デジタルガレージ(DG)は8月1日、不動産関連スタートアップを対象とした育成プログラム「Open Network Lab Resi-Tech」を通じ、大手不動産会社など7社とスタートアップ5社による実証事業を支援すると発表。同日、これまでの成果を発表する「Open Network Lab Resi-Tech第1期Demo Day」を行った。
実証事業として発表されたのは、「IT活用による集合住宅等の不在時宅配受取の検証」(Yper)、「先進技術を用いた、高齢者介護の支援の可能性検証」(Origin Wireless Japan)、「先進技術を用いた、施設の在籍状況モニタリングによるセキュリティ対策の可能性検証」(Origin Wireless Japan)、「物管理業務における点検および記録報告等の効率化の検証」(THIRD)、「小規模トランクルームサービスの需要及び利用満足度の検証」(データサイエンスプロフェッショナルズ)の5つのプロジェクト。
この中から、大量の紙とFAXが使われている不動産管理業務に着目し、建物の情報をアプリ、IoTデバイスなどで収集し、管理業務をAIに代替えするソフトウェア「管理ロイド」を開発したTHIRDが、審査委員による「ベスト コーポレート チーム アワード」と、来場者の投票による「ベスト オーディエンスアワード」の二冠を獲得した。
同社の井上惇社長は、「『管理ロイド』は16社、5万棟に採用されており、約67%のコストが削減できる。削減効果は1.3兆円」と話し、「テクと現場が乖離しているニッチな分野に泥臭く入り込んで爆発させたい」と喜びを語った。
当日は、シード期の育成・支援をメインとした4つのSeed Accelerator Program(シードアクセレレータープログラム)も発表され、今後、パートナー以外も含む企業からの投資や協業などが検討される。
DGは2018年11月、コスモスイニシア、竹中工務店、東急グループ、東京建物、野村不動産ホールディングス、阪急阪神不動産、三井不動産の7社をパートナーとするコンソーシアムを結成し、新規事業の創出や社会課題の解決を支援する「Open Network Lab Resi-Tech」を運営している。
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18:30から21:00までの約2時間半、登壇者が次から次へ難しい言葉や図表をプロジェクターに映し出し、機関銃のように話した。スマホも満足に扱えないアナログ人間の小生は必死でメモを取ったが、ほとんど理解できなかった。審査委員のDG代表取締役兼社長執行役員グループCEO・林郁氏が講評で「やや詰め込みすぎた」と語ったように、素人でも分かるようなプレゼンは出来ないものか。
だが、しかし、それぞれのプログラムはワクワクするものばかり。THIRDの「管理ロイド」が二冠を達成したのにも納得した。この前、三井不動産が働き方改革の一環として、年間約58,000時間の業務量と約840,000枚分の紙資料を削減すると発表したのと通じるものがあったからだ。
意味は全く分からなかったが、さもありなんと思ったのはOrigin Wireless Japanの「Life log」とTellus You Careの「Tellus」だった。前者はWi-Fiの電波を、後者は小型レーダーを用い、24時間365日、人の動き、睡眠時の呼吸、ドアの開閉、室内での転倒などをモニタリングして、健康寿命を伸ばそうという技術だ。
審査委員を務めた渋谷区長・長谷部健氏がこれに敏感に反応し、「Wi-Fiがいいか小型レーダーか、実験場を提供してもいい」と語った。
しかし、小生はこれは危ないと直感した。両刃の剣だ。24時間365日、人の動きを監視できる技術が悪用されたらどうなるのか。国がマイナンバー制度とリンクさせたら監視国家システムが完成する。われわれはタグを埋められた競走馬と一緒。ジョン グリシャムの最新作「危険な弁護士」(新潮文庫)にも一般市民が犯罪に巻き込まれた悲惨なシーンが描かれている。
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