見学物件は激減 前年より20%減の85件 取材意欲駆り立てる物件減少も一因
今年(2013年)のマンション見学件数は85件だった。一昨年の115件、昨年の105件と比べて大幅に減少した。これまでの記者生活の中で最少であるのは間違いない。
どうしてこれほど減ったか。一つにはフットワークが衰えたからだろう。若いときは1日に4~5件ぐらい見学しても平気だったが、さすがに今は3物件が限度だ。85件のうち都内が59件と7割近いことも体力の衰えが反映したものだろうと思う。
もう一つは、時間的な制約だ。他の取材が増えたためだ。今まではあまり取材してこなかったハウスメーカーの取材が増えているのも一因だが、RBA野球シーズンに入ると日曜日、月曜日、水曜日、木曜日はほとんど野球の取材と記事執筆に追われる。大会期間中の4カ月ぐらいはマンションの見学は激減する。デベロッパーも土曜、日曜は取材をさせてくれないし、火曜・水曜、あるいは水曜・木曜がモデルルームの定休日になっているので、フルに取材できるのは月曜と金曜しかないのも響いている。
取材が激減したのはもう一つ理由がありそうだ。「見学したい」と取材意欲を駆り立てられた物件が少なかったことだ。これは記者だけでなく、第一線で活躍している同業のある記者も同じらしく「今年は見るべき物件が少なかった」と話した。
なぜ見るべき物件が少なかったのか。その理由はよく分からないが、大手の寡占化が進み、商品企画で対抗すべき中堅どころの意欲的な物件がなくなってきたのも一因ではないかと考えている。リーマン・ショックの影響はまだ払拭されていない。
そんな訳で、いま選定中の「話題のマンション」も減らさざるを得ない。その中から3物件だけ選んでいる「ベスト3」マンションは東京建物・首都圏不燃建築公社「Brillia Tower池袋」と野村不動産・三井不動産レジデンシャル・積水ハウス・阪急不動産の4社JV「Tomihisa Cross」と、マスコミを賑わせたアベノミクス効果を象徴する三菱地所レジデンス「ザ・パークハウスグラン千鳥ヶ淵」を選定した。
こだわり記者が選んだ2013年 話題のマンション
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ベスト3マンションの筆頭に選んだ「Brillia Tower池袋」は別掲の記事を参照していただきたいが、豊島区役所・隈研吾・日本設計というこれ以上ない組み合わせが奏功した。売れ行きは想像をはるかに超えるものだった。
完成は平成27年2月だが、いまから見るのが楽しみだ。記者がもっとも感動したのはやはり隈氏による外観デザインと仕様だ。区本庁舎ゾーンは台形状で、シースルーのソーラーガラス、透明ガラス、太陽光パネル、壁面緑化、木目調ルーバーを配し、10階から1階まで階段で降りられるようにするとともに、屋上庭園、エコミューゼを設置。ジグザク上にせせらぎが流れるように工夫するという。せせらぎにはメダカやカエルが生息できることも検討されているというから驚きだ。
もう一つの「Tomihisa Cross」は、正直に言えば、三井不動産レジデンシャル・東京建物・三菱地所レジデンス・東急不動産・住友不動産・野村不動産の大手デベロッパー6社JV「東京ワンダフルプロジェクトSKYZ TOWER&GARDEN」とどちらを選ぶかで迷ったのだが、大手6社JVを選ぶのは安易というか無難な選択だという思いがあり、その一方で、「Tomihisa Cross」はシアターのBGMに「第九」の第4楽章を流した勇気を買ってこちらを選んだ。
「第九」を採用することを提案した野村不動産住宅事業本部営業企画部営業企画課の佐々木まどかさんが「私はここで生まれて育ちました。日本一のイゴコチのいいマンションにふさわしい、自信が持てるマンションにぴったりだと思って第九を選びました」と話したのがとても印象に残っている。あの雑多な街をよくぞ「日本一イゴコチのいい街」としてアピールしたものだ。
「SKYZ」を選外としたので、浮上したのは三菱地所レジデンス「ザ・パークハウスグラン千鳥ヶ淵」だ。これまで億ションはたくさん見てきたので、このマンションより設備仕様が勝っているのもたくさんある。しかし、何と言っても皇居が一望できるマンションは空前絶後、唯一無二なのが決め手になった。
記者見学会のとき、記者は「最大の関心事は、このマンションが三井不動産レジデンシャルの『パークマンション千鳥が淵』(2004年竣工、64戸)の坪単価778万円を越えるかどうかだった。坪単価そのものはリーマンショック前の三井不動産レジデンシャル「パークマンション六本木」は1,140万円だし、1戸あたり10億円超はたくさんある…三菱地所レジデンス副社長・瀬川修氏が『三井さんの物件は首をひねらないと皇居は見えない。全住戸から皇居が見えるのは当社のマンションと隣接の賃貸マンションしかない』と語ったように、皇居が一望できる唯一無二のマンションだ。そのマンションが三井不動産レジデンシャルのマンションに負けるようでは情けない。坪800万円は納得だ」と書いた。
今だかから書くが、同社の単価が「パークマンション千鳥が淵」を下回っていたらベスト3には選ばなかった。早期完売したのはアベノミクス効果だろうが、そうでなくてもあるいは売れたか。
野村不動産他 新宿・富久町「Comfort Tower」第1期482戸が即日完売(2013/9/26)