東急不動産は2月27日、北区志茂三丁目で開発を進めている学生レジデンス「CAMPUS VILLAGE」の第二弾「キャンパスヴィレッジ赤羽志茂」が2019年2月に竣工し、3月から入居開始すると発表。同日は報道陣に公開するとともに、第一弾の「椎名町」の女性入居者が住み心地などについて感想を語った。
物件は、東京メトロ南北線志茂駅から徒歩8分、北区志茂三丁目に位置する敷地面積約2,025㎡、延床面積約4,276㎡の8階建て全233室。専用面積は14.02㎡~14.67㎡。賃料は4.9万~7.2万円。入館料は15万円(1年)・24万円(2年)。管理費・共益費は1.8万円/月、食事代は1.7万円。事業主は同社のほか伊藤忠都市開発。施工は川田工業。管理・運営は学生情報センター。一定期間所有し、その後はファンドなどに売却するスキーム。
現地は、日本火薬の工場跡地。三菱地所レジデンスなどが分譲中の全500戸の「ザ・パークハウス オイコス 赤羽志茂」の隣接地。
昨年11月から入居者を募集しており、これまでに東洋大を中心に法大、上智大など約4割に申し込みが入っている。男女比は半々とか。
記者見学会で東急不動産執行役員住宅事業ユニット首都圏住宅事業本部本部長・大谷宗徳氏は、「年間1,000室体制、業界ナンバー1を目指す」と話した。
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大手デベロッパーでいち早く学生マンション市場に参入し、全国で約43,000室を管理・運営する学生情報センターを傘下に収め、好調なスタートを切った余裕なのか、大谷氏らひな壇のお三方は威風堂々の戦略家に見えた。女子学生をゲストに呼ぶなどという芸当を他社は真似できないのでは。
それもそのはずだ。数字が全てを物語っている。寮・寄宿舎のことはよくわからないのだが、分譲マンションと比較し、利回りを計算した。賃料約7.2万円(15㎡)で、坪単価を230~240万円くらいだとすると、利回りは実に8%を超えるではないか。
容積率を調べたら約211%(法定容積はおそらく200%)だったので、分譲と比べ容積不算入の部分は少ないようだが、逆に設備仕様を落とせるし、付帯設備も減らせるのでレンタブル比率は高いはずだ。
大谷氏らは、学生マンションを通じ、さらに賃貸住宅-新築の分譲マンション・一戸建て、リノベーションマンション、シニア住宅へと繋げることで〝東急ファン〟を拡大し、グループシナジーも発揮し、高付加価値のバリューチェーンを構築しているなどと自信たっぷりだった。年間1,000室とは凄い。一挙に引き離す戦略か。
オールドファンには懐かしい「CAMPUS VILLAGE(キャンパスヴィレッジ)」なるブランド(昔は東急ビレッジだったが)が復活した。
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記者は、学生マンション・寮を見学するのは2回目だった。いま首都圏ではどんな劣悪なアパートでも月額家賃は5万円くらいするはずで、個室に浴室・トイレが付いており、その他食堂、洗濯室、娯楽室、図書館、ミーティングルームなどの共用施設が併設されていることを考慮すれば、賃料はリーズナブルなものでないかと思う。
だが、記者は「寮・寄宿舎」と聞くと、管理しやすいように規則でがんじがらめにし、入居者の自由を奪う監獄のイメージが強いので好きになれない。その一方で「女子寮」などと聞くと、アンタッチャブルな花園のようなイメージが湧き、それだけで浮足立つのだが…(女子学生会館はかなり厳しい。箱入り娘はまだ生きている)。
いまの企業は、飼いならされた犬のような学生を求めているのかもしれないが(同社グループは個性的な人材確保に転換したはず)、学生さんには自立した立派な社会人になってほしいと願うので、好き勝手ができるアパート・マンションがいいような気がしている。
その疑問をストレートにぶつける絶好の機会を同社は与えてくれた。何と第一弾の「椎名町」に住む2人の女子学生をゲストに呼び、感想を語ってもらい、報道陣の質問にも答えるという、粋な計らいを行ったのだ。
まずAさんの感想。「えっと、一言でいえば安心。えっと、上京してホームシックにかかり、母が恋しくて泣いてばかりいました。そんなとき、フロアリビングで『大丈夫? 』などと声を掛けていただいたのがきっかけで仲良し友達になれました。あとは、食事がとても美味しくて盛り付けもいいのにびっくりしました。実家では、こんなことを言うと母に失礼ですが、ご飯とみそ汁と(もう一品二品話したか)くらいで…。こんなに朝ごはんが楽しいとは思わなかった。(記者団にマイナス点を聞かれると)部屋が狭く、みんなそれぞれ工夫していますが…」と話した。
Bさんは、「みなさんと関わり合いが持てて、英会話の勉強などもできるのがいい。門限もないし、セキュリティもしっかりしているので安心」などと語った。
Aさんの「部屋が狭い」に記者はもう我慢ができなくなった。「椎名町」は12㎡(3.6坪=7.3畳大)もあるではないか。孫のような女性にきついことを言うのはかわいそうだとも思ったが、ここはしっかり言わないとだめだと決断し、年甲斐もなく「あなたは『狭い』と仰ったが、家賃を払う親も大変。わたしは北向きの3畳間に住んだことがある。いったい実家ではどれくらいの広さの個室を与えられていたのか」と質問というより詰問した。
やや間があり、Aさんは「家は100坪で、わたしは10畳くらいでした」と、Bさんは「部屋の半分、5畳くらい」とそれぞれ答えた。「…」
この二人に記者は「分譲マンションにすると、ここ志茂だと1,000万円くらい、椎名町は1,000万円をはるかに超える」と話しておいた。分かってくれたか。
同社には、監視を強化すれば自立した社会人になれないのではないかと問いただしたら、大谷氏ら関係者は「悩ましい問題だが、自由を束縛するようなことは行わない」と答えた。しかし、共用部での飲酒・喫煙はダメで、部屋内での喫煙も禁止とか。お友達を招じ入れることは可能なようだ。洗濯機は男女別になっていた。
このことが、寮・寄宿舎に関する労働基準法で禁止されている①外出又は外泊について使用者の承認を受けさせること②教育、娯楽その他の行事に参加を強制すること③共同の利益を害する場所及び時間を除き、面会の自由を制限すること-に違反はしていないのは確かに間違いない。
土地の価値最大化 老人ホームと学生レジ事業 勝てない勝負はするな 記者の仕事も同じ(2019/2/27)