既報のトーセイ「THEパームス相模原パークブライティア」に設置された提供公園は相模原市では初の「児童公園(街区公園)以外の提供公園第1号」であることがその後の取材で分かった。
提供公園は、都市計画法、都市公園法、その他条例などを法的根拠に一定の規模以上の開発行為の許可要件として整備し、自治体に提供することを義務化しているものだ。
相模原市も建築基準条例により、原則として計画人口×3㎡の面積を「市民の屋外における休息、鑑賞、散策、遊戯、運動、その他レクリエーション及び災害時の避難等の用に供する」目的の「公園」にするよう定めている。
この基準に沿ってこれまでデベロッパーなど事業者はほとんど「児童公園(街区公園)」として遊具、砂場、ベンチなどを設置して整備してきた。
ところが、今回の事業者トーセイ、デザイン監修の南條設計室、施工の長谷工コーポレーションは立地の特性を考慮して「Paley Park(ペイリー・パーク)※」をイメージした公園を提案し、それが認められた。
市の公園課は、「提供公園については全て児童公園とするよう求めてきたわけではなく、事業者と協議して変更することも可能としてきたが、結果的には児童公園ばかりになってきた。今回は、防災に特化した事業者側の提案を受け入れた。具体的には5基のベンチのうち3基をかまどベンチにし、街灯にソーラー式を1基追加し、車止めもソーラー方式にしているのが特徴。市も力を入れた案件。関係者からも高い評価を受けている」と話している。
※ Paley Park(ペイリー・パーク) ニューヨーク近代美術館の並びにある、わすか13m×30mの小さな公園・ポケットパーク。1967年に設けられた私設公園。公園奥に高さ約6mの人工滝を配し、中央には17本のニセアカシアが植えられ、両側のレンガ壁にはツタがからまっている。丸テーブルや椅子につき、キオスクで売っているコーヒーを飲んだりすることができる。その後、この種の公園が全米各地に広がった(ウィキペディア)
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冒頭に「児童公園(街区公園)」と書いたのには訳がある。わが国の都市計画法、児童福祉法、都市公園法には厳密な意味で「児童公園」は存在しない。あるのは「もっぱら街区に居住する者の利用に供することを目的とする公園で誘致距離250mの範囲内で1箇所当たり面積0.25haを標準として配置する」(国土交通省)「街区公園」で、多くの自治体はこの「街区公園」を「児童公園」または「児童遊園」と名付けている。
一方で、「児童遊園」は、昭和22年に公布された児童福祉法第40条に定められている「健全な遊びを与えて、その健康を増進し、又は情操をゆたかにすることを目的とする」児童厚生施設の一つで、面積要件、遊具、照明、職員の配置基準などを満たしたものは東京都で91か所、全国での数で4,107か所(平成12年10月1日現在)しかない。
例えば多摩市の場合。多摩市には公園が208か所あり、「児童公園」の名がつくものは数か所しかない。その数か所の「児童公園」は種別では全て「街区公園」となっており、児童福祉法による「児童遊園」は1か所もない。
渋谷区はどうか。渋谷区には120か所の公園があり、「児童遊園」と名がつくものは44か所に上っているが、児童福祉法に基づく「児童遊園」は戦後復興施設として整備されたものは1か所しかない。その名前も「児童遊園」ではなく「恵比寿東公園」となっている。
このように行政も混同しているのだから、一般の人が「児童遊園」「児童公園「街区公園」を区別するのはほとんど不可能だ。
そもそも「公園(park)」の概念は少なくとも明治時代以前にはなかったはずだからやむを得ないことなのか。それにしても「児童の健全な遊び」とは何だろう。「児童の健全な育成を図る」ことが目的の学童クラブや児童館と同様、あり方を考え直す時期に来ているのではないか。