「ウッドガーデン」外観
ポラスグループのポラスガーデンヒルズは4月2日、オリジナル構造部材を使用した木造3階建て新社屋「ウッドガーデン」を報道陣向けに公開した。
新社屋は、JR常磐線・千代田線馬橋駅から徒歩1分、千葉県松戸市馬橋幸町の商業地に位置する3階建て準防火建築物で、延べ床面積約658㎡。構造は木造軸組工法。同社グループが設計・施工した。工期は約6カ月。総事業費は4億円。
エントランスに流紋岩の滋賀石を用い、外観は内部の木が見えるようにガラスカーテンウォールを採用。1階のショールームは床材にオーストラリア産のヒノキの突板を敷き詰め、2階のオフィスはクルミ材の白木をそのまま見せ、設計部署が使用する3階は床にナラ材の突板を使用し、壁など全体として黒を基調とすることでデザインを変えているのが特徴。天井高は1階が3.3m、2・3階が3.1m。
構造には、同社グループのポラス暮し科学研究所が開発した合せ柱、合せ梁、重ね梁、挟み壁(CLT耐力壁)を採用。住宅向けに流通している集成材を同社グループのプレカット工場で集束したり加工したりして耐震・耐火性能や強度を向上させ、コストを抑えているのが特徴。これによって約8.8mのスパンを実現した。柱はカラマツ、CLTは国産のスギ材を採用。
同社代表取締役・坂倉利昌氏は、「当社はポラスグループで唯一千葉県に特化した木造分譲住宅事業を展開する会社。設立した21年前はグループ全体で200戸程度の供給量しかなかったが、昨年度はグループ全体で714棟、当社だけで317棟に増加している。これまで5,000棟の住宅を目標に掲げ、目標を達成したら新社屋を建てる予定でいたが、中内(晃次郎)代表から〝木造の会社だから木造にしたら〟という話があり、グループが木造の非住宅に力を入れていることもあり、RCから木造にすることに変更した」と経緯を語った。
また、「今年度はグループ全体で800棟、当社は375棟が目標。工事の段階から〝何が建つの、今までとは違う〟などと地域の評判もよく、これを機会に新たなスタートを切り、デザイン性、耐震性、サービスにより磨きをかけ7~8,000棟を目指す」と述べた。
坂倉氏
◇ ◆ ◇
同社担当者は、CLTについてスギの3層クロスラミナパネルを開発し、一般的な耐力壁の約3.8倍の強度にし、表にビスを出さない工夫をしたなどとかなり難しい話をした。
そんな難しい話をされても記者はさっぱりわからない。注目したのはデザインだ。木造建築物は、耐火・防火の規制を満たしつつ木の美しさをいかに見せるのかがポイントだと思っている。
外観が木造に見えないのはいつものことながら残念だったが、内部は実によくできている。ポラテックの事務所や職業訓練校と比べ規模は小さいが、1階のヒノキ、2階のクルミ、3階のナラの突板が美しい。
3階のカラーリングは黒が基調だったのには面食らったが、デザイン監修を担当したガーデンヒルズ事業部設計部部長・安藤欣司氏は「これは私の趣味。設計部署にはこれがふさわしい」とこともなげに語った。
安藤氏とはどこかでお会いしたことがあると思ったら、学生コンペの実物化モデルハウスでお会いしていた。
なるほどと思った。ものごとに集中するには、周囲が明るいより暗いほうがいい。安藤氏はそのあたりをきちんと計算しているのだろう。
外構の滋賀石がまたいい。これも安藤氏が選んだもので、「星野リゾートで同じものが採用されていた」そうだ。
同社には、今回の事務所やボラティックのオフィス、職業訓練校を木造にしたことで社員の生産性は高まったのか、ストレスは軽減されたのか、ビフォー&アフターを公開するよう願いたい。
1階
2階
3階
外構
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