大和ハウス工業は7月2日、「家事シェアハウス」を全戸に盛り込んだ分譲戸建て「セキュレア武蔵府中ひかりテラス」のメディア向け見学会を行った。全戸に「家事シェアハウス」を採用するのは初めてで、6月19日から販売開始した第1期11戸ののうち4戸が成約済み、1戸が申し込み済み。
物件は、JR中央本線国分寺駅からバス約11分、バス停徒歩3分(京王線府中駅から約9分、徒歩3分)、府中市栄町二丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%、容積率80%)に位置する開発面積約4,381㎡の全27戸。現在分譲中の住戸(6戸)の土地面積は113.02~123.17㎡、建物面積は88.62~90.36㎡、価格は5,490万~6,190万円(最多価格帯5,900万円台)。建物は完成済み。構造は軽量鉄骨2階建て。全体完成は2021年11月の予定。
現地は、東京農工大が社宅などとして所有・利用していた土地で、同社は約2年前に取得し、開発しているもの。府中市景観条例に基づき緑化を図り、全27戸にオリジナルの樹木を植樹するほか、敷地内の樹木には廃材を活用した樹名板を設置する。
「家事シェアハウス」は2017年から採用しているもので、玄関に家族それぞれの靴、コート、スリッパなどを管理できる「自分専用カタヅケロッカー」、リビングには自分専用の雑誌、美容グッズ、勉強道具などを収納できる「自分専用ボックス」と乱雑に散らかりがちな紙類を収納する「お便り紙蔵庫」、階段室には畳んだか洗濯物を一時的における「階段ポケット」を設けている。
また、昨年10月から販売開始した据え置き型ダストボックス「D’s stocker」を標準装備している。
府中市の開発指導要綱では、開発面積3,000㎡以上の最低敷地面積を110㎡とし、低層住居専用地域の緑地率を15%以上確保するよう求めている。
◇ ◆ ◇
記者は今年3月、この物件に近い「セキュレア武蔵府中なごみプレイス」(33区画)を見学しており、記事にもしているのでそちらも参照していただきたい。記事にも書いたのだが、今回の「ひかりテラス」のほうが国分寺駅にも府中駅にも出るのが便利なので、価格は6,500万円くらいが、ひょっとしたららもっと高くなると考えていた。
しかし、見学会で平均価格は約5,900万円と聞き、その安さに驚いたのだが、設備仕様などモデルハウスの全体的なレベルを考慮すれば、この価格帯もありかと考えた。
率直に言えば、完成販売で販売開始後10日間で5戸の成約・申し込みは少ないような気がする。バス便ではあるが、国分寺駅にも府中駅にも近い希少の一低層の住宅地であることを考慮すればもっと売れていいはずで、そうでないのは、若い世代では「家事シェア」は当たり前のことなので、心に響かなかったのか。
「家事シェアハウス」は結構なのだが、それを強調すれば販促に効果があるとすれば、家事労働は夫婦間で平等にシェアされておらず、妻に過大な負担がかかっている情けない現状をさらけ出すようなものだ。
さらに言えば、いまは共働きが多数派を形成しているとはいえ、専業主婦(主夫)も3割くらいあることを考えれば、「家事シェア」は全戸採用ではなく、選択制でもよかったのではないかと思う。
記者は、「イクメン」もそうだが、この専業主婦(主夫)の言葉が嫌いで、主婦あるいは主夫をきちんと職業として認め、家事労働も当然のように労働として評価する社会にすべきだと思う。そうなれば「家事シェア」なる言葉は意味をなさなくなり、死滅すると考えている。
◇ ◆ ◇
「家事シェア」より、記者が注目したのは全27戸にオリジナルの樹木を植樹することだった。敷地内の他の樹木には「樹名板」を設置するが、オリジナル樹木には設置しないということだったので、その名前を聞いた。シロモジ、ミツバツツジ、リョウブ、マンサク、カツラ、クロモジ、ナツハゼ、ツリバナ、シデコブシ、ヤマツツジ、エゴノキなどだ。今後、残りの16戸についても別の樹木が植えられる。
各敷地内には、オリジナル樹木のほかにもシラカシ、二度咲きヤマボウシなど少なくとも5本の中高木が植えられていた。「5本の樹計画」は積水ハウスの十八番だが、大和ハウス工業はオリジナル樹木を含めると6本だ。これらの中高木が育ったら素晴らしい景観を形成するのは間違いない。これは「家事シェアハウス」よりはるかに価値があると思うが、みなさんはいかが。