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2015/08/27(木) 00:00

「女性活躍」は待ったなし コスモスイニシア執行役員・岡村さゆり氏に聞く

投稿者:  牧田司

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岡村氏

 コスモスイニシアの執行役員 内部統制室長、経営管理本部 経営企画室長・岡村さゆり氏(51)が今年4月1日付で執行役員 経営管理本部副本部長に就任した。同社の女性の役員は2012年に走内悦子氏が就任しており、現在全10名中2人が女性の執行役員になった。社外取締役・監査等委員の坂東規子氏を含めると16名の取締役・監査役・執行役員のうち3名が女性だ。

 わが国の上場企業の女性役員比率は1.2%と極めて低いことはよく知られているが、不動産業界も例外ではない。大手デベロッパーには女性役員は過去も現在も一人もいない。不動産上場会社で女性役員がいるのは、役員6人のうち2人が女性のフージャースホールディングス、社外取締役に女性が一人いるヒューリック、上席執行役員に2名の女性がいるサンケイビルくらいだ。ゴールドクレストにも女性役員が1名いたが、2年前に退社している。この役員の退社の新聞辞令は発動されたが、有価証券報告書にはその情報が開示されることはなかった。これでは「男女共同参画」が泣いている。情けない限りだ。

  同社は分母が小さいこともあるが、役員比率が20.0%、監査役などを含めた比率でも18.8%と極めて高い。

 さて、コスモスイニシアに話を戻すと、記者は同社の40年のマンション事業を取材してきた。「女性活躍」とわざわざ男性と対比して書かなければならないほど、女性差別的な雇用を行ってきていない会社だとずっと思ってきた。自由闊達な社風があるからこそ男女差別がないからこそ、優れた商品企画が生まれるのだと思っている。今回、岡村氏にインタビューするのも、この仮説が正しいことを証明しようという試みもある。

 では、同社のマンションの商品企画とはどのようなものか。創業時代にさかのぼって概観してみる。

  同社の創業は1974年。当時の日本リクルートセンター(現リクルート)が環境開発として不動産業をスタートさせた。当時、リクルートは創業社長の故・江副浩正氏が強烈なカリスマ性を発揮しており、時代の寵児としてマスコミに度々登場していたこともあり、業界にも衝撃が走った。しかし、その一方で、〝素人集団に何ができる〟と冷ややかに異端児のように見るデベロッパーは少なくなかった。

  しかし、記者は〝この会社はマンション業界に新風を吹き込む〟と確信していた。当時、江副氏が「三井(不動産)さんの頭脳と大京(観光)さんの足腰を見習いたい」と語ったのを鮮明に覚えている。ずいぶん欲張りな会社だなと思ったものだ。

 並みのデベロッパーではないことはすぐ発揮された。〝異端ぶり〟がいかんなく発揮されたのが、「コスモ蕨」だった。1985年竣工の12階建て全150戸で、60㎡台の3LDKが中心だった。記者はその間取りに驚嘆した。マンションが分譲された昭和57年、58年当時は〝不況下の大量供給〟が続いており、マンションはさっぱり売れなかった。供給したその月内に半分も売れればよいほうだった。京浜東北線も例外ではなかった。〝死屍累々〟という言葉がぴったりのように、大量の売れ残りマンションがあった。

 同社は、そのマンション不況に大胆というか不敵というか、挑戦状をたたきつけた。「蕨」は間口が約8m、奥行きも8m、つまり8×8=64㎡のほぼ正方形のプランが中心だった。当時、ルービック・キュービックが流行っていたからだろうか、同社はこのプランを〝キュービックプラン〟と呼んだ。

 プランを正方形にすることで、南側にLDKと居室2室、つまり南面3室を確保するという離れ業を演じたのだ。今でもそうだが、60㎡台の3LDKといえば、間口はせいぜい6m前後で、まるで羊羹を切ったような形状の住戸が一般的だ。それが経済設計だった。その業界の常識破りのキュービックプランがユーザーに支持されたのは言うまでもない。

◇            ◆     ◇

 あれから約40年。同社は昨年、創業40周年記念マンションとして「イニシア武蔵新城」を分譲した。まさに〝キュービック〟プランを髣髴させるものだった。40年を経過してなお同社の創業時のDNAがしっかりと継承されていることに記者はまた衝撃を受けた。このマンションについては、記者は昨年の「ベスト3」マンションの一つに選んでおり、記事にもしているので詳細はそちらを参照していただきたい。

 ご存じのように、同社は業界の異端児、独立系であるがゆえに好不況の波に翻弄されても来た。

 その後、リクルートコスモスに社名を変更し、株式を店頭公開し、マンション供給量で王者・大京観光(現大京)を脅かす存在となり、バブルの追い風もあり億ション市場でナンバー1の存在になった。しかし、1988年のリクルート事件あたりから雲行きが怪しくなり、バブル崩壊後は一転して事業縮小、人員整理の氷河時代へ突き落されることになる。この間、リクルートの実質的なダイエーグループ入りと離脱-外資の出資とMBOスキームを活用したリクルートグループからの独立-リーマン・ショックによる事業再生ADR手続-大和ハウスグループ入りへと波乱の歴史をたどる。2009年には社員の約半数360人の希望退職も募っている。

