三井不動産レジデンシャルを幹事会社とする特定建築者11社は10月31日、2020年東京オリンピック・パラリンピックの選手村にもなる「晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業」の開発区域のタウンネームを「HARUMI FLAG」に決定したと発表。街づくりのコンセプト、テーマなど概要を公表した。同日、オフィシャルサイトを開設し、会員登録の受付を開始した。来年春にモデルルームをオープンし、5月に販売開始する。
HARUMI FLAGは、開発面積約13haの敷地に5,632戸(分譲4,145戸、賃貸1,487戸)の住宅と商業施設の合計24棟から構成され、保育施設、介護住宅などを整備し、多様なライフスタイルを受け入れる人口約12,000人となる街づくり計画。
官民が一体となって創出した直径約100mもの拠点空間であるCENTER CORE(中心広場)や、分譲街区に51室の共用室などを設置し、敷地内にはバリアフリーなアクセシブルルートを設置。2,318台を収容する駐車場は全て地下方式とし、各住宅棟の共用廊下幅も1.5mとする。平均専有面積も一般的なものより広くする。
このほか、次世代のエネルギーを供給する「水素ステーション」が設けられるほか、日本初の街区をまたいだ専用の光ケーブル網を使ったエリアネットワークにより街全体のセキュリティ管理やエネルギーマネジメントなどを効率的に行う。都心直結の新交通システム「BRT」も運行する予定。
事業者を代表して三井不動産レジデンシャル取締役常務執行役員・山田貴夫氏は、「銀座から2.5キロの東京のど真ん中に今までにない街が誕生する。後世に残るレガシーとなる街づくりを進めていく」と話した。
事業は、中央区晴海五丁目に位置する総開発面積約133,906㎡、総計画戸数住宅5,632戸(分譲住宅街区4,145戸、賃貸住宅街区1,487戸(シニア住宅、シェアハウス含む)、他に店舗・介護住宅・保育施設(区画数未定)、施工は東急建設、長谷工コーポレーション、前田建設工業、三井住友建設。再開発コンサルタントは日建設計。設計は日建ハウジングシステム、日本設計、長谷工コーポレーション、三菱地所設計、前田建設工業、三井住友建設。25人のデザイナーを起用し、光井純氏がマスターアーキテクトを担当する。
14~18階建ての住宅棟は大会終了後リニューアルを施したうえ2022年秋に竣工。タワー棟は2024年3月に竣工する。
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発表会には約100名の報道陣が詰めかけた。住宅はオリ・パラの選手村となり、東京都が事業者に譲渡した土地の値段が約130億円で、坪単価約32万円、容積率100%当たりの一種は坪約8万円だったことから話題になった割には少ないような気がしたし、予想はしていたが、聞きたいことは10分の1も聞けなかった。肩透かしをくったというのが正直な気持ちだ。以下は大急ぎで書いた記事だ。順次加筆訂正する。
誰もが関心がある坪単価について報道陣が質問した。もちろん「価格は未定」という答えしか返ってこなかった。(本当は返ってこない質問などしてはいけない)「〇年転売禁止」の特約は設けないようだ。
記者は〝東京のど真ん中〟のプロジェクトだから、ストレートに質問しようとも考えたが、変化球を3つ投げた。これは野球と一緒、効果的なときもある。
一つは、「容積率を400%と仮定すると一種当たりの単価は8万円になるが、これに誤りはないか」と。同社の担当者からは、「都の募集に応じた結果であり、答えられない」と返ってきた。(これは想定内。しかし、容積を仮に300%としても一種約11万円の破格値であるのは変わりない)
もう一つは、共用施設はかなり充実しており、2,318台を収容する駐車場は全て地下、共用室は51室もあるように有効率(レンタブル比率)は相当低いと思ったので、「レンタブル比率はどれくらいか」と聞いた。これは後で教えてくれることになっている。この比率が分譲価格・賃料に大きく影響するはずだ。
それでも、土地代がただ同然(と言っては失礼か。ちなみに住友不動産が分譲中の「シティタワーズ東京ベイ」の一種単価は約42万円)だから、分譲単価は抑えられる。2年前、「アッパーで坪250万円ではないか」と書いたのもそのためだ。噂されている価格については、公表された計画から判断すればレベルは高いとは思うが、ものを見ないと何とも言えない。
しかし、いくらで売ろうが、これは事業者の勝手だし、市場が決めることだ。われわれがとやかくいう問題ではない。しかし、そんなに当初の予想が大外れずれることはないと確信した。タワーはもちろんもっと高くなるはずだが…。適正な価格で分譲すべきと考えているだけで、〝安くしろ〟〝高くしろ〟と言っているのではない。
3つ目の質問は、「せっかくレガシーマンションにするのだから、各選手にサインやら手形やら足形を壁などに残してもらって、オークションにかければ世界中から申し込みが殺到するのではないか」と、エールを送る意味で聞いた。これには「我々には権限がないので、組織委員会に声として伝える」と前向きな返事をもらった。
おそらく組織委はやらないだろうが、これは前例がある。住友不動産が品川の「ワールドシティタワーズ」で実施した。確か坪単価は800万円くらいしたのでなかったか。暴利を貪ったら批判されるかもしれないので、余剰金は寄付でもすれば誰も文句は言わないのではないか。
このほか、たくさん聞きたいことはあったが、他の記者の方に失礼と思ったので、これだけにとどめた。本当は、一種8万円になった根拠である、不動産鑑定評価手法に選んだ開発法の是非について質問したかったのだが、これも絶対に返事は返ってこなかったはずだ。〝専門家が評価した価格に瑕疵はない〟というのが当局の判断だ。鑑定業界には〝クライアントプレッシャー〟なる不思議な言葉があるのだか…。
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