、現在の修繕積立金では実施するのはコスト的に難しく、見直しすることを示唆したが、断熱性向上のためのリフォーム工事への国の支援施策は継続されるはずだ。

「南団地」の中古マンション市場での評価を調べてみた。国土交通省の不動産情報ライブラリで検索すると、洋光台南第一・第二住宅と思われる2025年の中古マンション取引事例は29件ある。1戸当たり平均価格は1,358万円、平均面積は65.5㎡、坪単価は68.4万円だ。買取再販物件と思われる事例もあり、820万円(45㎡)⇒1,900万円、750万円(50㎡)⇒1,700万円でそれぞれ成約されている。いずれも改修済みだ。

この単価水準が今後も維持できるかどうかは分からない。何もしなければ漸減するのは容易に想像できる。

しかし、外断熱工事を実施し、デザイン、照明、ランドスケープなどを刷新すれば駅からの距離、生活利便施設の集積度などを考慮すれば単価を倍増させることは可能だと思う。

エレベーターなしをどうするかは分からない。建築基準法では、階数によるエレベーター設置の規定はなく、「高さ31mを超える建築物には、非常用エレベーターを設置しなければならない」(同法342項)の規定を初めて知った。

そういえば、民間の低層3階建て分譲マンションにエレベーターが設置されたのは昭和60年代の初めだったような気がする。5階建てはもっと以前から設置されているのが当たり前だった。 

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幅員2mの東西軸道路(桜のトンネルになるとか)

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ロボット草刈り機

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団地エントランス(敷地面積を戸数で割ると約104㎡)

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