アキュラホームの社内研究所であるアキュラホーム住生活研究所は11月25日、同社の従業員1,000名を対象に行った「新型コロナウイルス感染症により変化する住まいのあり方調査」をまとめ発表した。
同研究所は緊急事態宣言中の5月と、新しい日常が定着してきている10月の2回、アンケート調査を実施した。同社は、緊急事態宣言期間中は原則在宅勤務とし、現在はテレワークと出社を併用している。
調査の結果、住まいに求められるものの1位に浮上したのがウイルス対策設備(5月35%、10月30%)。以下、広い庭・バルコニー、モニター付きインタフォン、浴室乾燥機、宅配ボックス、収納スペース、広いリビングの順。従来ニーズが高かったウォークインクローゼット、カウンターキッチン、シューズクロークなどの設備は相対的に後退した。
その理由として、在宅勤務・学校休校などにより家族で家にいる時間が増加したことをあげ、自宅でアウトドア(グランピングやバーベキューなど)をする人が増え、新たな趣味として家庭菜園を始める人も増えているとしている。
テレワークについての質問では、在宅勤務の増加により、新たに仕事部屋となる場所を設けた人は43%に達した。男女別でみると男性は個室を望む人が多く、女性はリビングで仕事をする人が男性に比べて2割ほど多いとしている。
同研究所はこうした結果を受け、今後はLDKからLTK(リビング・テレワークスペース・キッチン)の時代に変化するのではないかとしている。
コロナ禍で負担が増えたものは、女性の炊事、掃除、洗濯などの家事時間が長くなる傾向が顕著で、光熱費の大幅増による家計への負担が大きいという声が多く寄せられたとしている。
コロナ禍で新たに取り組んだこと・大幅に費やす時間が増えたものでは、携帯を見る、テレビを見ると多くの人が回答した。コミュニケーションの欠如を補う新文化「WEB 飲み会」は、5月の時点では積極的に実施されていたが、現在は20代の従業員のみが継続しているようで、その他の年代は5%以下という結果が出た。
在宅勤務の継続意向では、全体の62%が「今後も継続したい」と答え、「どちらともいえない」が24%、「在宅勤務はしたくない」が14%という結果となった。年代・男女別では、若い子育て世代や親の介護が必要になることが多い世代の女性は「今後も継続したい」とする割合が8割を超えた一方、10月の調査では20代男性の44%、30~40代男性の57%、50代以上の男性の61%が在宅勤務を希望しないと回答した。
居住地に関する調査では、5月も10月も約150人(約15%)の社員が現在の居住地を変えたいという結果となった。30代以上の年代では6割以上が「自然環境の豊かなところ」を希望しており、3割程度は実家に戻りたいという回答があった。
◇ ◆ ◇
興味深い結果が出た。コロナ禍での住まいについては三井不動産レジデンシャルが先日、「三井のすまいLOOP 会員(n=6,169)」と「三井不動産レジデンシャル販売物件資料請求者・来場者(n=1,343)」を対象とした「アフターコロナのすまいやくらしに関する意識調査」の結果を報告しており、本日(11月25日)はザイマックス総研のオフィスワーカーを対象にした働き方の実態や価値観についてのレポート「首都圏オフィスワーカー調査2020」を紹介した。これらも参照していただきたい。
記者がもっとも驚いているのは、三井不動産レジデンシャルの調査でも今回のアキュラホームの調査でも「書斎」「自分の部屋」を望む人が多いことだ。
調査対象者の懐具合は知る由もないが、都内の良好な住宅地での戸建て取得は絶望的で、マンションも23区内では坪単価は300万円を突破し、20坪でも6,000万円以下は姿を消しつつある。3帖間でも450万円だ。夫婦別々だと900万円もかかる。どのようにして確保するのだろうか。
ただ、男性も女性も〝自らの居場所〟を求めるニーズは以前からあり、ポラスやケイアイスター不動産などは戸建てに導入して人気を呼んだ。「5LDK」はキーワードになりつつある。
「良好な住宅地」への居住地の変更を考えている人の多いのにも注目したい。三井の調査では「都心エリア⇒郊外エリア希望に変化」から「郊外エリア⇒都心エリア希望に変化」を差し引いた人は6.2%あり、今回は約15%だ。このニーズの高まりは、これまで取材してきたマンションや戸建ての現場でも実感している。
住環境がよく、広い庭が確保でき個室が持てるのは郊外しかない。マンションも同様だ。ここ数年、グロスを抑える専有面積圧縮型・コンパクトマンションが激増しているが、これは軌道修正を迫られることになりそうだ。
office workerにテレワーク浸透 ストレス増、やる気減退も ザイマックス総研 調査(2020/11/25)