◇         ◆     ◇

 岡村氏は開口一番、「わたしは1982年(昭和62年)入社。それまで環境開発の社員はリクルート採用だったのですが、独自採用するようになって2年目でした。現在もそうですが、当社には〝一生うちで頑張ります〟というような社員はあまり入社しない。元々のリクルートの社風が残っています。ですから30歳くらいから起業する人が多い。 

 これは社内用語なのですが、当社では、退職時に『退社』ではなく、『卒業』と表現することがあります。わたしの同期入社は200人いたのですが、現在、残っているのは8人だけです。定年退職者はまだ一人もいません。社員は貴重な人材でコストもかかっていますので、残ってほしいのですが…」と語った。

 社歴40年で新卒採用者での定年退職者が一人もいない。こんな会社はほかにあるだろうか。もちろん同社は前述したように、2009年には大量の希望退職者を募集している。やむなく退社せざるを得なかった社員もたくさんいるのだろうが、同社はキャリアを踏み台にステップアップしようという野心家集団とも受け取れる雰囲気が社員にある。

 話は横道にそれるが、リクルート同様、コスモスイニシアは人材養成会社でもある。不動産会社にも同社出身者がたくさんいる。フージャースホールディングスの廣岡哲也社長は岡村氏と同期のコスモスイニシア出身だし、ゴールドクレストもSOHOの草分け的な存在のスペースデザインもリクルート出身者が創業した。カフェ・カンパニーの楠本修二郎社長は、リクルートコスモスの広報担当者として在籍していた。

 岡村氏の話に戻る。岡村氏は「男女差別? 全くないですね。今年の新卒採用は32人ですが、男女比は17:15。昨年も半々でした。意図的に半々にしているのではなく、男女の垣根を取っ払い、公平に採用したらこういう結果になったということです。同じ年代の学生を平等に評価すると、女性のほうがしっかりしていると採用担当者が考えた結果でしょうか」と笑った。

 男女差別がない証拠に、同社にはユニークな就業形態がたくさんある。「当社はずいぶん前からフレックス制を採用しています。コアタイムもありません。朝は何時に出勤してもいいが、夜8時以降は働くのを止めようという動きが強まっていますし、『週3回は子どもを保育園に送りに行く』という男性社員もいます。水曜・木曜が定休の社員は半期に一度、その前後の日を特別休暇としたり、メモリアル休暇も取得するよう促進したりするため1万円の手当を出しています。介護や看護のための時短勤務制度もあります。また、ステップアップのための特別休暇制度はリクルート時代からの流れです」-岡村氏は次々とこれらの制度が〝当たり前〟であるかのように話した。ただし、制度だけではなく、子育て中の働き方など、まだまだ取り組み課題はあるとのこと。

 こうしたワークライフバランスの取り組みは、高木嘉幸氏が平成21年に社長に就任してから加速しているようだ。「高木はオーストラリア勤務が20年くらいありまして、男女の雇用差別などないのを長く経験しているからでしょうか、差別がないのは当たり前であり、女性があらゆる仕事にコミットすべきと考えている」と、岡村氏はトップの姿勢にも言及した。

 こうした取り組みは銀行にも評価された。同社は今年5月、三井住友銀行の「SMBCなでしこ融資」が実施された。これは、同行が融資実行に際し企業の女性活躍推進の取り組み状況を独自の基準で"見える化"するもので、「女性活躍が期待できるグロース企業」として認定された。同社は経営幹部の多様な人材登用、在宅勤務制度、時短勤務、フレックス勤務、有期雇用から無期雇用へ選択できる「プロ社員」制度などが評価された。これまで10社以上が「SMBCなでしこ融資」会社に選ばれている。

◇          ◆     ◇

 岡村氏は26歳で結婚。子どもはいないが、30代で女性ばかり20人もいる部署でその職長としてマネジメントを学んでいる。「女性が20人もいると、結婚を間近に控えたり、子育ての人もいたりしますから、とにかく話をよく聞きました」-岡村さんが26歳で結婚したのはバブル崩壊の年だ。バブルの発生と終焉、その後の敗戦処理-再生に取り組んできた岡村氏には定年まで勤められて(役員定年はいくつなのだろうか)、後に続く女性(男性も含めてだが)を育ててほしい。

 冒頭に書いた「商品企画が優れているのは男女差がないから」という仮説はやや我田引水だが、「武蔵新城」の例で証明されたと記者は考えている。マンションの販売現場でも女性責任者の活躍をたくさん見てきた。もう一つ、同社は新しいブランド「INITIA CLOUD(イニシアクラウド)」を立ち上げた。先日行われた記者見学会の記事も参照していただきたい。

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同社のホームページの採用ページトップ写真(一升瓶をぶらさげたり、ゴルフクラブを握ったりしている女性が前面に登場している) 

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