パネルディスカッション(左から安藤氏、治部氏、池永氏、伊藤氏)
仲井社長
積水ハウスが9月17日行ったオンラインによる「イクメンフォーラム2020」記者発表会を「見逃し配信」で視聴した。
冒頭、仲井嘉浩社長は「パートナーや子どもだけでなく、本人や周囲の人を幸せにするイクメン休業は幸せと生産性向上が両立できる働き方改革であり、多様な働き方へのトリガーになる。本日は、皆さんと当社が2年間蓄積してきたデータを共有させていただき、イクメン休業のあり方、今後の課題と可能性について一緒に考え、取り組んでいくヒントを見つけていただければ幸い」などと挨拶した。
フォーラムでは、在日本スウェーデン大使館大使ペールエリック・ヘーグベリ氏のメッセージが紹介され、パネルディスカッションではNPO法人ファザーリング・ジャパンファウンダー・代表理事安藤哲也氏をモデレーターに、パネリストに前内閣府男女共同参画局長・池永肇恵氏、ジャーナリスト・治部れんげ氏、同社執行役員ダイバーシティ推進担当・伊藤みどり氏が登壇。三重県知事・鈴木英敬氏もオンラインでゲスト出演した。
視聴環境がよく、聞き取れなかった部分はほとんどなかった。パネルディスカッションの会場はどこか分からなかったが、ガラス越しに樹木が映し出されており、とても気持ちがよかった。
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ここで一つひとつ紹介する余裕はないので、気が付いたことをいくつか紹介したい。
まず、わが故郷の三重県知事・鈴木英敬氏が熱く語った「みえの育児男子プロジェクト」について。鈴木氏は、自治体の首長として初めて「男性育休100%」に賛同し、第一子、第二子とも育児休暇を取得。「イクメンオブザイヤー2015」「ベスト・ファーザーイエローリボン賞」(2016年)などを受賞したことで知られるが、〝隗より始めろ〟とばかり同プロジェクトを立ち上げ、2018年度の男性職員の育休取得率は8.1%となり、47都道府県で全国一となった。
これは全然知らなかった。こんな嬉しいことはない。記者はもう50年以上故郷を離れているが、いまでも三重県人だと思っている。三重県出身の歴史的人物は本居宣長、芭蕉、観阿弥・世阿弥、江戸川乱歩、朝日新聞の創業者・村山龍平、沢村栄治、山林王・諸戸家など少なくないはずだが、われら三重県人が誇れるのは伊勢神宮に赤福、的矢の牡蠣くらいで、スポーツ界でも全国区はマラソンの野口みずきさん、レスリングの吉田沙保里さんくらいしかいない。
鈴木知事は、「ネクスト親世代」の高校生など若者の意識を変える取り組みにも力を入れていると報告した。万歳!三重県!
これ以上書くと読者の方に怒られるのでやめる。次にジャーナリスト・治部れんげ氏が、「記者の皆さんは客観報道も大事だが、自分の問題として考えてほしい」と呼びかけたことについて。
同感だ。日本新聞協会の倫理綱領には「新聞は歴史の記録者であり、記者の任務は真実の追究である。報道は正確かつ公正でなければならず、記者個人の立場や信条に左右されてはならない。論評は世におもねらず、所信を貫くべきである」とあるが、「真実」とはいったい何か誰も分からないし、記者が信条を捨てたらジャーナリストでなくなる。「客観報道」などそもそもあり得ない。
3つ目。前内閣府男女共同参画局長・池永肇恵氏が紹介したわが国の男性の家事・育児などの「無償労働」が他の国に比べて圧倒的に低いことについて。全500分のうち有償労働時間と無償労働時間の比率は、男性が452分: 41分(女性は272分:224分)。カナダは341分:148分、スウェーデンは313分:171分となっている。
小生は、旭化成ホームズが主催した「『ワーク・ワーク・バランス』を考えるオンライン記者勉強会」の記事でも次のように書いた。
「有償」と「無償」は賃金が支払われるかどうかで分かれるのだろうが(労働者は金だけで働かないのも事実だか)、「労働」の価値そのものは変わらないと記者は考えている。家事や育児が「無償労働」とされてきたのはわが国の家父長制の残滓でもある。「無償労働」の価値を正当に評価することが「新しい生活様式」につながるのではないか。〝専業主婦(または夫)〟(昔は婚期を迎えた娘さんや出戻り、後家さんは「家事手伝い」と呼ばれたが、今は死滅しているはず)などの言葉は死滅すべきだし、職と住の関係も問い直す必要があると思う。
家事・育児労働をきちんと評価しないといけない。「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の制度の見直しも必要ではないか。この制度は明らかに家父長制度の残滓だ。
パネルディスカッションでは〝育休の質の向上〟も論議された。記者も約10年間〝主夫〟をやったので分かるのだが、家事・育児労働はいやおうなく質の向上を求める。さぼったり手抜きしたりすると、途端にほころびが出てくる。これは仕事と同じだ。だらだらと長時間働いても成果は上がらない-家事・育児労働をするからこそこのことがよく理解され、仕事にフィードバックされる。記者は〝主夫〟をやったことで仕事(記事)は2倍くらいに増えた。選択と集中だ。
ペールエリック・ヘーグベリ氏は育休は自分を見直すきっかけになる主旨の話をされたが、確かに見えなかったすべてのものが見えてくる。
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