最近、「狭小住宅」について二度記事を書いた。今回で三度目だが、かなり問題点が明らかになってきた。
別表は、8月19日現在、住宅情報サイト「SUUMO(スーモ)新築一戸建て」に掲載されている東京都全体に占める「敷地面積が60㎡未満」の戸数比率を見たものだ。
それによると、全体で15,790戸あるうち敷地面積が60㎡未満の戸数は1,656戸で比率は10.5%だ。23区に限ると全体の20.2%に当たる1,536戸が60㎡未満だ。相対的に地価が高い都心部などは5割を突破している。
そもそも「狭小住宅」の定義はないし、敷地面積が60㎡未満の住宅を「狭小住宅」と呼ぶのが適当かどうかわからないが、「SUUMO(スーモ)」には「60㎡未満」より狭い敷地面積の括りはないので、便宜的に敷地面積が60㎡未満の住宅を「狭小住宅」と呼ぶことにする。
全体の2割が「狭小住宅」という数字をどう評価するか、記者は判断材料を持たないが、仮に多いとすれば、増加の最大の要因は2001年から始まった「官から民へ」の小泉構造改革に尽きる。
そのあたりの経緯について少し触れたい。1987年の木造3階建ての解禁により都心部でのミニ開発に拍車がかかったのだが、一方で当時の住宅金融公庫融資には100㎡以上という敷地面積要件があり、都市銀行なども公庫にならって100㎡以上という要件を付していた。
ところが、バブル崩壊によるリスク管理債権比率の悪化批判(当時は4~5%と記憶しているが、他の金融機関と比較して全然高くなかった)、民業圧迫批判などを受け、2004年にスタートした「フラット35」では面積要件を撤廃した。そして、2007年に同公庫は廃止され、業務は住宅金融支援機構に引き継がれ、一般融資もなくなった。
現在、金融機関の住宅ローンの面積要件はどうなっているか。みずほ銀行と三菱UFJ銀行は「敷地面積40㎡以上」で、三井住友銀行は面積要件を定めず個別審査するとのことだった。ARUHIは特に定めておらず、フラット35と同じ床面積70㎡以上としている。
このように、住宅融資に関する面積要件の緩和が「狭小住宅」を増やした最大の要因であるのは明らかだ。
話を最初に戻す。「SUUMO(スーモ)」の15,790戸という全掲載物件戸数について。東京都の平成30年の住宅着工戸数は19,512戸だ。これと比べても「SUUMO(スーモ)」の物件捕捉率は驚異的だ。マンションもそうだろうが、「SUUMO(スーモ)」は分譲戸建てのあらゆるデータを握っている。
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興味深いのは練馬区、杉並区、目黒区、中野区の4区の「狭小住宅」比率が10%を割っていることだ。とくに練馬区は掲載物件が1,255戸と23区でもっとも多いにもかかわらず「狭小住宅」比率はわずか1.9%、24戸しかない。
なぜか。練馬区は平成20年3月7日付で、建築物の敷地面積の最低限度について建ぺい率が30%の地域では110㎡、60%の地域では75㎡、80%の地域では70㎡と定めた都市計画を決定している。指定の目的として、著しく小さい敷地の供給に歯止めをかけることと、住環境や居住面積の最低水準を確保することを上げている。
この都市計画決定が、他区と比べて極端に「狭小住宅」比率が小さい理由であるのは間違いない。同様に「狭小住宅」の割合が小さい杉並区は平成16年、建ぺい率60%の地域の最低敷地面積を60㎡に、目黒区も平成16年に建ぺい率が60%の第一種低層住居専用地域では最低70㎡と定めている。
「狭小住宅」比率が50%を超えている港区、新宿区、文京区、品川区、台東区などは最低面積要件を定めていない。