三井不動産と青木茂建築工房は3月30日、「林マンション リファイニング工事」完成見学会を行った。見学者は約360~370名になる模様。
両社が業務提携してから2号目になる案件で、昭和41年に建築された「検査済証のない共同住宅兼店舗」を耐震補強と大規模修繕を行い、検査済証を取得するリファイニング計画。
建て替えた場合、現行法の日影規制・高度地区の高さ制限・容積率制限など既存建物のボリュームが確保できないことから、既存建物のボリュームが維持でき、コスト削減・相続対策・環境負荷低減につながるリファイニング建築手法をオーナーが選択して実現した。
中性化対策として4、5、6階の梁に亜硝酸リチウム圧入工法を採用。物件は、特定緊急輸送道路沿いの耐震助成金の交付が予定されており、2018年3月末日に建物全体の検査済証を取得する予定。
商品企画では、既存3つのフレーム(スパン)内に各階4住戸(専用面積29㎡)だったのを、フレーム内に新規耐震補強壁を設け、各階3住戸(同34~40㎡)に変更することで競争力を高めた。断熱・遮音性能が高いLow-E複層ガラスを採用しているのも特徴。
見学会で、三井不動産ソリューションパートナー本部レッツ資産活用部チーフコンサルタント・宮田敏雄氏は「わたしの個人的な考えだが、普通のリフォーム、リノベーションでは省エネ性が確保できないものが多いが、今回の物件はLow-E複層ガラスの採用でそれがかなり向上している」と語った。
物件は、都営浅草線馬込駅から徒歩10分、大田区北馬込1に位置する6階建て全17戸の賃貸住宅と店舗。賃料は34㎡が11万円台の半ば、40㎡が12万円台の後半。設計監理は青木茂建築工房、総合企画は三井不動産レッツ資産活用部、商品企画・サブリースは三井不動産レジデンシャルリース。先日21日に入居者向けの内覧会を行い、当日だけで募集15戸に対して6戸の申し込みがあった。その後キャンセルが1件出たので申し込みは現在5件。
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この案件については昨年10月の工事現場見学会を取材しているし、今年2月に行われた青木氏の記念講演でオーナーの方にお会いしているので、そちらの記事を参照していただきたい。今回は完成物件を見て驚いたこと2つ3つに留める。
驚いたのは、最初に見学した6階の住戸の浴室にミストサウナが付いていたことだ。賃料は相場の9割と聞いていたので、これも商品力をアップするための策かと思ったら、これはオーナーサイドが入居するための特別仕様ということだった。
それより驚いたのは、サッシにLow-E複層ガラスが採用されていたのもさることながら、ガラスは旭硝子の「マイミュート」だったことだ。この製品は優れた断熱性能と防音・結露防止機能をあわせ持つのが特徴で、通常の複層ガラスの遮音等級「T―2等級」よりワンランク遮音性能が高い。額縁付きなのでデザイン性にも優れる。
「マイミュート」は値段が高く、分譲マンションでも採用しているところは少ないはずだ。このようなところにお金をかけるのがすごい。
もう一つ。環7通りに面した外壁には3ミリの鉄に塗装を施した有孔折板が採用されていた。デザイン性に優れるとともに15年間くらいは錆びずにメンテもしやすいという。
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この前も書いたが、青木氏は首都大学東京の特任教授を退任された。今後はリファイニング建築の普及に全力を尽くされるのではないか。仕事も多忙を極めているようだ。今回の見学会も参加希望を断らなければならないほど盛況だった。
配布された資料には、CLT材をふんだんに用いた岡山県の「真庭市中央図書館」と、廃墟となっていた建物を再生する福岡県の「上川端ビル」の見学案内とともに、スタッフ募集のA4の紙が添付されていた。建築を学んでいる人のほかプレス・秘書、学生アルバイトなど「再生建築及びリファイニング建築に興味があること」が応募条件だ。
応募希望者は電話03-5789-0488かE-mail:このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。へ。
青木氏とその友人の方々(青木氏は今度は上下ともイッセイミヤケだそうだ)
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受かる可能性が高くなるとは保証できないが、応募希望者の方はぜひ記者が書いた記事も参考にしていただきたい。「青木茂 RBA」で検索すれば10本くらい記事がヒットするはずだ。この日の見学会で「マイミュート」が採用されていることを見抜く人はそうないはずで、人が気づかないことをほめる(けなす)のが受かる秘訣だ。
プレス・秘書も募集しているそうなので、面接の際には「先生もお気づきでしょうが、先日配布された資料には『雑誌掲載のご案内 新建築4月号(2018年4月1日発売) 日系アーキテクチュア(2018年4月12日号)』とありました。わたしは絶対このようなミスは見逃しません」と一発見舞うことをお勧めする。
さらにまた、「先生はイッセイミヤケがお気に入りのようですが、わたしなら先生の中身も含めてリファイニングして差し上げます」くらいぶちかましてはいかがか。
リファイニング建築の考案者 首都大学東京特任教授・青木茂氏が退官へ 記念講演会(2018/2/13)