東京都八王子市の老舗料亭「なか安」と地元不動産会社「住宅工営」、昭和62年開校の日本工学院八王子専門学校の3者は9月10日、地域の再生・活性化を図るため老朽化し使用されなくなった老舗旅館をリノベーションし学生シェアハウスに再生するプランを専門学生から募る「明日も楽しみで”たまんない”〜学生シェアハウスdesign project @暁町〜」の最終審査発表会を開催し、各賞を決定した。(写真はは記者撮影以外全て住宅工営提供)
56案のうち最終審査に残った15案の中から最優秀賞には井上汐里さんの「Inner Terrace(照らす)House」が選ばれた。光と風を取り込んだアイデアが評価された。
井上さんは「手描き感を出すため、図面の色も自分で塗ったりした。努力が実ってうれしい」と目を潤ませた。
次位の優秀賞には齋藤亜紀さんと星川雅人さんが受賞し、さらに「暮らしを、design。賞」に西川茉季葉さん(SDGs部門)、村松陸さん(地域コミュニティ部門)と小林菜々子さん(SNS発信部門)、特別賞には芹澤匠太郎さん(なか安代表取締役・宮﨑昌久氏)、山田健太さん(学校法人片柳学園理事・黒須隆一氏)、佐藤真心さん(日本工学院八王子専門学校副校長・山野大星氏)がそれぞれ選ばれた。
オンラインによる最終審査発表会オープニングには、住宅工営より協力依頼したという、建築家の隈研吾氏からの学生に向けたエールメッセージ動画も上映されたそうだ。
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同プロジェクトは、創業87年の老舗料亭・なか安の1972年竣工の9階建てビルのうち、同社が2003年に旅館業から撤退してから使用されなくなった4~6階部分(1フロア56坪)をリノベーションし、学生向けシェアハウスとして再生しようというもの。
なか安から相談を受けた創業51年の住宅工営・齋藤祥文社長は日本工学院八王子専門学校と連携して学生向けシェアハウスとして再生することを考え、今回のプロジェクトを立ち上げた。同社はこれまで2,000戸以上の建売住宅を供給した実績があり、齋藤社長は3代目だそうだ。
プロジェクトには同校の建築学科の3年生56人が授業の一環として参加。今年6月からすべてリモート授業で取り組んでいる。
齋藤氏は、「普通のマンションやアパートにリノベーションしてもこれからは事業として成り立たなくなる。いかに新しい価値を創造するか。学生さんには『箱があってプランを描くことは誰でもできる。新しい価値を吹き込むことが大事』と話しました。これから具体的なプラン作りに入るが、学生さんのアイデアを最大限生かしていく。来年3月までに完成させたい。これからの住宅事業はコミュニティがキーワードとなる」などと語った。
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このプロジェクトは、週刊住宅の記者から聞いて知った。大手デベロッパーやハウスメーカーが主催するこの種の取り組みは何度か取材しているが、〝オール地域〟に意義があると思い取材をお願いした。書き足りない部分は、転載・引用の了解も得られたので、添付した同紙の記事を参照していただきたい。過不足なく書かれていると思う。
なか安は記者も一度、利用(接待、つまりただ)したことがある。庭園が美しく個室型なのでゆったり寛ぐことができる。
かつては多摩エリアの社会・経済圏の核だった八王子市だったことを納得させる料亭だと思う。シェアハウスが完成したらまた取材したい。
※8月3日付週刊住宅の記事
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