日本原産の作物はフキ、ウド、カキ、クリなどわずか10種類程度-目からうろこのこんな講話を秋草学園短期大学教授・中村陽一氏(61)が2月22日、OSI(沖縄観光産業研究会)第126回研究会で行った。
中村氏は「わたしの専門は植物学」と口火を切り、「キュウリだけで1時間は話せる」などと冗談も飛ばしながらモーウイ(ウリ)、キュウリ、ブロッコリー、キャベツ、ゴボウ、イチゴ、スイカ、カボチャ、ゴーヤ、トウガン、パパイヤ、バナナ、ジャガイモ、サツマイモ、タロイモ、サトウキビ、コメ、コムギ、ダイコン、ハクサイ…数えきれないほどの食材の起源や食べ方などをしゃべり続けた。沖縄出身の参加者とは「黒糖地獄」「モクマオウ」などについてやり取りもした。
きっかり1時間。「話は1時間でいいよ。そのあとは泡盛が待っている」と事前にプレッシャーをかけた同研究会前代表・百瀬惠夫氏(明大名誉教授)の注文通りに話した。
記者が驚いたのは、参加者に配布された論考「作物の起源を探る~プロローグ~」(食の科学2001.8 No282)の次の部分だった。
「(日本で)現在栽培されている作物は、400種以上、野菜だけでも150種にのぼり、さらに地方ごとの特産品種を上げればその数は数千にもなるといわれます。実は、世界中を見渡してもこれほど多種の作物を栽培している国は他にありません。
一方それらの作物の中で、日本原産のものは、セリ・ミツバ・フキ・ウド・ワサビ・クリ・カキ・ナシなど10種類程度にすぎません」
中村氏は、東京大学大学院農学系研究科博士課程単位を取得したのち、南極海洋調査や生物資源調査のためアジアを中心に60か国以上を歴訪し、教職の傍ら神職も務めている。
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原産のバナナには種があり、木のような部分は葉っぱであり、トウガンは1個40キロもするものがあり、パイナップルの食べている部分は茎で、ゴーヤはザクロのようにはじける、「泡盛」はひょっとしたら「粟」を原材料に使ったからではないか…まるでクイズ番組のような中村氏の揺さぶり攻撃にあ然、呆然するしかなかった記者は、悔し紛れに一発かました。
「先生!野草にはムラサキシキブとかワスレナグサ、ヒトリシズカ、ハハコグサなどいい名前もあるが、口に出すのもためらわれるオオイヌノフグリ、ヘクソカズラ、ハキダメソウ、ドクダミなどどうしてそんなかわいそうな名前を付けたのか。オオイヌノフグリの花も実も絶対そのような形ではない」と。
中村氏は「うーん、牧野(富太郎)先生か誰かが付けたのは間違いない」としか答えなかった。
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これは先生もご存じなかった「腰油(コシアブラ)」を紹介する。つい最近だ。あるデベロッパーの役員と広報担当の方々との酒席に出された天ぷらだった。口にしたとたん、だしぬけにえも言えぬ香りが口内に拡がり、痛飲したお陰で眠りに就こうとしていた脳細胞が覚醒させられ、その感動が満腔を満たした。70年近く生きてきて、こんなおいしい山菜を食べたことがないのが悔しかった。
早速翌日調べた。「山菜の女王」と呼ばれていることを知り納得した。4月中旬あたりから出回るそうだ。タラの芽など「目」じゃない。もうすぐフキノトウも食べられるが、フキノトウとはまた全然違う。これを食べずして食通というなかれ。