「(仮称)泉地区高森2丁目プロジェクト」
三菱地所は9月11日、林野庁と国交省のそれぞれの補助事業に採択されているCLTを床材に用いたわが国初の高層建築物「(仮称)泉地区高森2丁目プロジェクト」の施工現場見学会を行った。
物件は、宮城交通宮城大学線寺岡六丁目・泉アウトレットバス停から徒歩3分、宮城県仙台市泉区高森2丁目に建築中の10階建て延床面積約3,6049㎡の全39戸の賃貸住宅。(専用面積は51.44~89.43㎡。構造は木造(CLT床・耐震壁、燃エンウッド)+鉄骨造のハイブリッド構造。建築主は三菱地所、設計・監理・施工は竹中工務店、監修は三菱地所設計。完成予定は2019年3月。C LT利用箇所は床の一部(約1,000㎡/床全体の約30%)、壁の一部(約110㎡)。材積約230m。
2時間耐火の大臣認定を受けたCLT床、竹中工務店の特許技術「燃エンウッド」を柱に採用。竣工後は賃貸住宅として運営し、継続的に建物性能に関するデータ等を収集する実証建物。
見学会で三菱地所住宅業務企画部CLTユニット主事・海老澤渉氏は、「職人不足による労務費の高騰や工期の長期化など、今後厳しくなる事業背景を打破する社内新規事業提案制度に採択された」と、若手4人からなる同ユニットが2年前に誕生した経緯について語り「今後、木造建築物の設計・施工機能や不動産情報ネットワークを生かし、各地の木造関係プレーヤーと連携することで、当社のアセット開発事業に寄与したい」と抱負を述べた。
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CLTを採用した建築物を見学するのは今回で4回目。ほとんどのCLT構造材はせっこうボードなどで被覆されており、現わしの燃エンウッドも少ししか見えなかったが、スギの表情がやはり美しい。木造は現しにすべきともう百万遍も書いてきたのでもう止めるが、ゴヤの「裸のマハ」と「着衣のマハ」のどちらが美しいか-いうまでもない(美意識は個人によるが)。
海外では簡易な塗料を塗るだけで内装制限をクリアできると海老澤は語ったが、わが国では不可で、不燃処理を施した木材は高価なのでなかなか普及しないそうだ。
2時間耐火のCLT床パネルについて触れておくと、厚さは210ミリ、その上下に振動音対策などのトップコンクリート(厚さ80ミリ)、耐火被覆のせっこうボード(厚さ60ミリ)などを重ねるので全体の厚さは410ミリにもなる。通常の賃貸住宅の床厚は180ミリだそうで、2倍以上だ。そのうえダクトなどを通すから10階建てといっても1層近く高くなる勘定だ。今回の建物の天井高は2100、2300、2500ミリという。
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多くの報道陣からはいつものようにコスト、工期について質問が飛んだ。「RCと比べどうか」と。
海老澤氏らはその都度、「(RCなどと比較して)工期は14カ月から11カ月」「職人の数は30~40人から数人」「コスト自体は3割高」などと答えた。しかし、もうこんな馬鹿馬鹿しい質疑は止めたほうがいい。そもそも性質、利点弱点が異なるものを同じ土俵、まな板に乗せ論じるのはフェアじゃない。
どちらが森林国、木と紙の住文化にふさわしいか、人と地球環境にやさしいかに比重を置いて論じるべきだ。論を待たないではないか。
完成予想図