取材源は明かせないが、既報のアキュラホーム広報担当・西口彩乃さんが著した「木のストロー」(扶桑社)を同社・宮沢俊哉社長は事前に読んでいないことが分かった。
出版初日に手渡され、自宅に帰ってから3時間かけて読んだそうで、その翌日、「みんなの苦労がストレートに伝わってきて、泣けてしょうがなかった。もし、事前にチェックしていたら、カットを要求する部分もあったかもしれない」と関係者に漏らしたそうだ。
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小生は、書籍紹介の記事で「読みだしたらもうどうにも止まらない。どうしてこんな内輪話まで〝赤裸々〟に暴露するのだろうと驚きもした。実に面白い。プレス・リリースは嘘ではなかった」と書いたが、よくぞ宮沢社長が出版を認めたものだとも思った。
宮沢社長がチェックしなかったのは大正解だし、内容に深く関わっていないのもいい。
宮沢社長が登場する場面は少ない。西口さんと「堀越課長」が呼ばれた酒席で、「夜の食事会は和やかな雰囲気だった。社長お気に入りのローストビーフの店で、社長の大好きな赤ワインで乾杯。とても上機嫌な社長に、木のストローの相談をしたい気持ちが喉元までこみあげた。それをぐっと抑え、仕事やプライベートの話などをして楽しく過ごした」(19ページ)とあるくらいだ。
出版に関わったスタッフも立派だ。社長の意向を忖度などしていたら読者に感動を与えられない。端から屑箱に捨てられるビジネス本になっていたはずだ。
ここまで赤裸々に書けたのは、同社が非上場であることも理由に挙げられる。宮沢社長に拍手喝采だ。会社は株主だけのものではないし、社員やその家族、取引先、そして社会全体のものだと思う。このような社風を維持し続けていただきたい。公益資本主義は時代の流れではないか。
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宮沢社長が事前検閲しなかったことを伝えるのがこの記事の目的だが、もう一つ、書きたいのは「木のストロー」のテレビドラマ化の可能性についてだ。
「木のストロー」をテレビドラマ化すれば、視聴率が長期低迷・凋落しているフジテレビの起死回生策、例えていえば今日(10月24日)のCSに夢をつなぐ西武・中村選手の逆転満塁本塁打になるのではないかと思う。あらゆる世代に人気の米倉涼子さんが主演のテレビ朝日「ドクターX~外科医・大門未知子~」(観たことはない)を蹴散らすのではないか。
いま「労働者」「無産階級」「プロレタリアート」という言葉は流行らないだろうから、「オフィスワーカー」「ワーキングウーマン」「ワーク女子」に置き換えた悲喜劇ドラマは万人に受けるのは間違いない。
キャストも分かりやすい。立命館大学理工学部卒の30歳前後(未既婚かは不明だが多分独身)、小柄でかわいくて、方向音痴で、一見して運動とは無縁のはずなのにチアリーディングのトップ(一番上に上る人か)を務める広報担当の西口さんにぴったりの女優さんはいるはずだ。
相手はちょっと悩ましい。さしずめ上司と部下の板挟みに右往左往する優柔不断の「堀越課長」だろうが、ラブロマンス風に仕立てるのは無理がある。実在のお二人に〝愛〟が芽生える雰囲気は露ほどもない。ならば、アイガー北壁のよう立ちはだかる女性の「鈴木役員」はどうか。〝女の闘い〟は永遠のテーマの一つだ。
脇役にも実力派がそろっている。木のストロー開発のきっかけとなった竹田友里さんは実名で登場するのもいいかもしれない。2人が悩みこどを相談するシーンは絵になる。
「A記者」の役割も大きい。西口さんを罵倒するシーンは迫力がある。なぜか記者という職業の人はすぐ感情を爆発させる人が多い。この種の記者を小生もたくさん知っている。警察を呼ぼうかと思ったこともあるし、「帰れ!」と一喝された人とは今でも口を利かなない。
横浜市の高橋知宏氏も重要な配役だ。役者としての素養は不明だが、SDGs推進役としてぴったりだ。西口さんが「スーパーマンみたいな方」と書いているように、とても役人とは思えない魅力的な人だ。熱く語るはずだ。
「木はふってから掃除するんや!」と怒鳴る指導係、「時代も変わったと」呆れかえる支店長も仕事の現場を伝えるには欠かせない人材だ。
伊藤圭子顧問と前国土交通省・伊藤明子住宅局長は、ここだけはフィクションとして国土交通省の姉妹局長として登場してもらう。
宮沢社長をどうするかだ。主役でも脇役でもない影の権力者として描くか、些事には関知しない経営者にするか、人情味あふれるカンナ社長そのままにするか。