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2018/05/20(日) 10:16

美と機能性は離反していいか? CLTを採用したアキュラホーム 港北「キラクノイエ」

投稿者:  牧田司

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「キラクノイエ」(アキュラホーム港北展示場)

 アキュラホームは5月18日、創業40周年記念として建築家・芦原太郎氏とコラボした高価格帯ブランド「AQレジデンス馬込展示場」と、建築家・原田真宏氏・原田麻魚氏がプロデュースしたCLTを多用した週末別邸をイメージした「〝キラクノイエ〟港北展示場」を5月19日にオープンすると発表。同日、報道陣向けに公開した。

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 先に紹介した「AQレジデンス馬込展示場」に続いて、アキュラホーム港北展示場(ハウジングメッセ港北インター住宅公園内)に開設した「キラクノイエ」を紹介する。

 「キラクノイエ」は、「多様な暮らしの器となる居住空間」がテーマ。CLTを採用した木質壁構造で、開放的で室外との一体感もあわせて演出している。延床面積は約120㎡。価格は約5,000万円(坪単価138万円)。

 ゴールデンウィークに事前公開したところ、モデルハウスとしては初のCLTを採用した別荘風住宅という珍しさもあり、他社のモデルハウスへの来場者は平均60組だったのに対し、その3倍に上ったという。

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 CLTを用いた建築物を見るのは今回が3度目だ。最初は「エネマネハウス2014」の「慶応型共進化住宅」(慶応大学/OMソーラー・銘建工業・長谷萬など27社)だった。2度目は一昨年公開された「つくばCLT実験棟」だった。

 何度見てもいい。木は美しい。今回の建物は、床、壁、天井パネルともジョイント工法を採用してほぞとボルトで組み立てているので、ばらすのも簡単で移築なども簡単に行えるという。

 原田氏は「CLTは鉄やコンクリに負けない階(きざはし)にかかっている。メジャーになる。工場で加工し、現場で組み立てるだけだから、今後、普及が進めば価格も2.5分の1くらいに下がる」とメッセージを寄せた。

 原田真宏氏は、1997年、芝浦工業大学大学院建設工学専攻修了(三井所清典研究室)。1997-2000年、隈研吾建築都市設計事務所。2003年磯崎新アトリエ。2004年、原田麻魚氏と共に「MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO」設立。現在、芝浦工業大学教授。原田麻魚氏は、199 9年、芝浦工業大学建築学科卒業。

 両氏は2017年度、「道の駅ましこ」で日本建築家協会 JIA日本建築大賞を受賞している。

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2階ロフト

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 記者もCLTがメジャーになるのを願っている。しかし、関係者は住宅への普及には懐疑的だ。加工するのは容易だが、例えば今回の建物に用いられているパネルは幅1820ミリ、厚さ45センチで、高さは数メートルだ。重量は分からないが、現場で組み立てるのは重機でないと不可だ。運搬も容易でないという。

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 それより気になったのは、コンセプト・機能性だ。以下は、CLTがメジャーになることを願うからこその苦言だ。

 まず、コンセプト。「週末別邸」そのものに異論はないが、一般住宅への普及を願うであれば、そのようなプランにしてほしかった。今回のモデルハウスは大和三山か出羽三山のような三角屋根が連なった外観で、南面はガラス張りだ。リゾート地か広大な敷地ならともかく、これを街中に建てる人はまずいないだろう。建てれば顰蹙を買うはずだ。

 次に機能性・使い勝手。驚いたのは浴室だ。浴室のドアは外開きドアを90度に開いたその真後ろについている。浴室に入るためには、リビングからドアを開け、そのドアを締めなければ、浴室のドアが開けない構造になっている。

 確認はしなかったが、これだとまずバスマットは敷けない。浴室から出た途端、家族がトイレに入るため外開きドアを開ければドアにぶつかりそうだ。浴室の広さは12×16サイズだ。賃貸住宅並みだ。5,000万円かけて、賃貸住宅並みの浴室にする人はこれまたいないはずだ。

 土足が可能なコンクリ床の土間状リビング(8.6畳大)とCLT床のダイニング・キッチン(16.4畳大)の間の上がり框のような段差も気になった。30センチ近くあるのではないか。靴やスリッパをはいたり脱いだりするのか。リビングとダイニングを行き来するのにそんなことをする人はいない。機能としては階段に限りなく近いから、建基法の階段けあげ(ほぼ20センチ以下)に適合しない。

 キッチンもプアだ。別荘ならこれでいいが、この家で暮らすのであれば食器棚や食洗機はどうするのか。先ほども書いたが、街中の南道路だったら、食事風景が外から丸見えだ。それこそ〝開かずの窓〟になるのではないか。

 さらに言えば、狭小敷地・住宅にロフトはいいが、別荘にわざわざそのような空間を設ける意図が分からない。

 先に見学した芦原太郎氏とコラボした「馬込」のモデルハウスは美しくて機能的にできていた。それと比べると「港北」はコンセプトが異なるとはいえ、機能性には問題が少なくない。

 丹下健三は「美しいものこそが機能的だ。機能的なもののみが美しい」と語った。この言葉を今回のモデルハウスに当てはめるとどうなるのか。

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